表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

ニラはストーンの?!

ニラはストーンを冒険家協会(ギルド)に連れて来ます。

そして、ニラはストーンを茜亭に連れて来ます。


さて、ストーンの持ち物は?



第4話


帝暦2021年NANAの月12日 ドバ帝国

帝都トロイの辺境都市ヌーマタ 


ニラは口元に浮かぶ笑いを堪えていた。

押さえても押さえても零れてしまうのはどうしようも無いのだ。

好みの男と並んで歩いている。こ、これはデートと言う奴では?むふふと笑いを堪えているニラの横ではストーンが首を傾げて言った。

「ニラさん、この先には何があるんです?」


ニラさんだって!さん付けで呼ばれるなんて初めてだわ。うふふ。

冒険家協会(ギルド)よ。ストーンさんを登録して貰うわ。」

「なるほど」

「身分証明をストーンさんは無くしてしまっているから簡単に身元保証が出来る冒険家協会証明(ギルドアライアンス)を採るのよ。あたしがいれば直ぐに採れる筈だわ。」

森から降って小一時間程の町外れに冒険家協会(ギルド)はあった。二階建ての中々に広い敷地を保った建物である。入り口付近の長椅子には数人の冒険家達が(たむろ)っていた。それを目でニラは挨拶しながらドアをストーンと潜る。女であるニラを見る男達の好奇心に満ちた目を無視するのはいつものことだった。そのがさつな態度は冒険家で無く冒険者(ハンター)と揶揄される。

冒険家協会(ギルド)の内部は右手にカウンターバーのある休憩場と左手に受付が3つである。2つが依頼受付と報酬受付を兼ねていて一番端が買取受付である。ニラはカウンターバーに一番近い受付に顔見知りを見つけると並びの後にストーンと並んだ。前の男は受付嬢に何やら文句を言っていた。それでもようやく納得したのかブツブツ言いながら列を離れていった。そしてニラと目を合わせた受付嬢が矢継ぎ早に質問する。

「あら、ニラ。随分と掛かったわね。ダンナアの旦那はどこ?そこのイケメンは誰?」

「サラ、その事だけどオゼの森の洞窟探索は失敗したようなものだわ。戦士ダンナアは死んだわ。まず、その報告。」

えっ!と声を挙げてサラと呼ばれた受付嬢は立ち上がった。その後ニラはサラに今朝の出来事を語って訊かせた。ストーンが背負って持って来た魔物の討伐証明部位の入った袋を証拠としてサラに渡す。それを見たサラは慌てて2人を待たせたまま奥に引っ込んだ。そして小柄な髭だらけの男を伴って来た。

「おお、ニラだっけ?サラの話は本当か?」

男は冒険家協会(ギルド)長のダイソン・バキュームである。かつては上級を越えた特級冒険家と言われた男である。今では見る影もなく躰は萎み老人に見える。だが、強靱な筋肉は残り鋭い眼光は衰えていない。しかし、ストーンやニラより背丈は低い。

ニラが頷くとダイソンは

「奥へ行こう」

と言って先に中に入ってしまう。ストーンとニラはサラに先導して貰ってカウンター横の入り口から中に入っていった。


小部屋でニラは再び出来事を話した。

「それにしてもオークナイトのはぐれ者とはなあ。グリーンゴブリンが28匹とボブゴブリンが3匹か。戦死者は戦士ダンナアだけか。洞窟の外で倒れていた盗賊ヤソジとか言う男はどうした。」

「怪我を簡単に治療して薬草をやったら街の入り口で姿をくらましたわ。」

ニラがため息を付く。とことん個人主義なパーティーだったようだ。ほとんどニラがパーティーの雑事の面倒を見ていたようだ。だからこうして冒険家協会(ギルド)まで来て報告と警告をする。また、討伐報酬も出るらしい。戦士ダンナアの遺体はストーンとニラが洞窟の近くに埋葬したが改めて冒険家協会(ギルド)で掘り返して検証するという。それから付近の探索調査がダイソンの一言で決まった。ニラにも参加しないかと誘われていたが断っている。

ダイソンは傷心を気遣っていたがニラの頬が緩んでいるのをサラは気付いていた。ダイソンが慌ただしく出て行った後でストーンの冒険家協会(ギルド)登録がそのまま続けられた。

