#α-こんな筈じゃ
お目に留めて頂き、ありがとうございます。
大藤野原の処女作、お楽しみ下さい。
暗所。
「……あんたとこんな形で相対するとは思わなかったよ」
少女は5mほど先に向かい合った青年へ発する。
両者は物騒にも、精悍で立派な剣を、構えてはいないが手にしていた。
「俺もだよ。同胞のつもりではあったんだけどな」
そう青年が返した。
そのまま二人のやり取りは続く。
その口火を切るのは少女の方から。
「あたしはあんたに恩は感じてる。今ここにあたしが立っていられるのはあんたのお陰だから。けどそれは……あの頃はまだ立場が同じだったから、なのかな」
「……それは合ってるようで、違う。お前には信頼出来る仲間が何人もいたんだろ? でもそれもみんないなくなった。そしてお前が最後の一人になったところで、俺はお前を偶然にも救って、そこでようやく俺とお前は同じになっちまったんだよ」
「……お互い独りだったんだね」
「俺はずっと、だったけどな。そしてまたもう一つ同じではないところがある」
「……なに?」
「それはな……俺は一番強くて、お前は一番弱いってところだ」
そこまで続けられたところで、少女は目を見開いた。
かと思うと、彼女はプッと吹き出す。
「……そうだね、確かに同じじゃない」
「……」
青年は少女の瞳を見据えたまま、何も言わない。
次に言葉を紡ぐのはまた少女。
「あたしはもうあの頃と同じじゃない……。独りぼっちの弱っちい戦士なんかじゃない……!!!!」
両者の、剣を握る拳に力が篭った。
余談だが、この青年の方は異世界転生者であり、またこれらのやり取りは彼が異世界へと転生して来て暫く経ってからのものである。
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