一話『料理が出来ないクゥちゃん』
@クゥ視点@
[キーン コーン カーン コーン]
さて、昼までの授業は全て終わった。俺は何故か混合部という意味不明な事この上ない部活に昨日入部させられた。
「さて〜、それじゃあ先に向かってるね〜。」
全てはこの超異常者である神離魅異が原因だ。
まぁ、どうせ家で寝てる位なら変な部活に入ってた方が良いかもしれない。
と、そこまではたいした問題ではない。
俺の中での一番の問題は…姉さんの旅行だ。
俺の家で料理を作れるのは姉さんしかいないのだ。その姉さんが旅行中で居ないのは大問題だ。
今日の朝食はパンで何とかなる。だが昼食と夜食はどうしようもない。
妹は昼食は学校ででるらしい。チクショー、うらやましい。
という訳で大ピンチに陥っている。
「こうなったら魅異に解決策を聞いてみるか?」
だが妹にこの事を聞かれたら兄としての面目が潰れるからこっそり聞くしかないな。
「おーい!クゥちゃん遅いよー!」
「あぁ、悪い悪い。」
「この早さからすると何か考え事でもしながら来たね〜。」
流石に勘が鋭いな。
「魅異、ちょっと聞きたい事があるからこっちに来てくれ。」
「何〜?」
「クゥちゃんが聞きたい事って珍しいね!何なの何なの?」
「お前には難しい事だから部室で待っててくれ。」
「むぅ、つまんないよー!」
妹に知られたら意味がない。なんとか諦めてもらわないと。
「ほらあれだ。大人の事情があるから無理なんだ。」
「えぇー。分かった留守番してるね。」
よしっ。今のうちに魅異を部室から離れた場所に連れて行く。
「妹は来てないし録音機や盗聴器もないな。」
「クゥの妹って盗聴器とか持ってるの〜?」
「前に俺の部屋に何個か仕掛けてあったからな。自作とか言ってた。」
「あ〜、私が前に作りかたを教えたやつか〜。」
…お前が元凶かっ!
「何で勝手に盗聴器の作り方なんか教えてるんだ?」
「前に弟子入りを頼まれたから第一歩としてだよ〜。」
最悪な第一歩だな。それ以前にこいつに弟子入りする事が間違いだぞ妹よ。
「話が逸れたな。」
「何の話だっけ〜?大人の事情の詳細〜?」
「それが(省略)って訳なんだ。」
姉さんしか料理を作れないからなぁ。
「省略って事だね〜。」
「省略がどうした?」
何か意味不明な事を魅異が言うので聞き返す。って、その雰囲気を読め見たいな目はなんだ?
「それで解決策だけどクゥが料理を作れるようになるのが一番だね〜。」
「やっぱりか。」
覚悟はしていたがやっぱりそれしかないようだ。
「二回の実験室にキッチンも一応あるから演習に使えばいいよ〜。」
「だが練習用の材料がないぞ。」
「冷蔵庫の中に大量に有るから全部使っていいよ〜。」
という訳で料理の特訓をする事になった。
「ただいま〜。」
「ただいま。」
「あっ、おかえり!」
妹はパソコンをやってたようだ。
「何をやってたんだ?」
「インターネットで魅異お姉ちゃんのホームページで他の魅異お姉ちゃんの弟子とお話してたの!私と同じ五年生の子だよ。」
「インターネットで個人情報を流すのは個人情報保護法か何かにかかるんじゃなかったか?」
「私のホームページは特星本部から許可を取ってあるから大丈夫だよ〜。それに私の弟子しか入れないようになってるからね〜。」
恐らく勇者社が何かの方法でそうしてるのだろう。
「さて、俺はちょっと用事があるから二階に行ってるぞ。」
「用事ってなーに?」
妹にそう聞かれるが俺は聞こえてないフリをして階段を上がる。魅異、言い訳はまかせたぞ。
「料理が作れないから練習するんだって〜。」
[ドガガガガガッ!]
「言ったら何で外で話したかわからんだろ!」
あまりに簡単に答えるから階段から落ちたじゃないか。
「クゥちゃんって料理作れないの?」
「そうらしいよ〜。しかも生活費の半分くらいをお姉さんに持っていかれたんだって〜。止めようともしなかったらしいね〜。」
何でその事を知ってるんだ?
