表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/11

第1話 世界最強のダンジョンでコアを食った魔物

 食欲。


 俺はそれだけで生きてきた。


 初め、俺は何だったのだろう。

 多分小さな虫程度。空腹を抱えた虫だ。


 生まれた瞬間から戦争が始まった。

 適者生存。

 自然淘汰。

 兄弟を喰らい母親を喰らい、みるみる体を大きくして、スキルを得ていった。


 生まれた瞬間、持っていた称号


〈暴食〉


 喰らえば喰らうほどレベルは上がり、敵のスキルを習得する。

 敵の記憶すら習得して、戦い方を学んだ。


 俺はこの称号のおかげで生きてこれた。

 

 美味いものに出会ったためしはない。

 皆不味い。


 不味いが生きるためだ。

 殺す術を磨き、死なぬ術を磨き、俺はこのダンジョンで生き残った。




 しかし今、俺は異常なほどうまいものを食っている。

 こんなものは食ったことがない。


 何だこれは。


『意思を獲得しました』


 突然、頭の中で声がしたかと思うと、意識がはっきりする。

 目の前で起きていることがわかる。

 俺は両手でなにか球体だったものをつかみ食らっている。


 壁にはもともとこれがはいっていたであろう丸い穴が空いていて、そこからどろどろとした液体が流れ出ている。


 洞窟のような場所だ。

 頭の中にダンジョンという単語が浮かんだ。

 どうしてそんな言葉を知っているんだ。


 ダンジョンの中に高い断末魔のような余韻がこだましている。

 多分、この球体を外したときにダンジョンが発した音だろう。


 この球体はダンジョンにとって重要なものなのか?


 ――ダンジョンコア


 またしてもいきなり単語が浮かぶ。

 

 老騎士だ。

 俺は昔食らった老騎士の知識を使っている。


 いつ食ったか、どこで食ったかは覚えていないが確かに、老騎士セドリックの記憶が俺にはある。

 

 俺はダンジョンコアを食い尽くした。

 

 ああ。


 満足だ。


 途端に、またしても頭の中に声が響いた。


『称号〈大罪〉を取得しました』

『取得済みの称号〈暴食〉を統合します』

『称号〈傲慢〉を取得しました。▓▓を超えます』

『称号〈憤怒〉を取得しました。攻撃力が10000倍になります』

『称号〈色欲〉を取得しました。崇拝の対象になります』

『称号〈怠惰〉を取得しました。回復力が10000倍になります』

『称号〈嫉妬〉を取得しました。魔力が10000倍になります』

『称号〈強欲〉を取得しました。得たスキルの能力が10000倍になります』


 体に異常なほど力が湧く。


「うがあああああ」


 いきなりの頭痛に俺は叫んだ。

 メリメリと音がして、頭から2本の角が生える。


 七色に輝くそれは額から生えている。


 痛みが収まると俺はゆっくりと立ち上がった。

 振り返るとそこにはドラゴンが横たわっていた。

 腹を割かれ、心臓を取り出されたドラゴン。


 おそらくダンジョンコアを守っていたのだろう。

 俺が殺したんだ。


 心臓の中には魔石がはいっている。

 俺はそれを食らって生きてきた。


 やはり、心臓は2つに割られ、中から魔石が取り出されている。


 俺は額の角に触れ、自分の体を見下ろした。

 腹をさすった。


 黒く、でこぼこした、生物の死体が折り重なってできたような体。

 醜い。


 醜い?


 そんなことを今まで感じたことはない。

 これも意思を得た影響なのか。


 体を作り替えよう。


 意思を持ったことで、自分のスキルを理解できる。

 スライムか何かの能力を喰ったことで得たのだろう。

 俺は〈身体変化〉の能力を持っていた。


 何をもとにしようか。

 醜くないもの。

 

 老騎士。

 彼がいい。

 

 俺は老騎士の若いころに似た姿に体を作り替えた。

 完全に再現できたわけではないが。

 裸の、男らしい姿になった。


 股の間にモノはない。

 男らしい姿ではあるが男ではない。


 俺に性別という概念はない。


 俺はその姿のまま、目の前にあった巨大な扉を開け、ダンジョンコアのあった最深部から出た。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