第十三話 心の整理
数年ぶりの投稿です
校長室を後にしたFF団は特に何かをする訳もなく、散り散りに解散した。
何だかんだでこの集まりを纏めていた教祖ですらこの出来事には戸惑いを隠せてない。
「今日は一人で帰る」──そう言い残して教祖は学校を後にした。
「なあ南波」
「何?」
「どう思う?」
「……さあ」
スタスタと、夕暮れを眺めながらお互い淡白な会話をする。
頭は空っぽな筈なのに胸の内から滲み出る謎の焦燥感のせいで上手く言葉を紡げない。
「なあマリオ……いや、何でもない」
そしてそれは南波も同様らしい。
スタスタと──
それ以降は何も話すことなく歩いていく。
スタスタと──
息苦しい沈黙を継続させ帰宅していく。
「じゃあな」
「うん」
家が近付いた所で、お互い一言を交わし別れていく。
「はぁ……」
思わずため息が出る。南波と別れた途端、モヤモヤが一気に体を支配する。ドクン、と心臓の鼓動が響き渡る程に体が震える。
「チッ」
俺は誤魔化すようにイヤホンを付け、いつもの音量+2で曲を流して急いで帰宅した。
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風呂と食事を済ませ、少し気持ちが落ち着いた。
部屋の電気を消し、ベッドに転がり込んだ。寝る気は特にない。ただ何もやる気が起きない。明るいと落ち着かない。ただそれだけ。
「さて……」
1つ息を吐き、今日1日を振り返る。
福地。神代。生徒会。右渡──
ここまではまだ許容できた。
政府? 実験? 福地の兄? 平木美郷?
「一気にきな臭い話になってきたな……」
FF団以外の夢を使う人間が現れる事は、全く予想してなかった訳ではない。自分達が特別と思いつつも、他にも居るのではないかと何処かで思っていた。
だがどうだ? この力が潜在的な力では無く人為的に与えられた力であって、この力を巡って大事件が起きていた。それも死者が出る程の事件が──
何だ? 俺は何をすればいい? 考えろ。
ない頭を振り絞って状況を整理する。
「先ずは1つずつ。最初から……」
今から2週間後の文化祭。その日にクラスメイトの深見 叶が死ぬ。
南波がみた夢から、その未来を変えるべくFF団は動いている。
そして今日、福地君と神代さん。生徒会陣営から襲撃を受けた。夢を使う俺たちを管理すると言って──。
そして俺たちも応戦。文化祭で邪魔な存在になると感じて──。
そして痛み分けで終了したと思えば両陣営のやる事は一致していた。
文化祭で死ぬ筈の深見叶の未来を変える。
俺が許容できたのはここまでだ。
福地 彗。福地君のお兄さんらしい。1年と10ヶ月前に、…………死んだらしいのだが、他人に力を与えるという夢を持っていて……、……、……。
平木 美郷。他人に力を与える夢で、自分の命と引き換えに対象の命を奪うという夢を得て……、……、……。
そんな登場人物と第三陣営の政府とで事件が起きた……………………。
そしてどうやらこの事件は終着してなかったらしい。それが俺たちが夢を持つ事に影響しているのだと言う。
他人に力を与える能力を持つ人間が確かに存在していて、どこかのタイミングで俺たちに能力を与えた。
理由も目的もさっぱり分からないが、1年と10ヶ月前の残党の政府が俺たちに能力授けて何かをさせようとしている……。
いや、俺たちで無くても良かったのかもしれない。たまたま俺たちが選ばれただけかもしれない。
「しかしなぁ……」
一体何のために……?
その当時、政府が能力についてどんな研究をしていたかなんて分かる余地もない。だから俺たちに能力を与えた意味も分からない。
そしてそいつを捕まえた所で深見叶の未来が変わる訳でもない。もっと最悪な事態が起こるのを回避する事には繋がっても。
政府……。
ふと浮かんだのはうちの担任の右渡だ。確かに俺たち夢持ちの人間全員と面識がある。だが……右渡はそんな玉だろうか。
校長はおろか福地君までもが政府の人間だと分かっていながら放置。つまり泳がせていたのだろう…………。
「ダメだ。詰んだ……」
俺の頭ではここまでが限界だ。とりあえずとして、文化祭までに不安要素は全て取り除いておきたい。
……いや、いやいやいや、待て──
「そいつの能力が原因で深見叶が死ぬ可能性も……むしろその可能性の方がたけぇんじゃねぇのか……?」
ゾッとした。
文化祭まで残り2週間。それまでに誰だか分からない奴をどうにかしないと回避出来ないルートなのか……?
確信はない。他にも可能性は沢山ある。あるがその可能性も潰しておかなければならない。確実に。
俺は携帯を起動させてFF団に連絡した。明日7時に緊急集会を開くと。
これからする事が正しい事かも全く分からない。全くのお門違いな事をしてるのかもしれない。
正直俺一人では手詰まりだ。だから誰かと会って安心したいのかもしれない。一人で考えるのも嫌なのかもしれない。
だから目を閉じた。
焦燥感に見舞われながらも目を閉じた。
早く明日になれと──そう思いながら。
まだまだ終わりませんよ




