愛神(アプロディーテ)
「おーい、アプロディーテ様がいましたよ〜!」
子供のようにはしゃぎながら飛んでくる。
なんか見てると緊張感薄れていくわぁ。
「見つかったみたいね。行きましょうか。」
「おぅ。」
「こちらですっ、こちら!…
…っとその前に、どなたですか?この殿方は。」
「あれ、聞いてなかった、ニケ?
あなたもずっと一緒にいたでしょう?」
「えぇ、も、もちろん!
いつ何時もアテーナ様にお支え申し上げている身ですから!」
「じゃあ、どうしてレオを知らないのかなぁ。」
「えと、えーっと…。そ、それはですね、仲睦まじいお二人を邪魔してはと思いまして…。」
「ずいぶん呆けたことを言うのねぇ。」
「いえ、決してそんなことは…。」
「目を見て話しなさい。」
「…。」
「まぁ、いいわ。」
アテーナ、怖い。
お願い、仲良くしてくれ。
「詳しいことは後で話すから、とりあえずアプロディーテに会わせてくれない?」
「ハイハイっ! では改めて、こちらです!」
切り替え早いな。
「あら〜、久しぶりねぇー、ミネルヴァ。」
「ここはオリンポス!
その呼び名は…やめてくれ。」
「相変わらず堅いわね、アテーナ。」
彼女がアプロディーテ、様か。
神様なんだから”様”とつけるべきだよな。
でもアテーナにはつけてないからなぁ。
困った。
それにしても、なんかエロい。
ただ雰囲気だけとかではなく、とりあえず色々露出しすぎだ。
というよりあれは衣服なのか?
ほとんどその役割を果たしていない気がする。
かろうじで隠すべきところは見えないものの、豊満な胸、くびれのある体つきが丸見えだ。
だめだ、目を開けていられない。
視界に入るだけで頭がおかしくなりそうな程だ。
「あれ?後ろの男の子は誰?
結構可愛いじゃない。
あなたも大胆ねぇ、このご時世、しかもゼウスの前で処女を誓った女神が人間の男を連れて歩くなんて。」
「そんなんじゃ無いわ…。
紹介するわ。彼はレオ。
……?
ん?どうかした? レオ。」
「い、いや、何でも」///
「……なるほどね…。
アプロディーテ、着替えてきてくれない?
彼は人間だから、そのヴィーナスを想像させる格好は…ちょっときついわ。」
「仕方ないじゃない、ヴィーナスとは同一神なんだから。
じゃあ、ちょっと待ってて頂戴ね!」
「結局のところ、レオ君が極東生まれとういうこと以外何も知らないんじゃない。」
「「そういうこと。」です。」
「…」
「息ぴったしだし。
あと、別に神だからといって、私に気を使う必要はないのよ、レオ君。」
「は、はい。」///
「やっぱ、可愛いわ。」
ある程度マシな格好になったとはいえ、まだ彼女を直視できない。
気を使っているわけではなくて、あなたの格好、そのオーラにこちらは物凄く緊張してるんですぅ!
「他には誰かに相談したの?」
「いいや、まだなんだけどね、誰に言ったらいいか分からなくってさ。」
「極東の神に会わせてあげることもできるんだけど…、レオ君の服装を見るからに、今の時代とは考えられにくいから、例えそこで人間界に降りれても…。」
「時代が違う?」
「えぇ、神界と人間界は時の流れのスピードは違うけど、きちんと噛み合って進んでいるから、基本タイムスリップなんかはできないからなぁー。」
タイムスリップ?まさか。
なんにしろ、この状況はとことん悪そうだ。
なんか、もう帰れない気がしてきた。
「本気で帰ろうとしているなら、天帝に会うしか無いかもねぇ。」
「アプロディーテ、それ本気で言ってる?」
「だってそうでしょう?
可能性がありとすれば彼しか考えられないじゃない。それとも他にあてがあって?」
「そりゃそうだけど…。」
ゼウス。
神話なんて、ゲームの中で出てくるキャラクター程度のしか知らないけど、この神だけは格別だということは俺にも分かる。
ゲーム内だと、雷を纏った大きな槍をかたてにもち、髭を生やしたしかめっ面の爺さんとしてよく描かれてる。
ギリシア神話の最高神、天空神ゼウス、
これに会えって言うのか!
そうか、やっぱりこの神々はギリシア神話の…
改めてとんでもないところに来てしまったことを確信する。
「大丈夫よ。ヘスティア様か、ヘパイストスのやつに頼めばヘラーの目くらい盗んでゼウスに会えるわよ。
残念ながら私もヘパイストスとは縁がないけど、オリンポス山に行けばヘスティア様には会えるわ。
アテーナも、彼女とは顔見知りだから。」
ヘスティア。
神でさえ様とつけるくらいだからきっと相当ヤバい神なんだろうな。
俺、殺されたりしないよな…。
まだ死にたくない。
ゼウスといい、ヘスティアといい、恐ろしい神ばかりなのだろうか。