ダンジョンの魔宝石(エレメンタル)
ダンジョンとストーンの秘密
第11話
帝暦2021年NANAの月23日 ドバ帝国
帝都トロイの辺境都市ヌーマタ南方 あづまの里 未掘ダンジョン
遺跡ダンジョンの詳細を纏めてストーンとヌーマタの冒険家協会に報告し終わったあたしは行きつけの食堂で酒を飲んでいた。
ついて行くと言ったのにストーンが一人で大丈夫だと言ってドロップ品を売りに行ってしまったのだ。二人で集めたドロップ品なのにどうしてもと言って聴かなかったのだ。
何か当てがあるのか、ニラを慰労してくれているのか、冒険家として独り立ちを急いでいるのか、ニラにさえ知られたくない事があるのか・・色々と憶測を頭にニラは酒を飲んでいた。
「オヤジさん、酒のアテを頼む。」もう直ぐ空になりそうなグラスを揺らせながらニラは店主のオヤジに声を掛けた。行きつけの食堂だからか店主も心得ていると見えて代わりのグラスと小皿をニラの前に置く。小皿には軽く炙られて不思議なオブジェと化したジャーキーが乗っている。恐らく豚の魔物であるダートピッグの肉だろう。ニラが好む酒のアテだった。
物思いに耽るニラに声を掛けた冒険家は多いがニラの機嫌が余り良くないと見えると即座に離脱していく。ニラのグラスが3杯目に掛かった頃ストーンが店に入ってきた。
「よう、ニラ」そこそこご機嫌そうなストーンはニラの悩みなどお構いなしに気楽に声を掛けた。
複雑な心情のまま顔を上げたニラに少し引いた顔つきでストーンはニラの隣に座った。オヤジさんにニラと同じ物を頼むとストーンはにっこりと笑う。
「どうにも不満なようだな?」
無言を貫き眇めになるニラにストーンはやれやれと言った表情だ。
「そんなに連れて行かなかったのが不満なのか、ニラ。」
芳しくない表情なだけで無く少し唇が突き出ている。どうやら拗ねているらしい。オヤジさんが目の前に置いてくれた突き出しを受け取りながらストーンはニラを懐柔に懸かる。
「機嫌を直してくれ。一人で行ったのには訳がある。」
目で続きを促すニラに苦笑しながらストーンは続けた。
「俺もニラにおんぶ抱っこは悔しい。ニラが居なくても其れなりに結果が出せるようにもなりたい。交渉ごとが苦手とも言っては居られないし冒険家にも馴れたいところさ。」
突き出しの小豆を摘まみ温いエールを流し込む。ストーンの戸惑った顔を見てニラが軽くジョッキに魔法を掛けて冷やすとジョッキの表面に結露が出来た。礼を言って再び吞んだストーンの顔が晴れやかになる。ストーンの役に立ったことで機嫌が良くなったのかニラがストーンに顔を向けて問い掛けた。
「それでどれ位になったのよ」
ストーンがニヤリと笑って腰の拡張ポシェットから袋をニラの前に置いた。ずっしりと膨らんでいる麻袋を手にしてにニラが驚く。
「銀貨しかないと言うことは無いわよね?」
「ヴェノム系フロッグの親玉が金貨3枚になった。」