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ソーン初めてのダンジョン

穴に落ちたソーンは頑張ります。

まだまだ若いんだ。

夢も希望もいっぱいです。


でも、現実は厳しいようです。



第3話 ソーンの冒険


帝暦2018年SIGAの月18日 ドバ帝国


帝都トロイの衛星都市ミハエルの近郊 キリミネ連峰 ヘンピの村の裏山

隠されたダンジョン


穴に落ちた直後は穴の中をずるずる滑り落ちていた。足や手で懸命に体を使って落ちまいとしたのだったが無駄だった。

挙げ句の果てに空中に放り出され衝撃を受けたかと思ったら、気がついた時は洞窟の中だった。

「痛たた・・・」

尻を打ったようだったが他には怪我もしていなかった。探索士の制服のお陰だろうか。尤も凄く泥だらけではあったが。

上を見上げると微かに光が射し込んで居るようにも見える。薄ぼんやりだか洞窟と思われる穴の中程に居るらしい。前後は暗く閉ざされているように見えた。天井の落ちてきたと思えた穴に向かってソーンは叫んだ。

「おおーい!ガッソさぁ~ん!」

天井の高さは3M近くあり手も届きそうも無かったが声は届くのでは無いかと思ったのだ。

暫く返事が無いかと耳を澄まして見たが何の音もしなかった。

もう一度声を張り上げて叫んでみたがやっぱり返事どころか反響も無かった。

けっこうな深さまで落ちてきたのかも知れなかった。それに気を失ってどれだけ時間が経っているのかも分からなかった。薄明かりがあると言うことはまだ日が高いと言うことだろうと思う。ただ、落ちて直ぐでないかも知れなかった。

腹の空き具合から1日程度かもと推測したが確かなことは分からない。取り敢えずリュックを降ろすと中から携行食の干し肉を取り出し食べた。細長い塩っ気の強い肉を毟りながら口に抛る。流し込む為に水を飲む。


腹が落ち着いたのでソーンは現状を把握する事にした。

泥だらけではあるが持ち物は紛失してはいないようだった。腰に水筒はある。食べ物の入ったリュックは背中に背負っている。節約すれば2、3日は大丈夫だろう。慌てることは無いがガッソに気付いて貰えなくては落ちてきた穴から這い出ることも敵わないだろうと思ったから大声でダメ元で叫んでみたのである。

僕の姿が見えなくなってガッソさん心配しているだろうなあ~

きっと捜してくれているはずだ。捜しても見付からないから手助けを連れに山を離れたかも知れない。とすれば落ちた所から離れるのは得策では無いかも知れない。いやいや、案外直ぐそこに出口があるかも知れない。出られるなら出た方が良いに決まってる。でもなあ~

僕の頭はぐるぐる回っていた。


ゴンと頭を叩く。落ち着け、俺!今は自分の出来ることをする。これは探索士の鉄則だ。どんな状況だろうとできうる限りのことをする。心配や不安を抱く暇があったら動け!と教わっているのが探索士である。

洞窟の隅には小さな段差ではあるが側溝が掘られていた。明らかに人工のものだ。であれば何処かに出口がある筈だとソーンは考えた。

では、どちらに行けば良いか?側溝がある側を目印に右手に見ながら進む事にした。行けるだけ行って駄目なら戻ってこようと考えたのだ。

薄明かりの中目を凝らして腰の方位計を見る。どうやら南になるようだった。

実はソーンはそんなに慌てていなかった。自分の持つスキル『地図作成』があれば歩いている内には洞窟の地図が出来る。それを見れば自然と出口がある場所が分かると思っていたからである。まず、壁に落ちていた小石で印を付ける。探索士の印である。

よし!これを起点にする。

そして、取り敢えず南に薄明かりの中をゆっくりと歩き始めた。


暫く歩くと左手に分かれ道があった。今までの道は続いている。頭の中で『地図』を確認する。歩いているときは気付かなかったが道は大きく左に曲がっていた。どんな形になるのかは分からなかったがそのまま進む事にした。

生き物は居なかった。ただ所々にヒカリゴケがあって暗闇の中ではあるが進むことは出来た。

更に進むと大きく左に曲がり始めた。横道は無い。構わず進んでいく。

すると今度は真っ直ぐになった。

再度、頭の中の『地図』を確認すると起点からぐるりと回っていたいつの間にか北に向かっている事が分かった。厭な予感がした。

まさかな?違うよな?

