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平和のための、ほのぐらい決意

 寂しくて寝付けないでいるうちに、三限目の終わりのチャイムが鳴りました。

 二分か、三分して、廊下を駆け抜ける音が聞こえたのは、気のせいではないでしょう。


「失礼します。先生、リエさんの具合は?」


 ああ、この声はうーちゃんですね。やっぱり、心配してくれていたんですね。


「今はベッドで横になっているわ。病気というよりは、なれない人や場所が重なっての……心労というか、ちょっと疲れてしまったのがまとめて出てしまったのだと思うわ。十分休んで、少しずつ慣れていけば、すぐによくなるわよ」

「そうですか……よかったぁ……」


 ふふ、心底安心した、という声ですね。本当に、うーちゃんは……私の事が好きなんですから。

 まあ、私がうーちゃんを思う気持ちのほうが強いと思っていますけれどね! 吸血鬼にとって永遠なんて身近なんですから、うーちゃんが思うよりもす……っごく深く考えてるんですから。


「……天野さん。アマツジさんのことを深く思うあなたなら、もうわかっているでしょうけれど。アマツジさんを孤独にしないであげてね。私も、ほんの少ししか話していないけれど、それでもわかるもの。優しくて、繊細で……強いけれど、脆い子よ。意識が遠のくような疲れを感じながら、あなたにも見せないで潰れて。それでも、自分の心配よりも、自分を心配するあなたの心配を優先していたの。私に同性を好きになった経験がないから、適切なアドバイスをしてあげられないのが悔しいけれど……二人は、そこら辺の異性愛者より、よっぽど強く、純粋な想いでつながっているわ。私にどこまでできるかわからないけれど、応援しているから」


 ……人に改めて言われると、なんだか気恥しいですね。でも、応援してくれる人で良かった。否定する人なら、激情に駆られて何をしてしまうか分からないくらい、私の想いが強いと分かりますから。


「……私、リエさんのことを分かったつもりで、まだ分かり切れてなかったんですね……いつも私にやさしくしてくれて、きっとこの人は私なんかでは考えが及ばないほど強い人だと……そうですか。私にも、支えることができるところもあるのですね」

「愛し合うということは、支え合うこと。天野さんが支えられているように、アマツジさんも天野さんを必要としているわよ」


 このまま話を聞き続けるのは……うれしいですけれど、恥ずかしいですね。


「あの……先生、うーちゃん。起きてます……」


 私の声に慌てて立ち上がったのはうーちゃんでしょうか。カーテン越しでもなんとなくわかるものですね。


「リ、リエさん……どこから?」

「最初から……なんなら、うーちゃんが教室から走ってくる音まで聞こえました」

「……聞かれて恥ずかしいことまで言わなくてよかったです。お加減は、もうよろしいのですか?」

「もうすっかり……と、言っても、先生のご判断によりますね」

「それじゃあ、少し診させてもらうわね」


 恥ずかしそうなうーちゃんと、おかしそうに笑う先生の声。

 ああ、こんな平和な時間が許される限り続きますように。

 その為に……私が、はるなさんを牙にかけなければいけないとしても。

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