「あんた、喜んでいるでしょ。」サラの一言にニラは動揺した。

「な、何よ!そんな訳ないじゃ無いわ。けっ結婚間近だったのよ。」

まあ、ちょっとは嫌だったけどと小声でブツブツと言う。

動揺するニラをニヤニヤ見ながらサラはさっさとストーンの登録と説明を始めた。


「ストーンさん、冒険家協会(ギルド)のシステムを説明するわね。

取り敢えずあなたの(クラス)鉛級(ビスマス)だわ。ここヌーマタの支部では初級に入るわ。冒険家協会(ギルド)の推薦する仕事(クエスト)を幾つかこなして次の級クラスに上がれるわ。鉛級の次は鉄級(アイアン)銅級(ブロンズ)、此処までが中級よ。そして銀級(シルバー)金級(ゴールド)が上級、白銀級(ミスリル)は特級とも言うわ。最後が伝説級(アダマンタイト)になるわ。伝説級(アダマンタイト)は今の時代誰もいないわ。このプレートは首から吊して置くとこ。それからあなたの保証人はニラになるから1年はニラと離れて行動は出来ないわ。あなたが何か不祥事を起こすと全てニラが責任を負うわ。ニラに迷惑を掛けたくなかったら大人しくしている事ね。1年すれば保証人が取れて一人前の冒険家になれるわ。

何か質問あるかしら。」


サラはストーンに説明しながらニヤニヤとニラを見ていたようだ。

当のニラはストーンを熱い目線で見とれている。サラがニラが保証人だと言うと驚いてニラの方を向いたがニラは慌ててあわあわしていた。ストーンが良いのかと問えばニラは助けて貰ったとか行き掛かり仕方ないとか色々言い訳をしていたが惚れてしまったのが理由だとサラには一目瞭然だった。

冒険家協会(ギルド)からの依頼(クエスト)は断ることも出来るのか?何かペナルティはあるのか?それと強制される事もあるのか?」

ストーンの質問は至って真面目であった。

「断れるわ。でも余り断って依頼(クエスト)を選びすぎると嫌われるわよ。失敗すれば罰金があることがあるわ。依頼(クエスト)の内容次第かしら。強制依頼(パワークエスト)集団戦(レイド)になるわ、街の防衛(ガーディナー)とか魔物暴走(スタンビート)討伐の時ね。」

サラの説明にふむふむとストーンは頷いている。

「後は貴族からの依頼は上級からしか無いから安心して良いわ。指名依頼(スタント)じゃない限りはね。これは滅多に無いわよ。何しろ特定の貴族との繋がりが無いとあり得ないから。無関係な冒険家に無茶ぶりさせるような貴族からの依頼(クエスト)は流石に冒険家協会(ギルド)が冒険家を守るわ。冒険家協会(ギルド)が適正と判断すれば通ることもあるらしいけど私は聞いたこと無いわね。」


サラはストーンが納得したようだったので登録カードを見せた。登録カードは掌にのる程度の薄い金属であって長方形の端に赤く輝く魔石が埋め込まれていた。

「これがステータスカードよ。人差し指を少し切って血を一滴この魔石に染みこませて。それでこのカードに表示が出るわ。表示を読めるのは本人と冒険家協会ギルドにある特別な魔法道具だけよ。無くさず肌身離さず持っていること。自分の状態を知ることも出来るわ。」

サラがそこまで説明した時、ニラが懐から同じ様なカードを取り出した。

「こういうものよ。こうして魔石の部分に指を乗せると見えるようになるの。」

ニラがやって見せるとカードの表面にぼんやりと何かが浮かんだ。

「ほら、本人にしか読めないけどここにあたしの(クラス)とか、名前とか、年齢とか、倒した魔物の種類とか数とか強さとか色々書いてあるわ。

あっ!そうか。これでストーンさんの名前が分かるかも。」


サラは何の話?と言う顔をする。それを無視してストーンが言われた通り自分の血を赤い魔石に垂らすとカードが光り、やがて消えると魔石の色が青になる。ストーンがニラの方を見るとニラは頷いた。指の血を拭き取り再びストーンが指を魔石に当てるとニラの時のようにカードにぼんやりと光が点る。

「どう?」

ストーンが首を振る。どうやら駄目だったらしい。

「ストーンって表示されている。ただ判ったことがある。どうやら俺の年は18らしい。」

ニラは驚いた。見た目よりもっと年上に思っていたらしい。

「登録は出来たようね。じゃあちょっとカードを借りるわね。」とサラは言ってストーンのカードを摘まみ上げると別室に行ってしまったが程なく戻って来た。帰ってきたサラにニラは訊く。

