第十五話 福地龍
どこまで続くのかわからない、とてつもなく長い階段を登る。ただひたすらに登る。遥か先を行く兄の背中を追いかけて。
「待ってよ、お兄ちゃん!」少年が叫ぶ。
しかしその背中がこちらを振り返ることは決してない。
わかっている。知っている。
さらに叫ぶ。
「お兄ちゃんってばっ!」———
***
もう何度目になるかわからない、兄の夢を見て福地は目を覚ました。時刻は午前5時23分。まもなく日が昇るだろう。
上体を起こし、再度目を閉じ、ゆっくりと昨日一日を振り返る。いつものルーティーンだ。
それにしても昨日は散々な一日だった。神代と協力し、FF団をうまく嵌めたつもりが看破され、挙句の果てには信頼していた校長先生から新たな、思いもよらない事実を突きつけられた。
……平木美郷。
これまでひた隠しにされてきた兄の死の理由。
突然語られた事実に一番動揺していたのは間違いなく僕だろう……。
だがしかし、依然として僕がすべきことは変わっていない。すべてのイレギュラーを駆逐する。あの優しい兄はもういない。
ふう……、しかしてせっかく早くに目が覚めたんだ。いつもより少し早めに学校へ行こう。文化祭までは残り二か月しかない。解消すべき不安はまだまだたくさんある。
夜はまだ明けない。
by石平