「それには訳がある。止めようかとも考えたが姉さんだって長旅だからしょうがないと思ったんだ。」
「本当は鉄拳が怖かっただけのくせに〜。」
た、確かに姉さんの鉄拳は怖いな。俺の姉さんはモンスター退治が趣味らしく武器がなくても戦えるように普段から特訓してるんだ。
あと、この星には特星エリアというモンスターが出るところがある。俺達みたいな普通の人が住んでるところは現代エリアという場所でモンスターは滅多に居ない。
「まぁ〜、この小説はほのぼの系をメインにしてるから特星エリアの説明なんかいらないけどね〜。」
「まだ小説とか主人公とか言ってるのか…」
「魅異お姉ちゃんは勇者って言うほとんど名だけの職業をやってるんだよー!」
さっきから誰に説明してるんだ二人とも?あと、人の心境を読むな魅異。
「話がずれたが料理を作ってくる。」
「出来たら失敗でも持ってきてね。」
「私たちが全部食べるから安心してね〜。」
そうそう、俺の妹は前にも言ったように姉さん似だ。だからよっぽど酷いものでなければ何でも食べるぞ。好き嫌いは別だが。
さーてと、それじゃあ早速料理を作るか。
「こんな時の為に今日の朝に料理本を買っておいて良かった。」
まずは定番中の定番であるカレーを作るか。
「まずは材料を切る。」
何切りだ?まぁ、大抵の食べ物はみじん切りでオッケーだよな。
「次は鍋に材料と水を入れる…か。」
水の量が書いてあるがさっぱり分からん。足りないといけないから満タンで。
「しばらく煮込んでカレー粉を入れる。」
しばらくってどのくらいなんだよ…カップ麺と同じ三分で良いか。
って、満タンだから少しこぼれた。
「カレー粉を入れたらまたしばらく煮込む。ときどき混ぜる事。」
また三分煮込むのか。だが混ぜたらまたこぼれるから混ぜるのは止めておこう。
「ご飯と一緒に皿の盛り付ける。調味料などをトッピングすると良い。調味料?」
カレーに入れる調味料と言ったらソースだろ。
あっ、カレー粉が溶けきってない。カレー粉の塊なんか食ったら怒られそうだし捨てるか。
カレーの色が薄いしソースは多めに入れてやろう。
「これで完成だ。」
第一品目は真っ黒なカレーだ。
「クゥちゃん、これってソーススープご飯?」
「いや、カレーだ。」
「見事に真っ黒だね〜。」
確かにカレーには見えないが大丈夫だろう。
「ちなみにトッピング無しはこれだ。」
「鍋の底が見えるくらい薄いね〜。ほとんど水だよ〜。」
だがそれは料理本のせいだ。決して俺のせいではない。
「それじゃあ次の料理を作ってくる。」
さて、次に作る料理は野菜炒めで良いか。
「まずはやっぱり野菜を切るのか。」
野菜の種類が載ってるが野菜炒めだからどれでも良いか。
「あいつ等の事だしちょっと変わった野菜炒めのほうが喜ぶだろうな。紫キャベツとスイカとゴボウとカリフラワーとジャガイモとネギとネギとネギとネギでよし。」
ネギは風邪予防になるから四本入れてやった。健康的でいいなこれ。
「そして少量の油を入れてフライパンで炒める。」
少しって事はどの位だ?沢山が鍋満タン分だとしたら普通が鍋半分くらいだろ。ってことは鍋の三分の一くらいをフライパンに入れればよしだな。
フライパンで満タンに近いな。これなら最初っから満タンって書けばいいのに。
そして炒める。…何か炒めてるというより揚げてるように見える。
「それで焦げ目がついてきたらソース(もしくは焼肉のタレなど)を入れる。」
ソースはカレーで入れたから焼肉のタレだな。
だが焼肉のタレ『など』って書いてあるしうどんのタレを入れるか。
「皿に盛り付けて完成…油とタレが多すぎて盛り付けれないな。」
そうだ、まずは冷凍庫に入れて少し待つか。
そろそろだな。これで一応冷めた。
これをザルに入れれば完璧だ。
「後は皿に盛り付けて完成。」
だが微妙に油だらけに見えるから次は急速冷凍庫に入れて待つ。
「これで完成だ。」
第二品目は冷たい野菜炒めだ。
「出来たぞ。」
「遅いよ〜。それで何を作ったの〜?」
「野菜炒めだ。」
「何か見事にネギが凍ってるね!」
それは褒め言葉なのか?