「何をしてきたの?」

「ヌーマタの中央登録装置(マスター)にストーンさんのカードを登録して来たのよ。これで何処の冒険家協会(ギルド)に行っても使えるわ。さっきこのカードの使い方を説明しなかったけどニラが知っているから要らないわよね?」

怪訝そうな顔をするストーンにニラがにっこりと笑いかけながら説明する。

「これからあたしと一緒に冒険すれば色々とカードの使い方を教えることになるから心配は要らないわ。安心して、あたしはストーンさんの保証人なのよ。」


「じゃあこれでストーンさんの登録は終わりね。冒険家協会(ギルド)へようこそ、ストーンさん。何かあったらニラだけじゃなく私も頼ってね」とサラはストーンにウィンクして、2人に退出を促した。

カウンターから出た冒険家協会ギルドの中はかなり混で雑然とした雰囲気だったがきっとストーンとニラがもたらしたオゼの森の異変に対するものだったのだろう。その混雑を縫って2人が外に出ると太陽は中点を抜けてやや傾きかかっていた。

「お腹を満たすのとストーンさんが泊まる為にあたしが常宿にしている『茜亭』に行きましょう。直ぐそこだから付いて来て。」

ルンルン気分のニラに戸惑いを隠せないストーンがゆっくりとついて行く。茜亭はニラの言うとおり同じ通りを西に下って行った道の反対側にあった。入り口はさほど大きくは無いが奥行きがあるようだった。造りは古そうでそこそこ趣がある、ぶっちゃけかなり年季が入っていると言って良いだろう。ニラ的には好みなのだ。入るとそこは食堂の呈をしており奥に続く通路の手前にカウンターがあり、そこに幼女が座っていた。

「ヤッピー♪ニラだぁ!」幼女はニラを見つけるとニラが声を掛ける前に少し腰を上げてニラに話し掛けた。

「リリィちゃん、ただいまー!」和やかにニラは幼女リリィに話す。

お互いに抱き合い頬を擦り合わせる位仲良しなようだ。そこでニラの近くで立ち尽くすストーンを見つけた。

「ニラ、こちらのハンサムさんはどなた?」リリィの態度はいきなり変わって年相応に見えないほど丁寧な言葉遣いになった。

「ストーンさんと言うのよ。あたしの部屋の隣空いてたでしょ。そこに今日から泊まるから宜しくね。宿代はあたし払いで良いわ。」ニコニコ顔のニラを見てリリィが目を丸くする。

「ええっ!ニラの彼氏?!」

「違うわよ。ストーンさんの保証人になったから面倒を見てるのよ。」

ニラの言葉にリリィはカウンターから出て来てニラを隅に連れて行ってこそこそ話し出した。ストーンは所在なさげに宿屋の中を見ている。

ニラはリリィちゃんに要点だけを話した。余り難しい話は理解できない幼女なのである。わかった!と立ち上がり、スタスタストーンの方に料理は近付いて言った。

「ようこそ、茜亭に。あたしはリリィ!7歳よ。茜亭の看板娘なの!偉いでしょ?宜しくね。宿代はお聞きになりますか?」

リリィの言葉遣いは幼女と看板娘の言葉が入り交じっておかしな具合なっていた。

クスクス笑いながらストーンは続きを促した。

「一晩は銀貨2枚、朝食付きなら3枚です。ただ、夕食はありません。夜の食事をするときに銀貨1枚と銅貨5枚を払って下さい。家の食事は外からも来るほど美味しいと評判なのです。他にもサービスはあるのです。お湯が必要なときは言うのです。氷が必要なときは言うのです。お使いが必要なときは言うのです。でもお使いは銅貨2枚なのです。リリィのお小遣いになるのぉ!あは♪あとあと~何かあったかなぁ?」

「先ずはその位で良いよ。判らなかったらその時に教えてね、リリィちゃん」

きゅ~ん♪リリィの目がハートになる。どうやらストーンに一目惚れのようだ。


「じぁ取り敢えずストーンさんの部屋に行きましょう。」とニラが移動を促し、ふくれっ面になるリリィを置いてニラとストーンは階段を上がりある角部屋に入った。窓が南と西にあり日当たりが良さそうだ。窓には薄汚れてはいるが硝子(ガラス)が嵌まっていて高そうに見える。南側の窓からは遠くに塔の様なものが見えていた。西側は高い建物は無く太陽が覗いていた。