悪い思いを振り払うようにソーンは更に進むとまた左手に分かれ道があった。分かれ道の方向に進みたい誘惑を振り切ってそのまま歩いて行く。

すると薄ぼんやりと光が天井から漏れている場所に出た。

まさか、元に戻ったのか?

慌てて壁に近付き最初に書いた探索士の印を捜した。右の壁にも左の壁にも印は無かった。思わず胸に手を当ててほっと息を吐いた。

しかし、同じような場所がこれで2つ目だ。何か理由があるに違いない。ただ、こちらの天井の方がソーンが最初に落ちてきた穴の場所より低い。多分2Mも無いだろう。何か足場になるものを持ってくるか造ることが出来れば穴の中に入って行けるかも知れない。ただ、今までの穴の中には小石はあっても大きな石も余分な土も無かった。後は壁を崩せば何とかなるかも知れない。

ソーンは躊躇った。ここで天井の穴に入れるか試してみるかまだ行っていない先に進むかどうか。

腕を組んでう~んと呻ってみた。

散々躊躇った後にソーンは取り敢えずそのまま進む事にしたのだ。この先に出口があったら天井の穴に潜り込むのは無駄な努力になるだろう。やってみるのはこの洞窟の形を確かめてからでも良いだろうと判断したのだった。

よし!

小さく気合いを入れ直してソーンは進んでいく。暫くするとまた左に曲がり始めた。小さく汗が額を伝う。疲れて来たのでは無く冷や汗をかき始めていた。

頭の中の『地図』を確認する。このまま進むと最初の場所に戻るのか?

それまでゆっくりだった歩みを足早に変えていた。

カーブが無くなり直線上になった先にはやはり天井から薄明かりが漏れている穴があった。壁にはソーンが付けた探索士の印があった。

ソーンはぐるりと回る洞窟を回ってきたのだった。

頭の中の『地図』を確認すると間違いなく戻って来ている事が分かった。ソーンは2時間ほど掛けて洞窟を回ってきたのだった。

気落ちしてソーンはどさりと座り込んでしまった。

やってらんないよ!何だよこの洞窟は!

水筒から水を一口飲んで仕舞い込む。自棄になって大切な水を無くせなかった。後は途中にあった分かれ道を行ってみるしかない。

くそっ!

悪態をついて立ち上がり頭の中の『地図』を見て分かれ道に進むにはそのまま行った方が良いと判断した。歩くスピードを上げて分かれ道までどんどん進んだ。慎重になる必要が無かった。最初は30分ほど掛かった分かれ道まで15分程度で着いた。躊躇わずに左に曲がり再びゆっくりと歩き出した。

先ほどの洞窟に比べてヒカリゴケの量が多かったせいか幾分か明るい。もしかして出口があるのかも知れないと期待して進むと大きな空洞に出た。

直径は20M程であろうか、反対側に薄暗く穴が見えた。恐らく先ほど洞窟から入ってくる反対側の穴だろう。

空洞の天井は中央が高くなっていて中央部分にヒカリゴケが密集していて明るかった。出口の明かりでは無かった。むしろ、下に降りていく穴と階段が見えた。それでソーンは自分が落ちてきた穴の意味を悟ったのだ。

ソーンが落ちてきた穴は空気穴だろう。ここは地上に一番近い洞窟の最上階なのだ。ぐるりと回廊になっていた洞窟の溝は雨水を逃がすためのものだったのだ。ソーンが落ちてくる位だから森の生き物も偶には落ちてくるだろうが出口が無いから結局は明かりを求めてこの空洞に出て、下に行く階段を進んで行くのだ。

そこから先に出口があるかどうかは分からないが更に深く進んだら出られるようには思えなかった。

何だよ!くそっ!

