第六話 新しい仲間
お久しぶりです!もっと早く再開できるかと思ったんですけど結構空いてしまいましたね、何か月……?
ぼちぼちまた投稿していきますのでこれからもよろしくお願いいたします。
かなりの急展開ですがお楽しみくださいませ
特訓という名のお遊びを数時間。
「そろそろ終わりにしないかー?」
スティが俺に向かって叫ぶ。帰る気満々なのか、持ってきていた荷物を全て収納魔法の中に押し込んでいた。
「えーもう帰るのー?」
「かなり魔力を消費してるだろうしな、あともう日が暮れる」
楽しいことをやっていると時間が過ぎるのが早い、と言うのは本当のようだ。気づけば空は綺麗な茜色に染まっている。
「……分かった、降りるよ」
【無重力】をゆっくりと切って地面に降りていく。しかし、途中で制御をミスったのか頭から落ちていく羽目になった————。
降りてこい、と言ったら頭から落ちてきた……そんな人は今までいたのだろうか。少なくとも俺は初めて見た。
落ちてきたユウを難なく抱える。六歳児の体は軽い。寝顔だけを見ると、あどけない子供だ。
「本当、違うといいんだけどな……」
自分の息子を見ているかのように目を細め、ゆっくりと歩き出した。
その様子を影から見ている者がいた。
〇
目を開けたら、白い天井が見えた。
……あ、そうか、魔力を使いすぎて倒れたんだった。前兆はあっただろうか、夢中になっていて気が付かなかったなぁ。
何となしに辺りを見回すと、ベットの近くにあった窓に猫が一匹座り込んでいた。全身が真っ黒の、アニメや漫画とかでは魔女の使い魔みたいなポジで出てくる黒猫。地球にいるときには見たことが無かった、存在はしていたはずなのに。
向こうが事らを見つめてくるもんで、こちらも見ていると、突然こちらに飛び込んできた。威嚇のつもりなのか爪まで出している。
余りにも突然のことに避ける暇もなく、切り刻まれる覚悟だけして目を瞑っていた。
「……ニャァ?」
「…………うん?」
覚悟をして数分、一向に痛みは襲ってこないばかりか何処からともなく可愛い鳴き声が聞こえてきた。恐る恐る目を開くと、例の猫は俺の足の上で気持ちよさそうに寝転がっていた。先程までの殺気は何処へやら……もしかしてここに行きたかっただけなのか?
よく分からないがそういう事にしておこう。どうせなら名前も……毛の色は黒が基調だから”クロ”か、いやそれは流石に安直だろうか。
「どうしよ、本当に猫なのかも分かんないしなぁ」
「ユウ起きた……ど、どうしたんだよそいつ!?」
物音で気づいたらしいスティが俺の部屋に入ってくるなり派手に驚いていた。手に持っていた器は無事なようだが。
「そいつってこの子の事?さっき窓から入ってきたんだよ」
「窓から?ま、まぁ確かに入れないことはないんだが……大丈夫なのか?」
「平気だよ?」
彼はひどく慌てている。そんな様子を見るに、こいつはもしかすると凶暴だったのだろうか。確かかにさっきの殺気は尋常ではなかった。
もしくは毒か何かを持っているとか…………
「ユウ、これを見てくれ」
そう言って見せてくれたのは分厚い図鑑のとある一ページだった。途中までは読んでいたのだが、猫なんていなかったはずだ。
『バイオキャット、非常に凶暴な性格を持ち、見える範囲にいる生物を全て襲うとされている』
未だに翻訳魔法は不慣れなため文章は所々しか読めなかったが、添付されている絵と少し入手できた情報からして恐らくこいつのことなのだろう。
俺のそばにいるこいつはどっからどう見てのだたの人懐っこい黒猫なのだが。
「そうか、バイオキャット……じゃあまどから入ってきたバイオキャットで”キーマ”だな」
「使役できる人はいまだに現れたことがないという……って説明する前に名前つけないでさ」
少しあきれ顔でため息をつかれた。話は最後まで聞け、という事らしい。何だか子供になった気分だな。
……あ、俺今子供だわ。
「ご主人様、どうしたの?」
突然いないはずの女子の声が聞こえてきた。声がした方を見ると、そこには猫耳の美少女が。寝ていたキーマがいないということはこいつが?
