九話『誕生日は覚えておきましょう』
@クゥ視点@
現在は、春が近い三月の初日…要するに三月一日だ。
俺達の学校は、校長の気まぐれで既に春休みの真っ最中である。
ちなみに特星では、卒業式や学年が上がる事が無い。何故なら不老不死で年を取らないからだ。だから誕生日もある意味、無いのと同じかもしれない。
まぁ、そんな世間話は、どうでも良いんだけどな。
それより今の状況を考えよう。
「クゥ君、欲しいものとか教えてよー。早く早く♪」
「いや、だから特に無いって。」
萩異が昨日から、欲しい物をしつこく聞いてくる。俺、何か悪い事でもしたか?
「そんな事言わずに教えてよー。クゥ君だって日頃から欲しい物とかあるよね?」
「特に…」
「あ・る・よ・ね?」
「は…はいっ。…有ったような気がしてきました。」
「やっぱりね♪忘れてるだけだって♪」
すっごく怖いし…『あるよね?』の言葉がスロー再生の時の凄く低い声に聞こえた。俺が何をした?誰かの嫌がらせか?嫌がらせなのか?
それにしても欲しい物ねぇ。有るとすれば萩異に追われない一日かな?
「決まっ………てない、決まってないぞ。」
「そう?早く決めてねー♪」
さっき考えた事を言おうとしたら、誕生日の日以外にずっと追い続けるという無言のオーラが笑顔なのに出てたぞ…怖ーっ。
「ふっふっふーん、ふっ、ふっふっふーふふふーん♪」
おっ、ナイスタイミングで佐和発見!上機嫌で部室に入ろうとしているな。
「おーい佐和ー!」
「おっ、クゥに萩異じゃないか!よう!」
「苗字で呼ぶか名前で呼ぶかどっちかにしてよー。」
「じゃあ名前で呼ぶ事にするぜ!」
そういえば部活に入る以前は、紅虹って苗字で呼んでたなコイツ。
「それで上機嫌そうだけど何かあったのか?」
「オイオイ戦友としてそりゃないぜクゥ。明日は、俺の誕生日だぜ!」
「「あっ、そうなんだ?」」
萩異も忘れてた様子。まぁ俺も忘れてたわけだが。
「あのなぁ、クゥだって明日が誕生日だろ!」
「んっ、そうだったか?」
「確か俺と同じ日の三月二日だから明日の筈だぜ!」
そういえばそーだったような気がする。でも誕生日って悪い記憶しかないんだよなぁ。
「クゥ君、自分の誕生日くらい覚えてないと駄目だよ♪私でも覚えてたんだから♪」
それなら佐和の誕生日も覚えておいてやれよ。
「とにかく明日におめでとう位は、言ってくれよな!」
そして部室に入っていく佐和。部員全員に言うつもりか?
「誕生日か…どうするべきか。」
「クゥ君の悩みは、この私が解決してあげよう♪で、どうしたの?」
「誕生日の日は、恐らく…いや、間違いなく俺の親が来る。」
これは、俺の中で大地震より大問題だ。
「えっ、賑やかで良いと思うけどなぁー♪」
「全然良くない。クリスマスの時なんか、プレゼントを持って来た。…とか言って窓ガラスをぶち壊して侵入して、ケーキを食い挙句の果てには、プレゼントなんか置かずに帰ったんだぞ。しかも深夜に。」
だがプレゼントを持って来たとしても俺が喜ぶものでないのは、確かな事だけどな。
過去にあの親が持ってきたプレゼントで最悪級だった物は、爆発寸前の時限爆弾だ。あれのせいで俺は、家が吹き飛び数週間の間を外で暮らしたんだぞ。姉さんと妹は、慣れてるから大丈夫だったけど。
「その時の食事は、全部二人に取られてたからねぇ。」
「あぁ。…って待てい。何でお前がそんな事を知ってるんだ?それと何故思考を読めた?もしかしてお前の特殊能力は、思考を読む事か?」
「私にクゥ君の事で分からない事はないよ♪そして…思考も例外ではないっ!だから特殊能力と違うんだよねぇ。」
「俺の欲しい物も分かるのか?」
「それは、当然私だよね!」
自信満々だが、いらないのでお帰り下さい。下手したら嫌いに分類されるぞ。
「あっ、さっき『俺が欲しいのは、萩異だけだ。』とか思わなかった?」
「妄想か?」
この発言に対して萩異が言った言葉は…
「クゥ君、ある有名な変態が言った言葉だけど…妄想は、力なんだよ!」
…だって。有名な変態って誰だよ?