「次は飲み物だから早く出来るぞ。」
「今回は本に頼らず作るか。」
作るのはミックスジュース。って訳で飲めそうなものを適当にミキサーに詰め込んでスイッチオンだ。
「よし完成。」
第三品目は飲めそうなもの。これは味に保障は出来ないな。
「できたぞ。って、まだ野菜炒めを食い終わってないのか。」
「あっ、ジュースだ!ちょうだーい!」
「私も〜。」
ジュースを一気に飲み干す二人。味はどうだ?
「これは酷いね〜。危ない薬品とかも混ぜてあるよ〜。」
「えーっ!私、薬は嫌いっ。」
魅異がそういうので妹は飲まなかった。
「いや待て。何でそんな物が調理室にあるんだ?」
「一回言ったけど実験室を代理で使ってるだけだからね〜。」
そうだったのか。
「それは悪かった。それで全体的に考えて俺の料理は食えるのか?」
「罰ゲームクラスの味だよ〜。まぁ食べれない事はないけど毎日は無理じゃない〜?」
お前なら食えるだろうがな。
「それにしても、次から飯はどうするか…」
「クゥのお姉さんが帰ってくるまでクゥだけ断食したら〜?」
「断る。」
姉さんの事だから下手したら一年は帰らないぞ。
「あっ、それじゃあ私が作る!」
「お前が?大丈夫なのか?」
「まぁ、クゥほど酷い事はまずないだろうね〜。」
「余計なお世話だ。」
だがこれ以外には手段がないからなぁ。
「分かった、食事の事はお前に任せるぞ。」
「大丈夫だよ。お姉ちゃんの手伝いだってしてるし。」
日頃の経験が重要なのか?その点では俺のほうが劣ってる事がよく分かる。
「流石は主人公の妹だね〜。それに比べて当の主人公本人は何をやってるんだか〜。」
「何回も言うが主人公なんかこの世にいない。ってか普通に考えている訳ないだろ。」
「非現実的な答えだね〜。」
お前の質問の方が非現実的だと言いたいが無駄だと思うので止めておく。
「魅異お姉ちゃん、ときどき料理の作り方とか教えてね。」
「別に構わないけど時間があるときね〜。」
「あれ、魅異も料理を作れるのか?」
魅異みたいな奴は一番料理を作れないタイプだと思うんだが。
「魅異お姉ちゃんの料理は当たりだったら凄く美味しいんだよ!」
「ハズレだったらマシなので匂いだけで虫を殺せるクラスの料理だけどね〜。」
二人の言い方からして真実の様である。
「それでも当たりの料理を食べる為に命がけで食べに来る人も居るよね。」
「そういう人達のは当たりに見せかけた下剤入りの料理を出してるけどね〜。」
「鬼かお前は?」
命がけで来るんならその心意気を買ってやれ。
っと、もう六時か。そういえば俺って昼飯をまだ食ってなかったな。
「腹減ったな…」
「クゥの作った料理が少し残ってるよ〜?」
おっ、気が利くな。一応料理が下手とはいえ食べ物には違いないし食えるよな。
「まずはカレーのトッピングなしだな。」
腹が減ってるので一気に食べる。
「うっ…何だコレ?」
カレーの割には薄すぎるし肉や野菜は火が通ってない。しかも少しカレーの混じった水みたいな味だ。要するにかなり不味い。
「カレーは駄目だ。他にも残ってるか?」
「これこれ!クゥちゃんの作った野菜炒め!」
これなら大丈夫そうだ。と思いつつ一気食いする。
「おぅあぁぁぁ!ゲホゲホッ!」
これはヤバイ…油の塊みたいな味に少しうどんのタレが混じったような味だ。
もはや食べ物じゃない。動物でも食わないだろこれ。
「大丈夫〜?はい飲み物〜。」
「悪い。」
野菜炒めのかなりの不味さにもらった飲み物を一気飲…
「………!」
[バタッ]
「クゥちゃん!?」
「あちゃ〜、クゥがいろいろ混ぜて作った飲み物だったか〜。」
それから俺が意識を取り戻すまで二時間かかったらしい。
あと魅異はワザとあの飲み物を渡したと予測しよう。渡す時に楽しそうだったし。
もう…料理は嫌だ。
@クゥ視点@
「…で、これは何だクゥ?」
「料理が余ったからお裾分けだ…出来ればお礼に俺の腹痛を治して欲しいんだが。」
「いやいや、これはお裾分けというより嫌がらせだろ!」
「あぁ、その通りだっ。」
「断言するなぁ!」
「それじゃ、頑張れよー。」
「どうすりゃ良いんだコレ?とりあえず皆さん次回もお楽しみに!」