「気に入ったかしら、ストーンさん。ここは外からも見えるから余り使いたがる人が居ないのよ。特に脛に傷を持ったような後ろ暗い人にはね。」

窓側から入り口を振り返りニラに向かってストーンが口を開く。

「良いのか?高そうに見えるんだが。」

「大丈夫よ、リリィちゃんが言ったようにどの部屋も一律の値段だから。隣の部屋はあたしの部屋だから壁を叩けば直ぐにでも駆け付けられるわ。」

怪訝そうな顔をするストーンにニラが説明をする。

「古くからあるこの茜亭でも揉め事はあるわ。逃げ出すには窓から隣の家の屋根伝いに行けるからストーンさんにはぴったりだわ。」

「俺は揉め事を起こす積もりなど無いんだがな。」

ニヒルな笑いを見て心の中でニラは喝采を上げていた。

「取り敢えず、ストーンさんの荷物を確認しなくちゃね。何か身元のわかる物があるかも知れないわ。」

ニラは鍵の閉まらないドアを閉めるとベッドの上に放り投げられていたストーンのリュックに近付き、隣に座った。ストーンは自分のリュックを持ち上げ逆さにして中身をぶちまける。所々染みはあるものの洗濯されて小綺麗なシーツの上に色々なものが散らばった。その中にニラは魔石らしきものを見つけ手に取ると日に透かしで透明度を確認する。

「これって・・・レッドクリスタルだわ!」

レッドクリスタル?知らないと言う風にストーンがニラを見る。

「本物なら金貨100枚以上、白金貨レベルの価値があるわ。レッドクリスタルはダンジョンのお宝の中で凄く価値があるのよ。階層で言えば10は降らないと見付からない筈よ。何処で手に入れたのよ、ストーン!」

興奮の余りニラはストーンを呼び捨てにした。

「いや、確か変な洞窟の中の突き当たりにあった宝箱の中にあった物の筈だ。この辺に転がっている魔石なんかと一緒にあったと思うが・・」

顎をさすりさすり、記憶をまさぐる様子でストーンは答える。確かにぶちまけた中には大小様々な魔石があるがそれ程驚くような大きさでは無い。せいぜい中型の魔物が持ってそうな魔石だった。

「ストーンさんが10階層でこれを見つけたとしたら実力はは銀級(シルバー)に届いていると言う事よ。冒険家に成り立てがこんな物を持っていたら盗んだと疑われるわ。高く売れると思うけど危険ね。」

そう言うとニラはストーンのバッグの中にレッドクリスタルを放り込み、散らばっている魔石を大きさで分け、色で分け必死になって計算する。魔石以外には何を意味しているのか判らないような紋様が刻まれた円盤やくすんだ色合いの金属片などストーンがどうして持ち歩いていたのか判らないようなものが散乱していた。他にはカサカサに乾いた薬草らしきもの、何かの牙や角などがある。やっと計算し終わったのかニラが口を開いた。

「魔石だけなら多分金貨14枚程度の価値があるはずよ。他にこれとか、これなんか売れそうね。」

そう言って薬草らしきもの、牙らしきもの、角らしきものを分けて並べる。

どうやらそこそこ価値のあるものをストーンは持っていたらしい。

「全部売ってしまっても大丈夫かしら。売れば宿代は当分大丈夫だし、ストーンさんの装備やポーションなんかも手に入るわ。」

和やかにニラはストーンを見上げた。

「ああ、良いぞ。金になりそうなものは売ろう。まあ、装備は相談だがな。」

ストーンはまだ身なりが悪くなっている事を気付いて居ないらしい。何か曰くがあるのかも知れないとニラは思った。

「じゃあ、今日はこれまでにして、階下で食事しましょ。明日の予定が決まったわね。」

売り物になりそうなものを小袋に詰めてリュックに手早く戻し、立ち上がったニラが嬉しそうにストーンに微笑みかけた。

ストーンはそんなニラの様子にタジタジとなりながら頷くのだった。

















ニラとストーン、田舎町でデートです。


ウキウキのニラに対して戸惑いを隠せないストーン

純情ストーンはニラに落とされてしまうのでしょうか?


ハラハラドキドキ♪


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