「そしてこれは、ある相談所の人が言った言葉。…諦めなければ何事も達成するんだよ!」
それは、間違いなく涼気さんが言った言葉だな。
「だから諦めないで、クゥ君が私の事が好きになってると思い込めばいつかは、本当に好きになるはず!」
涼気さんほどじゃないけど、冬なのに暑苦しい。
ってか、大声で叫ぶな。他の外の部活の奴が全員こっちに注目してるぞ。
「萩異、周りを見ろ、周りを。」
「えっ…あっ!」
こっちを見てる奴に気付いた様子。それで見事に顔が赤くなっていった。
「ちょ、ちょっと待っててね♪」
珍しく動揺してるな。何か力を溜めているみたいだな。
「ひっさぁあああつ・すーぱーしょーげきは!!」
スーパーな衝撃波を辺り構わず撃ちまくる萩異。こっちを見てた人達、ご愁傷さまです。
[ドガァッ!]
「って、俺もかよ?」
巻き添えで吹き飛ばされる俺。やっぱり誰かの嫌がらせですか?
「えーっと、何処だ此処は?」
平原的な所だから特星エリアの何処かだろう。だがモンスターと戦えない今は、非常に大問題だ。
「ってか今じゃなくても戦えないか。」
〈グルゥゥゥアァッ!〉
そして見事にバッドタイミングでモンスターの登場…どうするべきだ?
特星だから襲われても死ぬ事は無い。だが痛いのは、嫌だから捕まる気も無い。
相手は、熊のようなモンスター…ってかどう見ても熊そのもの。
そうだ、オリジナルグッズの実験台にでも…
「とりゃあっ!」
[バキィッ!]
〈グァッ!〉
…と思ったら熊が急に吹き飛んだな。誰かに吹き飛ばされた様子。
「大丈夫か?」
「あっ、神異じゃないか。」
助けてくれたのは、神異だった。実験台にしようと思った熊は、一撃で気絶してる。
「この熊は、オリジナルアイテムの相手にしようと思ったのに。」
「オイオイ…私は、助けた側だぞ?礼の一つや二つくらいは、言ってくれても良いんじゃないか?」
「あぁ、非常に感謝してるぞ。…ところで何でこんな所に居るんだ?」
「実は、この近くに悩みを溶かす相談所があるって聞いて来たんだ!でも道に迷ってさ。」
それって涼気さんの所か?それじゃあ此処も現代エリアからそこまで遠くないみたいだな。
「俺なら現代エリアまで戻ってくれれば道案内できるぞ。」
「そうか?じゃあ頼むぜ!」
神異を涼気さんの所まで送って部室に戻ってると…
「おや、クゥさんじゃありませんか。」
「久しぶりだな。」
「あっ、雑魚ベーさんに雨双じゃないか。」
この二人とバッタリ会いました。あれ…二人?
「一人少なくないか?」
「えぇ、アミュリーさんが今日は、用事があるので来れなかったんですよ。アミュリーさんカムバァーックッ!!」
雑魚ベーさんが連れて来ないって事は、よっぽど重要な用事なのか?
「用事ってどんな用事なんだ?」
「この星の政治の会議に参加してるんだ。」
あぁ、なるほど。それなら確かに来れないな。
「って待て。何でそんなのに参加できるんだ?」
「アミュリーの職業は、何か知ってるか?」
「神様だろ?」
確か前に聞いたな。
「そう!アミュリーさんは、私の神様なのですっ!神様の職業をする人は、政治問題に参加しないといけないのですよぉっ!」
[ジャジャジャーン!]
