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第九話 ソラニンの方が好き


 ---「さーて、こいつらをどうしてやろうか。」


 つい先ほど聞いたドスの効いた声とは一転して、普段のただのデブでアホの教祖様に戻っている。


 「誰がただのデブでアホだ。」


 「まあとりあえず3人を起こそうぜ。」


 「そうだな。でも福地君には近づかないように気をつけろよ。どうやら彼の(ターム)は福地君本人に近づくことで発動する可能性が高そうだ。」


 「わかってる。でも物部はまだ起こさない方がいいんじゃないのか?まだ神代さんの(ターム)ははっきりとはしてないんだし。」


 「言えてる。さすがわれらが【眠りのマリオネット】。」


 「じゃあこれでさっきの借りはなしだな。」


 「うっそーん。」


 バカみたいな声を合図に教祖は右渡を、俺は床に転がっている細長い男を起こしにかかる。


 「おーい、起きろ【リライト】。おはよう。」


 「ん・・・あれ?僕なんで・・・ってあれ?福地君と神代さん?・・・もしかしてそういうプレイの最中?」


 この目をランランと輝かせた、若干思考がぶっとんでいる細長い男こそが【リライト】こと唐栗である。

 そのコードネームが表す通り、こいつの(ターム)は他人の記憶の上書きが可能というとてつもないものである。

 


 二人とも起きたところでとりあえず状況整理から始めることにした。


 「えーと、【リライト】はどこまで覚えてるんだ?」


 そう尋ねると唐栗は、あごを手で支えるロダンの有名なあの作品のポーズをとった。彼の考えるときの癖である。かっこつけてるのだろうか。ちょっぴり様になっているところが腹立たしい。


 「えーと僕らはいつも通りここで、二人で話しながら三人を待っていたんだ。そしたら突然どうしようもない眠気が襲ってきて……気づいたら今さ。

  ところで、物部は起こさなくていいの?南波はどこ?なんで先生がいるの?なんで二人は縛られてるの?」


 「……そんなに一度にたくさん聞くな。頼んだ教祖様。」


 「そういうときだけ教祖様って呼ぶー……。」


 ぶつくさ言いながらも一からきちんと説明してやる教祖様。やはりリーダーは彼しかいない。




***




 「なるほど……そんなことが……。マリオ、ほんとに教祖の登場シーンはかっこよかったの?」


 「まあ……及第点くらいはあげてもいい。」


 「おい、途中で話をさえぎって悪いが、そんなにのんきにぺちゃくちゃおしゃべりしてて大丈夫なのか?あいつら二人は自由に動けさえしないものの、自由であることに変わりないんだぜ。」


 「そういえばそうでしたね。教師の権限でなんとかできないんですか?」


 「ほかの先生にどう説明しろってんだよ。他人を突然眠らせる危ないヤツです、ってか?そんな意味不明な説明したら俺が危ないヤツ扱いされるだけだ。」


 「そうですね……まあいいや、めんどくさいからとりあえず三人ともいい感じに記憶いじっちゃってよ。」


 「りょうかーい。」


 「ん?待て。三人って……。」


 そう言うと唐栗は床へ転がり目を閉じた。

 彼は自らが眠らないと(ターム)を使えない。

 が、案ずるなかれ、彼の睡眠導入速度は某のび太並である。




 「やはり記憶をかいざんする力を持つ者がいたんだね……。ふう、一本取られたよ。















  ……なんて言うと思ったかい?」


 福地の不敵な笑みを見たのを最後に俺の意識は途絶えた。


by石平

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