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第2話 虐げられている娘を助ける

 しばらく歩くと声が聞こえた。


「なんで魔物がいないんだよ!」


 ムチのようなものが空を切る音。

 何かを打つ。


「すみません。すみません」

「お前を痛めつけたって楽しくもなんともないんだよ!」


 そう言いながらもムチで打つ音は続いた。


 俺が音の場所にたどり着くと、エルフが三人と人間の娘が一人いた。


 娘は全裸に近い格好だ。首輪をはめられている。

 首輪から伸びる鎖を臆病そうなエルフが握っていた。


 娘は傷だらけだ。

 ムチによる跡が痛々しい。


「何だ魔物か? 人間みてえだが角が生えてるぞ」


 ムチを持ったエルフはそう言うと腰から剣を引き抜いた。


「やっと狩りができる」


 笑いながらエルフは俺の腹に剣を突き刺した。

 

 痛みが脳を支配する。

 が、慣れたものだ。

 今までだって腕を何本ちぎられてきたか。


 俺は右手を突き出した。右手はエルフの鎧を貫通する。

 胸の中にまで腕は入り、心臓をつかむ。

 そのまま引き出した。


「ぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 エルフの悲鳴がこだまする。

 俺の右手には、目の前で叫び倒れたエルフの心臓が握られている。


 かじりつく。

 歯形がつく。

 くちゃくちゃと口を動かし、飲み込む。


 不味い。ひどい味だ。

 しかし空腹は空腹だ。

 さっきダンジョンコアを食ったっていうのに。


 俺が奴の心臓を食べ終える前に、もう一人のエルフが切りかかってきた。


 切りかかってきたエルフは俺の首に狙いを定めていた。

 俺は左手で、振り下ろされた剣を握る。

 剣はビタリと止まり、エルフが動かそうとしたがびくともしない。


 俺は食べかけの心臓を口に運ぶ。


 全て心臓をのみこむと、俺は腹に刺さっていた剣を右手で引き抜いた。

 

 ぶしゅり。

 

 赤とも茶ともつかない色の液体が噴き出したが、一瞬で傷が閉じる。

 まるで、ツタが壁を覆いつくすように、傷口にミミズのようなものが絡まって穴がなくなる。


 さすが回復力10000倍だな。


 俺は剣を振って、エルフの両腕を切り落とした。

 なかなかの切れ味だ。

 

 エルフは叫び声をあげると、膝をついて、嘔吐した。


 左手に持った剣には、まだエルフの腕がぶら下がっている。振り落す。

 剣を持ち直す。

 二本の剣を交差させて、膝をついて嘔吐を続けるエルフの首を切り落とした。


 土下座をするように倒れたエルフは吐しゃ物に首を落とした。

 奴の背中に腕を突っ込み、心臓を引き出す。

 喰らう。


 やはり不味い。


 最後のエルフは剣を構えることもせず、ズボンの股間部分を濡らしてぶるぶる震えている。

 そのくせ、鎖を離すそぶりがない。

 しっかりと握りしめている。


 俺がエルフに近付くとエルフは悲鳴を上げた。


「やめろ! 来るな!」


 どうやら俺は奴らの言葉がわかるらしい。

 心臓を喰ったからかもしれない。


エルフは人間の女を盾にするように、彼女の背を押した。

 女は俺の姿を見て震え、涙を流している。


 俺は人間に興味がない。こいつらの心臓には魔石がない。

 喰ったところで腹は膨れない。


 俺は、女をわきによけて、エルフの頭をつかんだ。

 壁にたたきつける。

 臆病なエルフは顔を半分なくして、そのままずるずると地面に倒れた。


 俺は最後の心臓を食べ終えると息を吐いた。

 まだ足りない。

 空腹だ。


 俺は死んだエルフから服と鎧をはぎ取って身に着けた。

 

 裸同然の女は俺のことをじっと見ている。

 驚いている。


 畏怖?

 畏敬?


 それはわからない。


 声帯を作り上げる。

 発声。


「お前も服を着ろ」


女の身体は傷だらけだった。

 エルフたちの記憶によれば、いたずらに暴力を受け、盾として連れてこられたようだ。


 女は目を見開いた。


「言葉がわかるのですか?」

「俺の言葉の意味がお前に分かるなら、そうなのだろう。服を着ろ。そして、ここから立ち去れ」


 俺は死んだエルフたちの持ち物を物色した。

 奴らの記憶によれば回復薬があったはずだ。


 見つけると、俺は回復薬を女に手渡した。


「傷を治せ」

「いっ、いいのですか? こんな高価なものを……」

「いい。使え」

「はい、わかりました。ありがとうございます」


 女は回復薬を飲んだ。途端に全身の傷が癒える。


「ああ、これほど体が楽なのは久しぶりです」

「治ったなら服を着ろ」

「はい。すいません」


 女は臆病者のエルフの服を着るとうつむいた。


「早くここから出て行け」

「しかし……」


 女はためらいの表情を浮かべた。


「なんだ?」

「このダンジョンは世界でも最高のダンジョンです。あのエルフたちは、あれでも精鋭でしたのでここまで来れました。私一人で出て行くことなどできません」


 この女がどうなろうと俺の知ったことではない。

 そのはずだがなぜだ。

 なぜ俺は回復薬など渡したんだ。


 それに、今はこの娘を助けなければならないと思っている。

 老騎士のせいか。

 意思とは面倒なものだな。


「そうか。わかった。出口まで連れて行こう」

 

 俺がそう言って歩き出すと、女は少し離れてついてきた。


「あの、ご主人様」

「主人ではない」

「それではなんとお呼びすればよいでしょう」

「好きに呼べ。名はない」

「では、デウス様とお呼びします」

「デウスか。大仰な名だな」


 老騎士の記憶によれば神の名だ。

 そこで、俺はこの女の名前を聞いていないことを思い出した。


「お前、名は何という」

「サキナと申します」

「ではそう呼ぼう」

「あの……」


 サキナは何かを言いよどんだ。


「なんだ?」

「デウス様は神なのですか?」

「俺はただの魔物だ」

「嘘です!」


 サキナが立ち止まった。


「その角が証拠です。デウス様あなたは神なのでしょう? 伝承にも神には七色の角が生えているとあります」

「いや、だから……」

「お願いがあります。デウス様、村を救ってください。野蛮なエルフたちから、人間たちを救ってください!」


 サキナは祈るように地面にひれ伏した。

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