何処からか効果音的な音が…まぁ、良いか。
「まぁ、そういう事だ。ところで今日は、部室に行っても大丈夫か?」
「別に大丈夫だが…今日と明日は、俺と佐和のせいで無駄にうるさいと思うぞ。」
「何で?」
「俺と佐和の誕生日が明日なんだ。」
なるほどと二人とも納得する。
「それなら私も情報という名のプレゼントをあげましょう!特に女の子の情報は、細かく知ってますよぉっ!」
雑魚ベーさんが佐和と重なって見える。
「なら瞑宰京メンバーの事で知りたい事が…」
「その前に雨双さんは、先に部室に向かって下さいねぇ!」
「何で私だけ?」
「可愛い女の子が入部してるかもしれません!だから確認してきて欲しいのですよぉっ!!」
「しょうがないな…」
非常に不本意そうに雨双が部室に向かう。
「それで誰の事が聞きたいんですか?」
「じゃあまずは、雑魚ベーさん達が何で此処に居るか聞きたいんだが。本当に旅行に来たようには、見えないからな。」
「そうですか?結構普通の旅行者に見えると思ったんですけどねぇ。それで答えですが人を探してるんですよ。私の姉なんですけどねぇ。」
あぁ、確かクリスマスに親から聞いたな。
「セーナ・サイドショットって名前で曽瓜さんと結婚予定の危険と安全を操る人だろ。」
「詳しいですねぇ。でも全てその通りですよ。」
全部親から聞いたからな。………あれ?
特殊能力までは、聞かなかった気がする。でもセーナって人は、危険と安全を操る能力を使えるんだろ。
「あっ、思い出した。前にその人と会ったことが有るぞ。」
「ええぇっ!?会ったんですかセーナさんに!あの人の能力は、特星の軍やテロリストから狙われてるんですよ!」
そんなに凄い能力だったのか?
「例えば武器の危険度を操れば部隊の強化が簡単に出来ますし、基地の安全度を操れば無敵の要塞にする事も可能なんです!」
「それなら狙われるのも納得だな。」
「それでどうでしたか?」
「勇者社で羽双に時間を止められて固まってたな。」
羽双が来なかったら確実にやられてたぞ。
「羽双さんにも会ったんですか?」
「あぁ、セーナさんにやられかけてた時に助けてもらったんだ。確か雨双の兄だっけ?」
「えぇ。それに魅異さんの一番弟子で凄く強いんですよぉっ!まぁ、私の第二の宿敵ですからねぇ!」
第二の宿敵ねぇ…宿敵の割には、かなりの実力差が有りそうだな。
「それで他に知りたい人は?」
「それじゃあ魅異の事で何か知ってるか?」
特に強さの事とかが知りたいな。
「魅異さんは、宗教を開いてますねぇ。」
「宗教を?」
アイツにそんな趣味が有ったのか。
「この星で有名なのは、神離教ですねぇ。魅異さんの弟子を中心に特星中に数千万人の信者が居ますよぉっ!あと、フール教というのがあります。でもこれは、宗教というより馬鹿が良い事と信じる人の集まりですけどねぇ。」
「後者は、入りたくないな。」
「私は、両方に入ってますよぉっ!ちなみに神離教に入ってる人は、神離の苗字を使っても良いんですよぉっ!」
だから特星での神離の苗字の人がたまに居るのか。
「じゃあ次は…悟の事を聞かせてくれ。」
俺が知ってる事は、数々の大会をあまり強くないのに優勝して、真の主人公と言われてる事とかだ。
「悟さんは、私の第一の宿敵なんですよぉっ!」
「ツッコミ役とボケ役が分かれてるって聞いたが。」
「えぇ、本人もそう言ってますし世間でもその事は、それなりに有名ですよねぇ。」
普通では、ありえない事なんだが実際に起こってるんだから凄い。
「大きな声で言えませんが私は、それが嘘情報だと思ってるんですよぉっ!」
大きな声で叫んでるじゃないか。
「何故なら!ボケ役の悟さんがツッコミをする事があるし、ツッコミ役の悟さんがボケる事だってあるんですよぉっ!ですから片方にどちらかが乗り移ってるだけだと思うんですよねぇ。」
片方は、悟じゃないってか。
「まぁ、私の予想ですので気にしなくても良いですよ。それで他に聞きたい人は?」
「そうだなぁ…それじゃあ校長とか。」
「校長さん…ですか。」
あれ、一瞬焦ったような表情になったな。
「もしかして重大な事でも知ってるのか?」
「え、えぇ。まぁ、それなりに。…聞きますか?」
止めとこうかと思ったが知識は、気になるから一応聞いておくか。
「あぁ、聞かせてくれ。」
「長いですよ?しかも微妙にシリアス風味のギャグ抜きかもしれませんよ?」
「それでも良いぞ。」
ギャグありの方が疲れるからギャグ抜きで十分。
「少し歴史の話になりますが特星の製作者は、誰だか分かります?」
「魅異か?」
自然と浮かぶ答えならコイツしか居ない。
「実は、正安校長と何人かの特殊能力者によって作られたらしいんです。」
そんな少ない人数で星が作れるのか?