悪態をついて戻ろうとしたソーンは中央部分の穴の周りのこんもりとした土塊の中から魔物が飛び出して着たのを見た。それは子猫ほどもある鼠のような魔物だった。チュチュと言う特徴的な鳴き声を上げてソーン目掛けて走り寄って来たのだ。

1匹だったがソーンは逃げ出した。思わず入ってきた穴から戻って逃げた。走ったから直ぐに洞窟に出た。まだチュチュも鳴き声を上げながら魔物は追い掛けて来ているようだった。躊躇いながらソーンは左に向かって走った。ずっと魔物の鳴き声が聞こえているような気がして全力で走った。

はぁはぁ

息を切らせて洞窟の壁に手をついた場所はさっきの空洞の反対側の穴の手前だった。ぐるっと回ってきたようだった。

慌ててしまったがあの程度の魔物なら腰に吊してあるナイフで始末出来る筈だった。探索士なのだから多少の魔物だったら対処できるだけの技術は学んでいた。落ち着いて考えればあればダートラットだろう。ダートラットは鼠型の魔物で大きくなっても子犬程度でスピードはあっても頭は良くない。縄張り意識が強くて敵対するものは相手が自分より強くても真っ直ぐに向かっていく性質がある。泥を集めて巣を作り番いとなって子供を産んでも直ぐに追い出してしまう。鼠型魔物なのに群れることをしない変わり者なのだ。

息を整えて横穴から空洞まで戻って来た。様子を窺うとさっきのダートラットが落ち着き無く巣穴の周りをうろうろしていた。暫く見ている内にダートラットは巣穴に潜り込んでしまった。

中央部分の穴から階段を使って降りるならダートラットを始末して置いた方が良い。降りていく気があったらだが。

ソーンはダートラットに気付かれないように横穴を戻り少し進んで天井の低い穴が空いている場所まで来た。

上から落ちてきたのだ。上に戻るのが正しい道だろうと考えたのだ。


背中のリュックを降ろし、リュックの側面に射し込まれた小さなスコップを取り出した。そのスコップで穴の下に壁から削り出した土を盛る。なかなか壁の土は固かった。岩ばかりでは無かったから何とか土を削れていたが盛る土は余り集められなかったしスコップは小さかったのでどんどん集めることは出来なかった。でも、根気よく作業をしたお陰で1時間程で50㎝ほどの高さになっていた。でも、バテバテになっていた。

休みを入れる。汗を掻き、息を乱したソーンはリュックの近くに腰を落とし水筒の水を一口飲む。本当はごくごくと飲み干したかったが水は貴重だった。リュックをガサガサと探り携行食の干し肉を少し囓った。これも節約しないといけない。

何だかなあ~

愚痴が口をついて出る。ソーンはそれなりに我慢強い積もりだったが流石に疲れが出ていた。今のところ敵のようなものはダートラット1匹だったが、他の魔物が空洞の階段から上がってこないとは限らない。注意は必要だろう。

何時でも動けるようにリュックを背にして座りながらそんなことを考えている内にソーンは眠ってしまったらしい。

はっとして目を開けた時には天井の穴は暗かった。どうやら外は夜になっているらしい。ヒカリゴケだけの光では暗すぎて土を集めて盛り上げるのは無理なようだった。明るくなるのを待つしか無いのか。

はぁ~

あのダートラットは何を餌にしているのだろうか?

そうぼんやりと考えていると微かな光の中をゆっくりとこちらに側溝沿いに向かってくる影が見えた。

ぴきっ

緊張が走った。ダートラットだった。多分夜を感知して餌を探しに巣穴を出て来たのだろう。こんな所で眠っている場合では無かった。


このままだとダートラットの餌になるのは僕だ。そんなのは嫌だ。生まれてきた意味も無くこのまま無為に死にたくは無かった。やっと自分の力を生かして父を越える事が出来るかも知れない職業に付けたと思ったら訳の分からない穴に落ちてダートラットという魔物に殺されるなんて理不尽すぎる。理不尽に対する怒りで眠気も飛んだ僕は立ち上がった。

くそっ!

僕が動いた事にダートラットは気付いたのだろう。動きが止まった。僕の動きも止まった。

ダートラットを何とかするにしても僕には攻撃手段が手元の小さなナイフしかないのだ。逃げるか?そう思って後ずさりするとダートラットがその分進んできた。

ま、まずい!

