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ゴンゾ&リューヤ!!!!!!! ~おにかわサキュバスに求婚を 最凶ダンジョン編~

 とある酒場。

 三十代後半の無精髭マッチョ――ゴンゾが安い麦酒をちびちびと飲みなら、重々しく話を切り出した。


「おい、リューヤ」

「なんスか」

「俺、好きな子が出来たんだ」

「まじスか」

「相手はサキュバスなんだけどよ」

「……」


 燃えるような赤髪が印象的な二十代男――リューヤはミルクのコップに口をつけて、アホでも見るような目つきでゴンゾを眺める。


「それはなかなか闇の深そうな話っスね」

「深くねーよ。闇じゃねーし。これを見ろ」


 と、ゴンゾは折りたたんだ紙の束を緊張の面持ちで取り出す。それは『週刊パパラッチ』と呼ばれるゴシップ新聞。そのトップ記事にはこう書かれていた。


『我々取材班はアーミラちゃんの根城をついに突き止めた!』


 記事のそばには森の深くにある『ダイダローニのダンジョン』の入口と、セクシーなサキュバスの写真が大きく掲載されていた。見た目二十代半ばのアーミラは、清楚で可憐なルックスとは裏腹に、わがままボディに魅惑的なボンテージを身にまとっている。

 ゴンゾはモジモジと何かを訴えるような目をして、


「な? マブいべ?」

「まあ、好みじゃねーけど確かにおにカワっすね。で、ゴンゾさんはこの子のファンになってグッズでも買い漁るつもりスか?」

「いや。結婚を前提にお付き合いを申し込もうと思ってる」

「ブフォーーーーッ!」


 リューヤは飲みかけのミルクを思わず吹いた。

 ゴンゾは夢見る少女のように目を輝かせている。


「俺もそろそろ良い年だしな。身を固めたほうがいいんじゃないかと思って」

「い、いや。たしかに四十近くのおっさんだし身を固めるのは良いことですけど、新聞の子に結婚申し込むって発想ヤバくないスか? しかも相手はサキュバス。異種族婚はさすがに……つーかそれ以前に付き合ってもらえるかどうか……」

「ばかやろう! 想いあう心があればオークとだって結婚できらぁ! ましてやサキュバスは可愛い! む、胸だってでかいし……くびれだってある」

「すまんス。俺、ちっぱい派なんでそこには共感できねっス」

「……」


 ゴンゾは麦酒で唇を湿らせ、おごそかに口を開いた。


「というわけで、リューヤよ。ちとダンジョン攻略を手伝ってくれ。彼女はダイダローニの最下層にいる」

「ええぇ。めんどくさい。そもそもゴンゾさん、いつも金にならないことばっかやって、今度こそちゃんとギャラくれるんスか?」


 ゴンゾはリューヤのさりげない不満を黙殺し、話題を切り替えた。


「ところでリューヤよ」

「はい?」

「サキュバスにはとても可愛い妹分の種族がいてな」

「妹ッ!!!!!!」

「これを見ろ」


 ゴンゾはさきほどの新聞の別のページをめくった。そこにはふんわりとした雰囲気の、無垢なネグリジェ姿の少女が激写されていた。

 趣のあるちっぱいにストンと下に流れる寸胴曲線。幼いのに蠱惑(こわく)的な笑みを浮かべている。

 見た目年齢は八歳くらいだろうか。

 リューヤはゴンゾから新聞をひったくり、ぷるぷると震えながら写真にかじりつく。


「天使や……ここに天使がおる!」

「リリムのミーナちゃんだ。彼女もダイダローニの最下層にいるらしい」

「ゴンゾさん。いや、ゴンゾ隊長」

「ふ。お前の言いたいことはわかるぜ。ロリコン野郎!」

「ダイダローニ攻略。やってやりましょう! 今のトレンドは異種族婚で間違いねぇっス!」

「うははー! そうこなくっちゃな相棒!」


 こうしてゴンゾとリューヤはガシッと熱い握手を交わし、善は急げと酒場を出ていった。


 ※※※


 三日後。ダイダローニの最下層。

 そこは広大で複雑な迷宮と意地悪なトラップが満載の、歩き回るだけでも大変な茨の道。しかしゴンゾとリューヤはピシッとしたタキシードを着てその地獄へと足を踏み入れていた。


