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第一話 異世界転生

素人が手を出していいジャンルなのか分かりませんが、精一杯書かせていただきます、よろしくお願いします。

 今、俺は非常にヤバい事になっている。

 遡ること……体内時計で3時間……





 部活が終わり、俺たちはコンビニに立ち寄った。

「おい、見ろよこれ!」

 中に入るなり、橘は俺にスマホ画面を見せてきた。画面には、ゲームの新キャラについての情報が書かれていた。

 俺たちがコンビニに寄った理由は、何かを買うためでも漫画を立ち読みするわけでも、お金の引き落としに来たわけでもない。フリーWi-Fiを使いに来たのだ。

 今日はさっき橘が見せてきたゲーム『フラリスクエスト』の大型アップデートがある。

 『フラリスクエスト』とは、簡単に言うと主人公は冒険者で、ある日とある街に行く。その街は魔王によってほぼ壊滅的で、冒険者は色んな手を使いながら修繕していく。途中で魔王の手下や野生の魔物が襲ってくるので、そいつらから街を守りながら復元していき、最終的には魔王を倒す旅に出る…というもの。

「なあ…九条はガチャ回すか?俺今から回そうと思ってるんだけど……」

「物による」

雑魚武器とかだとダイヤの無駄だからな。

「えっとな……魔王耐性付きの盾と」

「おう」

「火炎砲強化ピアs」

「回す」

 即答だ。理由は俺の武器に火属性強化のスキル持ちが一つもないから。






「いや~それにしても九条、今年の運使い果たしたんじゃねーの」

 コンビニから出てしばらくすると、橘がため息交じりに言った。まあ無理もない、まさか、アップデートで新しく出てきた武器がすべて一回で出てくるとはさすがに思わなかった。

 おかげで武器倉庫はSSRだらけだ。

「かもな……俺まだ死にたくないんだけど」

「九条!止まれぇぇ!」

 フラグ回収は一瞬だった。歩きスマホは本当にやってはいけない。

 前を見ていなかった俺は、工事用に開けられていたマンホールの中に吸い込まれるように落ちていく。


 俺の人生、これで終わりかよ。せめてあと1週間は生きたかったぞ。

 俺の願いもむなしく、鈍い音がしたかと思ったら急激に意識が薄れていった。

 痛みは感じない。不幸中の幸いだろう。



  ●



 風が俺の頬を撫でる。マンホールの中とは思えないほど清々しい風だ。

 とりあえず状況把握のために目を開ける。


 そこは、草原だった。

「は?」

 周りを見渡す。どうやら見渡す限り草原ではないようだ。先に木々が見える。森の一角のようだ。

 とりあえず立ち上がる。体に異常はない。

 周りに動物はいなかった。


 いや、訂正しよう。人は確かにいない。

 でも、背後に熊はいた。

 こちらを向いて唸っている。俺は何かしたのだろうか。



 そして今に戻る―――



 熊はじりじりとこちらに向かってきている。隠れようにも、ここは見晴らしのいい草原だ。

 走っていったとしても、熊を威嚇することになる。そうなったらどうしようもない。

 万事休す、せめてサッカーボールがあれば……。

 目をつぶったその瞬間、何かが空を切る音と同時に先ほどの熊のものであろう唸り声が聞こえてきた。

 驚いて目を開けると、そこにいた熊が倒れているのが見えた。そして、その熊の上に誰かが立っているのも。

 その人は熊から飛び降りると、こちらに向かってきた。

 そして、俺の髪をくしゃくしゃにし始める。

「ちょ……」

「坊や、こんなところで何していたんだ?俺が来てなかったら今頃食われていたぞ」

 その人は赤い目でこちらの顔を覗き込んできた。

「お前……」

 一瞬驚いた顔を見せたが、すぐにさっきの柔和な表情に戻る。

「とりあえず俺の家に来るか?といっても俺以外住まねぇから質素だが」

「あ、じゃあ…。ありがとう、おっさん」

「ん……俺が誰か知っていってるのか、それ」

 おっさんは軽く目を細める、どうやら不快だったようだ。

「分かったよ、おじさん」

「変わってない!」






「ここか?」

「ああ」

 おっさんの家に着いた。周りにはうっそうとした木がたくさん生えている。ここはまだ森の一角のようだ。

 おっさんの後に続いて中に入った俺は、家の中を見て驚愕した。

「広くね……?」

 大人一人が住むには十分すぎるスペースだ。ただ見る限りは本当に一人しか住んでいないようだ。

「まあな。俺の魔法だとこの森消滅しそうだったから練習場も兼ねて作ったんだよ」

「魔法……?」

 もしかしていい年して厨二病なんだろうか。

「ん?お前、魔法知らないのか?」

 何でそんな質問になるんだ……。

「ま、お前ぐらいの年だとあんまり知らないのかもな。この俺様が直々に教えてやろうじゃないか」

「おっさ……おじさんってどっかの偉い人?」

 つい慣れでおっさんと言いそうになった、危ない危ない。

 当のおっさんは、人差し指を顔の前で振りながら「チッチッチ……」とか言っている。

「俺の名前はスティーバー・フラリス。スティでいいぞ」

「……フラリス?」

「ん、その名前に聞き覚えでも?」

 スティは奥のほうから平べったい何かを取り出していた。形からして鏡だろうか。

「いや、ゲームの名前だったから」

 正確にはフラリスクエスト、だけど。

 それを聞いたスティは首を傾げた。

「ゲーム……?それは分らんが余程の世間知らずじゃなければ俺のことは勇者と教えられるはずだぞ。」

「教えられ……スティ、自分で言うことかそれ」

「街中では言わないぞ。今はお前しかいないようだし、お前は世間知らずのようだからな」

 失礼だな。

「そういえば、お前は何ていうんだ?」

ス ティは、こちらに近づいてきた。かなり重そうなのだが、しんどそうな素振りは見せない。

「え、俺?俺は九条優。一応言うと16歳」

 俺が言った途端、スティは持っていた鏡を落とした。持ち方が良かったのか、綺麗に俺の前に置かれた。

 俺は、鏡に映った自分の姿を見て言葉を失った。

「自分で見たほうが早いだろう。ユウ、お前はどう見ても子供だぞ」

 一応言うと16歳もまだ子供なのだが、スティは6歳ぐらいだ、と言っているのだろう。

 実際そうだった。灰色の髪、黒色の目。そこは変わりないのだが、髪型と身長は元の俺と似ても似つかない。

「何で……」

 鏡に食いついている俺を見ていたスティは、また奥の方へ向かっていった。

 次に取り出したのは一冊の分厚い本だ。

「ユウ、これを読むといい。というか、もしかしたら読めないかもな」

「は?流石に読めるだろ」

 スティを軽くにらんでから、俺は本を受け取る。

 そして机に置く、今の俺には重過ぎたようで手が軽く痺れている。

 表紙を開く。目次が書かれているようだが……残念ながら俺には読めなかった。

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