「ってか特星が出来る前に特殊能力は、使えたのか?」
「えぇ。ある日、地球に巨大隕石が降ってきたんですが、その近くに特殊能力の元になる薬が落ちてたらしいんです。」
巨大隕石…そんな大きな事件は、聞いた事がないな。
「当時、日本中を〇円で旅していた校長は、偶然それを見つけて毒見をしたんです。」
よくそんな生活できたな校長。
「しかし不味くて公園の水と混ぜて飲んだら校長は、波動を使えるようになったんです。」
そこまでして飲むか普通?
「その後、〇円で独自研究を続けたら二日後に落ちてた薬と同じ物と、様々な特殊能力の薬を開発できたらしいんですよぉっ!」
流石は、校長だ。やる事が早すぎるだろ。
「…そして特星を作り上げたんです。しかし完成した特星は、人が住めるような状態じゃなかったんですよ。」
「空気や温度の問題か?」
「いえ、隕石の直撃を受けまくって即、壊滅したんです。」
うっわ、現実的だなぁ。
「次は、隕石の巻き添えを受けないような場所に作ってました。」
「そりゃあそうだろ。」
「しかし重力係が力加減を間違えて潰れてしまったんです。」
しっかりしろよ重力係。
「次は、力加減がやりやすいように近くで作ってやっと完成しました。」
「本当にやっとだな。」
「しかし小学生の頃の魅異さんの遊びで壊されました。あぁっ、その頃の魅異さんに会いたいですよぉっ!!」
昔から他人に迷惑をかけてたのか。
「そして次は、魅異さんに邪魔されないように作りましたが、羽双さんに邪魔だと言われて破壊されました。」
二人揃って何やってるんだ。
「次は、地球から見えない場所に作りましたが、ブラックホールに飲み込まれました。なのでその日の誓作は、断念します。」
どんな所に作ったんだ。ってか一日でそこまで作れたのか。
「次の日、羽双さんを和食で納得させて近くに作りましたが、重力係が足を滑らせてまた潰してしまいました。」
重力係を他の奴に代われば良いだろ。
「もう一回挑戦しましたが、製作中に悟さんのエクサバーストの試し撃ちが直撃しました。」
悟まで偶然妨害かよ。
「次は、ちゃんと成功しましたがオウムが大量発生して滅びました。」
佐和が大量発生?怖いな。
「その後は、重力係が漫画のスランプ状態になって三日ほど脱落します。」
「重力係は、漫画家かよ?」
「いえ、趣味で適当にノートに描いてたらしいですよ。」
趣味の漫画で三日も脱落するな。
「その三日の間に他のメンバーが、特星のサイズをどんどん大きくしたんです。」
確かに何もしないよりは、良いな。
「そして重力係も上手く出来てようやく完成したんですが、モンスターだらけだったらしいですねぇ。だからモンスターを全滅させたら十万円のイベントを行ったんです。貧乏なのに。」
校長達も大変だな。
「そしたら魅異さんが星ごとモンスターを全滅させたんです。そして賞金の十万円も持っていったらしいですねぇ。」
「やっぱり。」
「その後は、重力係のミスとスランプでしばらく成功せず、最初に作り始めてから一週間の日をかけた五十回目でようやく今の特星が出来たらしいですよぉっ!」
それでも一週間で作れたんだな。ってかいい加減にしろ重力係。
「この特星は、最初の予想とかなり違うらしいですねぇ。」
「しかし特星制作なんて聞いたことも見たこともないぞ。」
「記憶を操れる上級の能力者がいたからでしょうねぇ。一部の者には、効かなかったらしいですけど。」
しかし昔から星を破壊してた魅異や羽双って一体…
