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望まぬ異世界転生は1000000人目を踏んで始まる  作者: 大藤野原
第一章-ピタゴラース
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#8-異変

「な〜んの骨だろ……?」


剣人(けんと)は木の麓に乱雑に散らばる骨をまじまじと見つめる。


「ま、まさか人の…!?」


エミィが声を震わせた。


「いや……骨格からして人骨ではなさそうだ」


「パッと見だけんど……鹿みてーな形の骨やんな」


ガストとブルーノが分析をする。


「なるほどね〜……。でも、何でこんな所で骨になってるんだろ。草食の動物ならここら辺食べる物には困らなさそうだけど」


剣人も分析を重ねる。


「……よく見てみろ、所々にまだ身が残っている。腐りかけだが……こんな風貌の死体となると……」


「食われたってところかんね」


ガストの言葉へブルーノが連ねる。


「あぁ……これだけ植物が生い茂っていれば草食動物は集まりやすい。そして…またそれを獲物とする肉食の動物も集まりやすい環境だ」


骨を拾い上げるガスト。


エミィは焦ったような声を出す。


「それって、まだここら辺にその鹿食べたやつがいるってことなんじゃ……!!」


「一同……念の為、銃を抜いておけ。野生の獣となると草食のものですら運動能力は馬鹿に出来ん、肉食となるともっとだ。万が一を考え近接は避けたい」


四人はそれぞれ腰から銃を手に取る。


その時だった。

剣人が何かを見つけて叫ぶ。


「何かいるよ!!」


他の三人は即座に彼の視線の先へ反応する。


それは10mほど先の茂みから顔を覗かせていた。


「……熊だ」


ガストが三人に聞こえるほどの声で呟く。


じっと睨み合う四人対熊。


体感にして十秒ほどその状態が続いた後、四足歩行であるはずの熊が不意に二足で立ち上がった。


「「「「!?」」」」


四人は動揺を隠せなかった。

四足の状態でも体高2mは優にあるが、二足で立つことにより5m越えの圧を感じさせられた。


(なんてことだ……突然変異形か……?支えも無しに、後ろ足二本だけを基軸に行動を起こす熊など初めて見る……)


そう思考を寄せる四人の中で最も身長の高いガストでも背丈190cmほど。

圧倒的に熊の方が大きい。


彼らが呆気に取られている中、先に仕掛けたのは相手だった。


右腕を振り被りながら後ろ足だけでガストら目掛けて走り出してきた。


あっという間に間合いを詰められ、影はもう目の前。


そして熊は右腕を振り抜く。


咄嗟に剣を抜いたのはブルーノだった。


熊の拳をそれで受け止める。


力自慢であるブルーノだったが、猛獣である熊の上からの一撃を凌ぐのは中々に困難であった。


何とか腕を震わせながら受け止め続けるが、それ以上の反撃への進展を見込むのは無理があった。


「ぐぬぅっ……!!」


パンッ……!!


銃声が鳴り響く。


その直後、熊が呻き声を上げながらズシンと力無く倒れていく。


煙は、ガストの持った銃の先から昇っていた。


「うっ……ふぅ……助かったぜ、団長……」


ブルーノは剣を持った手を下げ、脱力させながら言う。


「いや……よく耐えてくれたピンランド」


ガストが返す。


一件落着……と思いきや、エミィは尚更に表情を強ばらせていた。


「ねぇ……なんか周りから気配を沢山感じるんだけど……?」


その探りは的中していた。


辺りの茂みからガサガサと音が乱雑に重なって聞こえる。


「うん……。この感じ、一頭や二頭なんかじゃないね〜……」


剣人も周囲を警戒する。


次の瞬間に続々と茂みの向こうから顔を覗かせたのは、やはり熊共だった。

それも全部が先程の個体と同じ、後ろ足だけで立っている。


「……五頭か……」


ガストは目配せし、相手の数を知する。


「俺が二頭を対処する!!ピンランド、轟、トナルドは目の前の一頭ずつをそれぞれ対処してくれ!!いいか、熊は鼻っ柱が弱点だ!!冷静に狙いつつも、被害は最小限に抑えるよう努めろ!!」


