第10話 レジスタンスの拠点へ
「ここがレジスタンスの拠点」
そう言って連れて来られたのはどう考えてもゴブリンの巣。
洞窟のような場所だった。
洞窟の入口には扉がついている。
例によってサキナとロンを連れてきたが、ほとんどついてきたと言っていい。
念の為、俺は角を隠しておいた。
サーニャが扉を叩くと、小窓があいて、目が覗いた。
「あたいだよ! 帰ってきたよ!」
小窓から覗いた目がぎょっとして扉が開く。
ガタイのいい男が出てきた。
「サーニャ! おいみんな! サーニャが帰ってきたぞ」
男が叫ぶと洞窟の中から小さな子が飛び出してきた。
「サーニャ! サーニャあああああ!」
泣きわめいてサーニャに抱きついた。
「もう会えないかと思ってたああ!」
「よしよし、トリン。帰ってきたよ」
サーニャはそう言ってトリンの頭をなでた。
ぞろぞろとレジスタンスが出て来てサーニャを囲む。
「よく帰ってこれたな」
「捕まったんだろ」
「どうやって出てきたんだ?」
「この旦那に助けてもらったんだ」
サーニャは俺たちをレジスタンスに紹介した。
「よく助けてくれた。恩に着る」
レジスタンスの面々が頭を下げる。
「ありがとー!」
トリンが俺に抱きついた。
◇
俺たちはレジスタンスの拠点に通された。
洞窟内は意外と広く、彼らは全部で60人くらいいた。
「レジスタンスは他にもいるんだ」
サーニャは説明した。
「一つの場所にいると危険だからね」
「たしかにな」
俺は村についてレジスタンスの長ブラッドフォードに説明した。
歴戦の猛者と言った様子で、頬や腕に深い傷跡があった。
「それは本当か!?」
領主の話を続けてすると、レジスタンス中が反応した。
「俺たちはこれから領主が支配していた村を奪還する。村は全部で17。オレたちの村を除けば16の村が、まだエルフの支配下にある。はっきり言ってしまえば、俺一人で、村を制圧できる」
「私達の村も一人で制圧されました」
サキナが補足した。
「問題は制圧したあとだ。村人たちには食料が足りない。それに魔物が迫ってくる危険がある」
「俺たちが魔物を倒し、その肉を村人に振る舞えばいいんだな」
「そういうことだ。まずは俺達の村を拠点にしてくれ。これはサーニャの案だ。俺たちが他の村を制圧している間がら空きになるのは避けたいからな」
「わかった」
ブラッドフォードの手が震えている。
顔に笑みが浮かぶ。
「久しぶりのクエストだ。まるで、そう、まるで冒険者ギルドがあった頃のような気分だ」
ブラッドフォードはレジスタンスたちの方を見た。
「野郎ども! クエストだ。人間たちを救うぞ」
「おおおおおおおおおおお!!!」
鬨の声が洞窟内に響き渡った。
◇
まずはレジスタンスを半分に分けた。
ブラッドフォードやサーニャの班を引き連れて、俺達は一番近い村に向かった。
木の陰から見ると、やはり、俺が初めて見たときと同じように村人はエルフに虐げられている。
農民はムチを打たれ、蹴られ、奴隷のように扱われている。
「ここで見ていろ。それと、俺の姿は気にするなよ」
俺はそう言って、木の陰から出ると角をはやした。
魔物の襲来かと身構えたエルフたちはあの日と同じように、村人たちを盾にした。
俺は右手を上げた。
◇
「すごい」
ブラッドフォードは地面に散らばる魔石を眺めてそうつぶやいた。
「本当に神みたいだ」
サーニャがいうと、サキナが語気を強めていった。
「本当の神様です! みていたでしょう」
「ああ、これは本当に認めなきゃいけないかもな。それにその角、あたいも伝承くらい聞いたことはあるよ」
「そうでしょう」
サキナは自分のことのように胸を張った。
村人たちがよってきて、俺を崇めた。
「ああ神様。いつか、私達を助けてくださると毎日祈っておりました」
俺はもう神と呼ばれることに慣れていた。
呼ぶなら勝手に呼べばいいさ。
うまい飯をくれればそれでいいんだ。
「これなら、すべての村を救える!」
ブラッドフォードは興奮したように言った。
実際、16すべての村を奪還するのに、そう時間はかからなかった。
俺たちは領地の中からエルフをすべて追い出し、殺した。