「完成した時の特星にも問題が多かったんです。それを解決したのが魅異さんなんですって。例えば翻訳飴を作ったりとか、不老不死の宝石を提供したりとか、薬を応用して国に入ったら特殊能力を、ランダムに一つ覚えれるようにしたりなど…ですねぇ。」
「そういえば特星住民やモンスターっていつから住んでるんだ?星が出来た時には、人や生物なんて居なかっただろ?」
「それが出来た時に既に住んでたらしいんですよ。これは、校長達も予想外だったらしく非常に驚いたようですけどねぇ。」
なんか怖いなそれ。
「そして現代エリアをいろんな所に作って今の状態という訳です。」
「ところでどうやって人は、此処まで移動したんだ?」
「偽ロケットに乗って特殊能力で移動したらしいですよぉっ!」
便利な能力も有るんだな。
「それにしても特殊能力の元が落ちてたなんて、特星の不思議な出来事だな。」
「落ちてたのは、地球なんですけどねぇ。不思議な出来事なら特星の人口が地球より多い事もですよぉっ!」
「それは、特星に生物が住んでたからだろ。」
「なら特星に生物が住んでた事も不思議な出来事ですねぇ。」
とりあえず微妙にシリアス風味のギャグ抜きの話を聞けて良かった。
「っともうこんな時間か。そろそろ家に帰るか。」
「って、雨双さんを向かわせたままでした!それでは、また会いましょうねぇ!」
そうして雑魚ベーは、部室に向かうのだった。
〜家〜
「ただいまぁー。」
「あっ、おかえりクゥちゃん!」
あれ、テーブルで泣いてる様に見えるのは、雨双じゃないか?
「どうしたんだ?」
「実は雑魚ベーが来るのが…」
「ちょっと来い。」
雨双が妹を引っ張って奥の部屋へ行く。顔と目が赤めでした。
「……の………為…………せ。」
「分かった!」
雨双のコソコソした喋りと妹の元気な返事が聞こえた。
「クゥちゃん!雨双ちゃんは、泣いてたんじゃないんだって!」
なんだ違うのか。
「雨双ちゃんは、目から涙を流してただけなんだって!」
「ちょっと待てぇっ!…ちょっと来い。」
妹と雨双の二人がこの部屋の隅に行く。
「答えを言ってどうする。」
「あっ、間違えちゃった。」
「とりあえず言った後だからしょうがない。何とか別の理由をつけて誤魔化すんだ。」
この部屋内なので会話の内容がよく聞こえるが、何を話してるんだ?
「クゥちゃん!雨双ちゃんは、覗きをした罪を悔やんでるんだよ。」
「待てぇええええっ!少し待っててくれ!」
二人は、後ろを向いて言い合いだす。
「何で覗きなんだ!?」
「いやぁ、適当な理由をつけたらこうなっちゃった!」
「適当すぎる!私は、変態か!次からは、適切な理由を付けてくれ。」
「分かった!」
そして二人は、振り返る。
「クゥちゃん!雨双ちゃんは、テレビ番組で感動して泣いてたんだよ!」
「そうそう。」
「何の番組だ?」
「テレビショッピングで…」
「待てぇええええええええええぇっ!」
…次は、この場で言い合う。
「何で、何でテレビショッピング!?」
「感動しない?」
「するわけない!もっと頻繁にやってる番組とかで頼む!天気予報は、抜きだぞ!」
「分かった!」
なんか漫才的なノリだな。
「クゥちゃん!雨双ちゃんは、テレビのCMで…」
「却下ぁああああああっ!」
待てから却下に変わったな。
「CMって頻繁にやってるよ!」
「でも番組じゃないから!私は、CMで感動できないから!」
「なら先に目と顔が赤い理由にする?テレビ番組以外で!」
「そうしよう。そして泣いてた理由は、気にしなくなれば完璧だ!」
それにしてもCMで泣けるなんて凄いな。
「クゥちゃん!雨双ちゃんの目と顔が赤い理由を教えてあげるよ!」
感動して泣いたからじゃないのか?