「え、キーマ……だよな?何で人間?」
「ご主人様と契約したからだよ」
端的且つとても分かりやすいんだが……ご主人様は止めてもらおう。生憎、俺にそんな趣味はない。
「俺、優って名前なんだ」
「ユウ!いい名前だねご主人——」
「だからご主人様呼びは止めてほしい。優でいいよ」
「ユウ、うん分かった!」
キーマは思っていたより快く承諾してくれた。傍で悔しがっているスティの姿が見えたのはきっと気のせいだろう。
彼女をよく見ると、首筋に呪いのような印が付いている。元々付いていたのだろうか、特に気にする素振りも見せていない。
「あーそれは【使役】だな。一人ひとりマークが違うようになっているんだ」
「規則はある?」
「主の属性の色だな。俺は赤色になる」
そう言って見せてくれたスティの使い魔には、赤い印が付いていた。一人ひとり違うということは誰の使い魔か分かるという事か。……属性で色が変わる?
「じゃあさ、黒色って何属性?」
「……さぁ、見たことないから分からないな」
はぐらかされた。絶対に知っているよな、こいつ。本当に知らないのなら今頃目を光らせて研究を始めるはずだ。
どうして知らないふり何かするんだろうか。俺は自分自身が何属性か知りたいだけなのに。分からない限り無属性魔法しか使えないのがキツイだけなのに……。まあ何らかの理由があるんだろうから深堀りはしないけれども。
「それよりもさ、腹減ってるだろ?飯持ってきたから食え」
「食べる、ありがとう」
腹が減っては戦が出来ぬ、考え事は後にして今は食うことに集中しよう。メニューは好きなグラタン、最高だ。
「キーマも食うか?」
「いらない」
素っ気ないなぁ!猫に戻って窓から飛び出してしまった。猫だと印は分かりにくいな……。
見事にフラれた(?)スティはどっかりと椅子に座り込んだ。いかにも不機嫌です、と言った感じで口をとがらせて、まるで子供だ。
「何だよ、俺のことは眼中にねぇってか?」
「まぁもう夜だし既に食べ終わってたんじゃない?もしくは食べれないとか?」
しゃーなしにフォローを入れると、彼は渋々納得したようだ。視線を窓に向けて無言になった。
「明日から食事の材料は取ってきてもらうぞ」
「は?」
食い終わり、一息ついていたその時だった。突然の事で一瞬理解が追い付かず変な声が出てしまった。
「狩りの練習にもなってお得だろう」
スティは俺の返事も聞かずに立ち去っていった。心なしか不機嫌で……さっきの事まだ根に持ってんのか?
そして明日からどうしよう。
「ユウ、こっちに三匹」
キーマが指さした方へと走っていく。少ししたらイノシシみたいな奴が三匹飛び出して来た。確か……”ホーク”だったかな?
間髪入れずに日本刀で急所を刺していき倒していく。血抜きや解体はスティに任せることになっているのでスルーする。
「凄いなぁ、本当に分かるんだ」
「この辺りは私の庭だからね!」
ひと段落ついた後に褒めると、たまたま近くの木にとまっていた小鳥を食べていたキーマが胸を張って答えた。狩りをする際、どこにどんな魔物がいるかなんてさっぱり分からない俺に、手伝いを申し出てくれたのだ。
別に召喚しても良かったのだが、どうせならここにいる魔物を狩っていきたい。
「今日はこれくらいでいいかな」
「十分でしょ」
倒したホークたちを掴んで、家のある方へと歩いていく。午前中で終わったから午後は魔法の練習でもしようかな……。