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登校しながら、少し気まずいお話

 はぁ。ざまぁ見ろ、という気分ですね。

 ゆらさんに押されて食卓についたとたん、あの三人は私の事を褒めながらも『私たちと一緒では御不快でしょうから』などととにかく別の場所に行かせようとしましたが、そういう気分だ、と言ってその言葉をことごとく切り捨てた時の絶望感。うーちゃんをいじめなければそうならなかったんです、自業自得ですよ。

 ついでに、うーちゃんと一緒に高校に行くことも了解させて、学校への手回しもさせて。これで問題なく高校へ行けますね。

 ……ところで、隠し撮りをしている人、給仕一人どころではなかったと思うのですが。うーちゃんいじめで、よっぽど嫌われていたんですね……。


「せっかくだ。明日の朝食にはうずめも来るが良い。吾も含めた家族写真とやらを取ろうではないか」


 心の底からざまぁ見ろという感じだったので、高校へ向かう車の中で上機嫌にそう話したら、うーちゃんに少し悲しげな表情をさせてしまいましたので、そこだけは反省します。

 そんなこんなでちょっと気まずさも感じながら見えてきました。高校です。


「大きくて、広い……さながら城のごとく」

「ここはいろんなところから特権階級か、それに近い人々の娘だけが集められますから。それで余計にそう感じるのでしょう」


 私のこぼした言葉に、うーちゃんがその理由を答えてくれる。

 ちなみに、今日も運転手は田島さんです。


「お嬢様を邪険に扱っておきながら、天野家の一員だからと普通の学校に通わせることもしない。まったく、旦那様方と来たら……」

「……一応は、血のつながりがあるんです。あまり悪く言わないでください」

「うずめ。お前の優しさは間違いなく美点。だが、それも無限ではあるまい。怒りを覚えた相手にまで優しくする必要などないのだぞ」

「ですが……」

「お前は今までにただの一度でも、ひとしい人間としての扱いを受けたのか? そのようなものに、人間としての扱いをする必要はあるのか?」

「…………」


 ……言いすぎましたかね。うーちゃん、うつむいて黙ってしまいました。


「うずめ。お前の家族を糾弾せよとは言わぬ。お前には何よりもつらいことだろう。だが……吾としては、大切な存在を貶められて、黙っていることもできない。お前にとって大切な家族だとしても……それだけは、変えられない」


 ストックホルム症候群、ですか……得た知識として、知ってはいます。本来なら、犯罪に巻き込まれて、犯人と極限の状況下に長時間置かれることによっておこる、憎むべき相手に愛情すら抱くもの。

 ゆらさんがいなければ餓死していたかもしれない状況は、ネグレクト……育児放棄に近い。だけど愛情を向けられたい相手への思いも、うーちゃんの中では捨てきれなかった。

 ……厄介なものですね。人間の心というものは。


「……お二人とも。学園校門に到着いたしました。少々お待ちを。すぐに車いすを下ろしますので」


 ちょうど会話が途切れてしまったところで、田島さんがそう口にする。


「……ツェツィーリエ様。ご準備を」


 そう言って、うーちゃんも車を降ります。


「私が、間違っているのでしょうか……」


 一人きりになった車の中で、ぽつりとこぼす。

 私から見て、あの三人は家族と呼べるようなものでは到底なくて。

 でも、うーちゃんにとっては大切な存在であり……。


「お待たせしました、ツェツィーリエ様。さ、行きましょう」


 そう悩んでいる間に。車いすの用意を終えてくれたうーちゃんが扉を開き。

 いったん、考えるのはやめることにしました。

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