「太陽で脱皮したんだよ。」
「はいストップウウウウゥゥウ!!」
今度は、ストップか。というか今頃だけど雨双が普段より元気だな。元気だと印象も変わってくるけどな。
「脱皮!?虫か私は!というか脱皮は、夏だ!」
「惜しいね!」
「惜しくない!大ハズレだよ!次は、人らしい理由を言って!」
「分かった!」
人って脱皮するっけ?まぁ、現にしたって言ってるし脱皮するんだな。
「クゥ君!この良い方って何回目か分からないけど続けるよ!雨双ちゃんは、人だよ!」
「当たり前えぇえええええええっ!!理由は!?」
「あっ、忘れてた!」
「ハァ…次は、頼むぞ。」
あっ、雨双のノリが元に戻った。
「クゥちゃん!雨双ちゃんは、ドMだからドSの私に苛められたんだよ!」
「すりぅぅぅあぁあああああああっ!特技・アイススイートォォォォッ!!」
[ズギャアアアァアアアアアン!!]
さ、寒い…妹に放ったみたいなのに俺にまで巻きぞえが。
[[バリイイィン!]]
「死ぬかと思った。」
「冷たかったぁー!」
俺と妹が同時に氷を割って出る。
「何であんな理由なんだ!嫌がらせか!?それとも私に恨みでもあるのか!?」
「自分も少し犠牲にして頑張ったんだけどなぁ。」
「犠牲にして悪影響が出てるよっ!でもこれは、流石に信じてないだろう。」
んっ、雨双が心配そうな顔でこっちを見てるが…安心させてやるか。
「大丈夫だ。お前たちの関係を佐和以外には、黙っておいてやるから安心しろ。」
「信じてるし!アンタの兄は、どれだけ相手を信じるんだよ!?」
「案外クゥちゃんは、頭が悪いからねぇー。木と葉っぱで空を飛ぼうとしてたし!」
悪知恵以外なら姉さんよりは、だいぶ賢いぞ。
「あ…あのクゥ、言っとくけどこれは…」
「大丈夫だ。皆が冷たい目でお前たちを見ようが、俺や雑魚ベーさんなら見方をするからな。趣味なんか個人の自由だし。」
なんか人として良いことを言った気がするな。
「もう駄目だ……私の人生は、終わるんだ…」
「いざという時は、本当にそういう関係になれば良いんだよ!」
「良いわけ有るかぁ………」
あっ、寝ちゃったな。妹は、布団が有るから良いけど雨双は…俺の布団を貸してやるか。
「俺は、コタツで寝るとしますか。」
次の日に親や姉は、来なかったが萩異から萩異人形を貰った。正直いらないんだが。
そして俺は、佐和の誕生日プレゼントに二人の関係を教えてやった。
@佐和視点@
「いやぁ、今日は良い誕生日だった!」
「誰かからプレゼントを貰ったのか?」
「クゥから面白い事を教えてもらったんだぜ!」
「それだけか。」
「悪かったな!俺は、かなり嬉しいんだ!」
「はいはい。今日は、特星の歴史がよく分かる話だったな。誕生日の話なのに。」
「サブタイトルと内容は、外れる事が多いから期待しないほうが良いぜ!」
「悪かったな!」
「そう怒るなって。」
「まったく…それでは皆さん次回もお楽しみに!」