ガストは指示として叫び、熊を含めたその場の全員が臨戦態勢へと入った。




__________




一方、ガストらチームAより少し早くに目的地点へと着いていたセルト、燐寧、ユンボ、メミル。


彼らは深い森の入口の手前に二輪車をそれぞれ停めた。


「さて、森に入る前にちらほら立ってる近隣の住宅で聞き込みしてみようか」


セルトが提案する。


四人はまずその場から最も近場に建っていた家屋へと立ち寄る。


しかし、人の気配がなかった。

外から見える限りの窓を全て見渡しても、中で明かりの付いている雰囲気すらない。


「あのー!誰かいませんかー!!」


ユンボが外から大声で呼び掛けてみる。

しかし少し待っても反応はなかった。


「留守かしら?」


「んーそんな感じするな」


燐寧とメミルが言った。


「しょうがない、別のお宅に行こう」


セルトはそう言い、三人と共にその家屋を後にした。


隣家までは50mほどの距離があり、ここら一帯は中々の過疎地であることが分かる。

森のすぐ側なので、当然といえば当然か。


ただ、その隣家にも人が中にいる気配はなかった。

一件目同様、呼び掛けにも反応はない。


「うーんまだ昼過ぎだし、どこも働きに出たりしてるのかな」


セルトが考える。


「でも、こうも家中全員留守にしてるものかしら?主婦の方だったりがいてもおかしくないものだと思うのだけれど……」


燐寧も考える。


「向こうにもう一軒見える!あっちも覗いてみようぜ」


ユンボが10mほど先の、また別の家屋を指差す。


そうしてその軒前まで来た四人。

前二件とは違い、玄関にインターホンが取り付けられており表札もある。それによるとここは川山田(かわやまだ)さんのお宅であった。


「……あんたが見つけたお家なんだから、あんたが押してよ」


メミルがユンボへ、インターホンを押すよう催促する。


「は、はぁ!?……しょ、しょうがねーな」


嫌々に見せつつも、渋々ユンボは押した。


ピン、ポーン


音が鳴る。

少なくとも、機能はしている家のようだ。


四人が暫く待つと玄関のドアが開き、中から女性が姿を見せた。

彼女はこの家の奥さん、清美であった。


「はい……。あの、どうかされましたか?」


セルトが事情を説明する。


「突然すみません、僕達はピタゴラースというギルドで活動している者です。ここら一帯の方から調査の依頼を受けまして、まずは聞き込みをさせてもらってます」


「あぁ、ギルドの方達なのですね……!わざわざご足労お掛けしまして……」


清美はセルト達へ頭を垂れた。


「この付近にならず者が現れて悪さをするという旨の内容で依頼を頂いたのですが、お間違いはないでしょうか?」


彼女へ問いかける燐寧。


「はい……。依頼自体は、向かい側に住んでらっしゃる日下部さんが出されたんですけど……。でもここら辺に住まれてる方達はうちも含めて皆さん困ってるんです」


そう答える清美。


「詳細な被害の情報とかはあります?」


とセルト。


「はい……。森へ山菜を採りに行ったきり帰って来ない人達がいたり、ここらの住宅や田畑も荒らされたり壊されたり散々で……。流石に目に余るものですから 日下部(くさかべ)さんもあなた方ギルドへ救援依頼は出したものの、自分でも森の中に様子を見に行くと言っていたのですが……彼もそれ以来帰ってこなくて……。この付近に住んでるのが怖くなった方々は他へ引っ越してしまったり……。私達一家はここに越してきたばかりなので、引っ越しの費用もなく仕方なく今も住み続けてるのですが……正直毎日生きた心地がしないんです……」


四人は沈痛な面持ちで話を聞いていた。

その中でメミルは言葉を発する。


「話を聞いてるだけでもひどい……。誰がそんなことをするんだろ……」


「ほんとだよな。人を困らせるのが相当好きな、糞みたいなやつなんだろうな。それに解決しようと向かった人が尽く消えていくってのも奇妙な話だ」


ユンボも同調した。


セルトが再び清美へ問いかけた。


「失礼ですが……、こちらにはお一人で住まわれてるんですか?」


「いえ、夫と一緒に……。彼は今、働きに出ていて恐らく今日も帰ってくるのは夜だと思います」


「なるほど」


彼女の言葉へセルトが返す。


その時、清美が何か思い出したかのようにまた言葉を続けた。


「夫が言っていたのですが、仕事から丁度うちへ帰ってきた時に、森へ入っていく怪しい影を見たので、咄嗟に隠れたと……。その直前にまた近くの住宅が荒らされていたので、恐らくそれが荒らしの正体なのかもしれないと二人で話していたのですが……」


それまでの話を聞いて、セルト達四人は顔を見合わせ頷く。


「やっぱり……。今回の依頼の解決の糸口になる目的地は二輪車を停めた、その先の森の中に違いなさそうね」


燐寧が全員の心中をまとめた。


「あぁ、被害も収まってないしすぐにでも向かおう。お辛い中、色々とお話聞かせて頂きありがとうございました」


セルトは三人へ指示し、清美へは礼を告げる。


「いえ、少しでもお力添え出来ていれば幸いです……。お気を付けて」


最後に彼女のその言葉を受け、セルト、燐寧、ユンボ、メミルは森の中、ならず者の根城へと向かい始めるのだった。






to be continued……

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