逃げるのは危ない。隙を見せたら飛び掛かられるだろうと思えた。腰からナイフを逆さに持って何時でも攻撃できる体勢にする。ずっと音を立てて利き足を前にずらす。ダートラットが止まった。ピクピクと髭を揺らしてこちらの様子を窺っているようだった。

大きな音を立てれば逃げ出してくれないだろうか?意を決して大きく足踏みをしながら声を出した。

「この野郎!!」

逆効果だった。ダートラットは飛び掛かってきてしまったのだ。反射的にナイフを縦に振るう。目を瞑ったナイフなど当たりはしない。だが、幸運なことに僕のナイフはダートラットの足を掠めたらしい。

ダートラットはギャン!と鳴いて僕の後に着地した。目を開けてうろうろと周りを探した僕が見たのは足を引きずって懸命に走り逃げようとしているダートラットの姿だった。

今しか無かった。今の内にダートラットを何とかしないとまた襲われる。その恐怖が僕をダートラットに向かって走らせた。暗闇の中ダートラットが中央のダートラットの巣があった空洞を目指してくれたのは僕にとって幸運だった。僕が空洞の中に走り込んだ時にダートラットは巣穴に潜り込む所だった。無我夢中で土の上からダートラットの巣穴を滅多刺しにする!ナイフが巣穴の中のダートラットに当たるとダートラットはギュ!と鳴いた。何回僕はその鳴き声を聴いただろう。気がついた時にはダートラットの鳴き声は途絶えていた。

こんもりとしていたダートラットの巣は僕がナイフ越しに殴り付けた為にボコボコになっていた。

はあはあ

息が上がっていた。額を汗が流れ、ぽたぽたと土を湿らせていた。

僕は何とかダートラットを始末出来たらしい。ずるずると後に這いながら後退して壁際まで下がる。後ろ足が空洞の壁に当たったことでこれ以上後退出来ない事に気付いた。

僕は足を前に出して座り込み膝の上に顎をのせて息を整えた。はあはあいう僕自身の息の音がうるさい。心臓がドキドキする。僕はダートラットの巣を睨みながらダートラットを警戒して暫く睨んでいたがダートラットが復活して襲ってくる事は無く僕はようやくほっと出来た。

取り敢えず疲れた。僕とダートラットの騒ぎを聞きつけて空洞の中央の階段から何かが出てくると言うことも無かったので更に安心した。

もしかしたらあのダートラットも僕と同じように穴から落ちてここで巣を造って隠れていたのかも知れない。

間抜けな奴だ。

そうディスって苦笑いした。自分も同じだから馬鹿に出来ないと気付いたからだ。階段から下に行くしか行き場が無いのにその勇気が無くて此処に留まっていたとしたらどうだろう。正に自分のことだ。

留まっていれば同じように落ちてくる生き物がいるかも知れないしいないかも知れない。待っていれば助けが来るかも知れない来ないかも知れない。たた、このままでは終われない、そう思う。なら、行くしか無いじゃないか!そう決意して僕はその姿勢のまま少し眠った。


どの位眠っていたのかは分からないけど小腹が空いていた。リュックを降ろし中から携行食出してちぎり、少し食べて水を飲む。水は節約しないといけない。軽く振るとちゃぽちゃぽと音がする。半分程度しかない。出口まで保つとは限らないから余り飲まないようにしなくちゃいけないぞと決意する。すると喉が渇く。我慢して仕舞い込むとリュックを背負い、空洞の中央を睨んだ。

立ち上がりゆっくりと階段に近付いて行く。

ダートラットの巣跡は見ない。ダートラットは魔物だ。解体して食料にするには少なくない水が必要だ。水が少ない今は解体して手を汚しても意味はない。生肉は食べられないし、携行しても臭いが酷い。諦めるしか無いのだ。

行くぞ!

意を決して言葉にする。

そして僕は薄暗い階段を降り始めた。





更なるダンジョンにソーンを待ち受けるものは何か?


頑張れソーン!

負けるなソーン!


生きるためにソーンは戦うのだ!!



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