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第4話 名誉エルフに制裁を下す

 村長の部屋は贅の限りが尽くされている。

 東方から輸入したのだろうか、おびただしい刺繍の施された壁掛けがかかっている。


 その隣には人の皮がかけられていた。

 ここに来る人間への警告だろうか。

 戒め。脅迫。


 何とでも取れるがただただ気色が悪い。


 俺の中にいる老騎士はたぶんこの場所に来たことがあるのだろう。

 俺が今座っている村長の席。

 その向かいに座った記憶がある。


 その時にはすでに、人間の皮はかかっていた。

 そして、俺はその人物が誰か知っている。


 親友だった。

 涙が流れた。


 俺は驚いて涙をふく。

 いきなり、扉が開かれた。


「お前か! エルフ様を殺したのは!」


 筋骨隆々というのだろうか。

 ひげを生やし、健康的な体をした男たちが部屋に入ってきた。

 先頭の男は頭が禿げ上がっている。


「申し訳ありません。止めたのですが」


 村の女が彼らの後ろから現れて言った。


「女は黙ってろ」

「きゃあ」


 女はハゲに突き飛ばされて、壁に頭をぶつけ意識を失った。

 サキナがやってきて介抱している。

 ハゲが言う。


「エルフ様はこの村をお守りしていたのだ。魔物を退け、税を徴収し、村のために尽くしてくださったのだ。それを、お前は!!」


 長髪の男が言う。


「ああ、私は怖いエルフ様からどんな仕返しをされるか。領主様が黙ってはいないでしょう」


 長髪の言うことはもっともだが、そんなことは知ったことではない。

 来たら来たで返り討ちにするだけだ。


 奴らは言いたいことを言い続けた。

 村人たちが料理を運んできたが、文句を言うハゲがそれを地面にたたき落とした。


 地面に肉料理が落ちる。

 絨毯にシミが広がる。

 頭の中で何かがはじけた。


「なんだこいつらは」


 サキナに問う。


「名誉エルフです。エルフに媚びて甘い汁を吸ってきた愚か者の人間たちです」


 ああ、さっき言っていた奴らか。


 それを聞いた名誉エルフたちが怒鳴りだした。


「何を言うかこの劣等種が。お前の母親のように牢に入れられたいのか!」


 牢という言葉を聞くと村人たちはひるんだ。

 名誉エルフたちはにやにやと笑っている。


「牢とは何だ」

「見せてやろう。来い。いい機会だ。こいつに忠誠心というものを教えてやる」


 長髪の名誉エルフがサキナの腕をつかみひきずっていった。


「デウス様! 助けてください!」


 サキナが叫んでいたが、俺はだまって奴らについていった。


 牢は村のはずれにあった。

 深く掘った穴に木で作られた格子でふたがされている。

 穴の中には魔物がうごめいていた。


 名誉エルフが格子の一部を開ける。

 途端、穴の中の魔物が騒ぎ出す。


「エルフ様への忠誠が足りない連中をここで叩きなおしているんだ。ま、忠誠心が足りないやつは大抵この中で死んじまうがな」


 笑いながら、長髪がサキナを穴のそばに連れていく。


「いやだ! いや! デウス様!!」


 俺は長髪の腕をひねってサキナを放した。


「デウス様!」


 腕をひねられた男がうめいている。

 サキナが俺の後ろに走ってきた。


「忠誠が足りないやつを叩きなおしているんだろ? 忠誠が足りているやつは耐えられるということか?」


 俺は長髪を穴に突き落とした。


「ぎゃああああぁぁぁぁ」


 悲鳴が上がり、男は魔物に食い殺された。


「おい、死んだぞ。忠誠心がたりないな」


 俺はすぐ近くにいた名誉エルフの腕をつかんだ。


「ちがうそういうわけじゃな……ぎゃあああぁああ」


 俺は次々に名誉エルフの男たちを穴に落とした。

 村人が逃げようとする男たちを取り押さえた。


 地面に押しつぶされている名誉エルフたちの襟をつかんで、穴に放り込む。

 次々に悲鳴と、血しぶきが上がる。


 名誉エルフは全員忠誠が足りなかった。

 当然だ。

 剣も持たずに魔物の巣に入れば死ぬのは当たり前。


「お前が最後の一人だぞ。忠誠心をみせろ」


 俺はそういったが、村人に取り押さえられているハゲは半泣きで言った。


「申し訳ありませんでした。エルフの指示でやったことです。お願いですから助けてください」

「さっきサキナが嫌がってるのに穴に落とそうとしただろう。ほかのやつにも同じことをしたのだろう」


 村人は肯いた。

 彼らはハゲのことを睨んでいた。


「それでは落ちても仕方がない」


 俺は最後の男を穴に落とした。

 

「ぐあああぁぁぁぁ」


 断末魔の叫びが聞こえなくなる。

 魔物たちは満腹そうにうごめいている。


 村人たちは互いに手を叩きあって、満足げだ。

 心底嫌っていたのだろう。


 俺はハゲの頭が魔物にかみ砕かれるのを見届ける。

 弱肉強食の世界で強者の体に貼り付いて生きるやつはさらなる強者に食われんだよ。

 俺は何度も食ってきたし、食われるのを何度も見てる。


「戻ろう。料理が待っている」


 俺は頭を下げ、祈る村人を横目に村長の家に戻った。

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