「さーて、アミーラちゃんはどこにいるかな?」

「うひぃ! ミーナちゃんも!」


 二人はウキウキとその辺をうろついたが、やがてリューヤが何かを発見したように前方を指差す。


「隊長。あれ!」

「むむむっ!」


 ゴンゾが目をこらすと、通路の奥にネグリジェ姿の尊い幼女がこちらに背を向けて歩いていた。ふんわりとした雰囲気と見覚えのある寸胴曲線――。


「間違いないっス! あれはリリムのミーナちゃん!」

「おおーっ! たしかにあの後ろ姿は幼女! むっはー!」

「ゴンゾさん。あんたのお目当てはサキュバスでしょーが。あれは俺の嫁っスよ!」


 リューヤの抗議に、ゴンゾはドヤ顔で自分の股下をつんつんと指さす。


「ふっふっふ。お固いことは言いっこなしだぜ。お硬いだけにな!」

「あんたホントに最低っスね!?」


 彼らが揉めている間にミーナは歩き疲れたのか、後ろを向いたままその場で軽く背伸びをした。素肌が透けるネグリジェの下から、くっきりと緩やかな腰の曲線が見え隠れする。


「おおおおおっ!」

「すっげえ可愛いぃ!」


 幼女に釘付けの二人。そしてミーナは恥ずかしそうな仕草をしてこちらを振り向く。

 そこでゴンゾとリューヤはようやく気づくのだった。ミーナと思っていたモノは、実はただのスレンダーな小型トロールだったということに。

 二人は白目をむいて絶叫した。


「のおおおおおーっ!」


 トロールは照れながら迷宮のどこかへと消えて行き、残されたゴンゾとリューヤは涙を流して地団駄を踏んだ。


「ドちくしょう! あれのどこがミーナちゃんだ! 無駄にセクシーな格好しやがって!」

「俺としたことがまさかアレに欲情しちまうとは……一生の不覚っス!」

「ぬう。この怒りをどこにぶつければ!」


 ゴンゾが鼻息荒くしていると、リューヤが再び通路の奥を指さした。


「あっ! 見てくださいゴンゾさん。あそこにもミーナちゃんが!」

「なにーっ!」


 そこにはたしかに幼女がいた。パパラッチに載っていたとおりのネグリジェ姿に美しい寸胴曲線――。しかしその顔は後ろを向いていて確認は不可能。ゴンゾは疑わしそうに眉をひそめた。


「今度こそ本物のミーナちゃんだろうな?」

「イエス。俺のロリ眼に間違いはねえっス。あの華奢な幼女体型は写真と完全に一致しております」

「うむ。さすがだな。その言葉、信じるぜ!」


 二人は期待に胸を踊らせ、そしてついに幼女がこちらを振り向いた!


「ッ!」


 しかしミーナと思われていたモノは、見事なまでの幼女体型をした――。


 ただのゴブリンだった。


「違うじゃねえか、このふし穴が!」

「ぬおおおー! 面目ねえ。俺のロリ眼は錆びついちまったのかぁ!」

「なんでゴブリンがあんなに艶めかしい後ろ姿をしてんだよッ!」

「ちょっと俺、アイツをぶん殴ってきます。幼女を侮辱した罪は万死に値する――」


 怒ったリューヤはネグリジェ姿の紛らわしいゴブリンをふん捕まえてとりあえずボコボコにした。八つ当たりを受けた哀れなゴブリンは、顔を腫らしてピクピクと死にそうな声を出す。


「な、なぜだ。このオレがいったい何をした……」

「うるさいっス。このわいせつ物陳列罪め」

「おいゴブリン。貴様はなんでそんな格好をしとるんだ」


 ゴンゾとリューヤに詰め寄られ、ゴブリンはおどおどと事情を説明した。


「これはダンジョン最下層特別仕様の二足歩行型コスチューム。みんなお(そろ)なんですよ……」

「神聖なる衣装になんたる冒涜ッ!」


 ゴンゾが悲しみに天を仰ぎ、ゴブリンが申し訳なさそうに尋ねた。


「それよりアンタ達。ここはSランク冒険者ですら到達できない最凶ダンジョンの最下層。なんで余裕綽々(しゃくしゃく)と来てるんですか……どんな手を使ったんです?」

「どんな手っつーか、普通に歩いて来たっスけど?」


 リューヤの言葉に、ゴブリンは絶句して大きく目を見開いた。

 言われて気づいたのだ。彼らの背後にまるで地獄のような光景が広がっていたのを。

 アトミックドラゴン、極寒狼、リッチフレアにエンシェントマシーンなどなど……二人の歩いてきた通路には、名だたる伝説級の魔物達の死体が山のように積み上がっていた。


「ここには因縁つけてくる魔物が多すぎるんスよ。弱いくせに」

「弱いって、あれ全部伝説級の魔物なんですけど……」


 ゴブリンの顔が引きつった。


「いったい何者なんですか、アンタ達?」


 ゴンゾはその質問には答えずゴブリンの頭を軽く小突いた。


「そんなことよりお前。この階のどこかにアーミラちゃんとミーナちゃんがいるだろ? 案内しろよ」

「え。それってここの女帝コンビじゃないですか。あの方達になんのご用が?」

「うるさい。つべこべ言わずさっさと居場所を教えろい!」

「ひぃぃ!」


 ゴンゾの恫喝にゴブリンが情けない声を上げると、遠くを見ていたリューヤがまたまた通路の奥を指さして声をあげた。


「フフフ。ゴンゾさん。どうやら案内の必要はなさそうですよ」

「なに?」

「見つけちゃいました。今度こそ本物のミーナちゃんがあそこに!」

「マジかー!」


 ゴンゾは目を輝かせた。リューヤの指差す先には確かにネグリジェ姿の美しい幼女が歩いていたのだ。

 むろん後ろ姿で!


「うおおおおお! あれこそ本物のミーナちゃんか!」

「イエスイエス! さすがに可愛い後ろ姿っスね!」


 興奮する二人にゴブリンは慌てて頭を抱える。


「ちょっと待って!? あーダメだそのお方(・・・・)は違う! つーかアンタらいい加減学習しろよォー!」


 しかしその言葉は二人の耳には届かない。ゴンゾとリューヤは光速ダッシュで幼女の方へと向かって行ったのだった。



 つづく ―カミングスーン―

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