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第十二話 神槍



―――「かつてこの学校では政府によるある研究が行われていた。」


 藤林校長はゆっくりと語り始めた。


「正確には1年と10か月前まで。何の研究が行われていたかは何となく察しがつくかと思うが、まあ超能力とでも呼べばいいのだろうね。つまり君たちがもっている力についての研究だね。


 ところでその実験の目的はとても人道的なものとは言えなかった。」そう言い藤林は右渡に軽蔑の視線を送る。右渡はいつの間にか目を覚ましている。福地がタームを解除したのだろう。


「目的の全貌については今は省略させてもらおう。本題ではないからね。

 問題なのは生徒の中にその目的を偶然知ってしまった者がいたことだ。

 

 ……つまり当時の生徒会代表、福地慧(ふくちけい)。そこにいる福地くんのお兄さんのことだね。

 難波くんも彼の事はよく知っているはずだ。」


 俺は驚いて難波を見る。

 下を向いていて表情は読めない。


「彼もある力を授かった。幸か不幸か、彼が授かった力は“他人に力を与える力”だった。」


「おい、どこまで喋る気だお前。」射殺せそうな程鋭い視線で右渡が藤林を刺す。


「君はすこし黙っていなさい。元はといえばあれは君たち政府の責任だろう。


 

 ……彼はとても正義感の強い生徒でね。

 あんな目的を知ってしまった彼は黙ってはいられなかったのだろう。

 自分の力を使って実験を阻止しようと試みた。


 そして彼の力で、ある一人の能力者が生まれる……。



 その者の名は平木美郷たいらぎみさと。彼女の力は“自分の永久の眠りと引き換えに他人を永久の眠りへと誘う”というものだった。

 つまり自らの死と引き換えに他人を殺すことができるというとんでもない力だね。


 結果彼女は自らの命をもって学校に出入りしていた政府の人間、全員の命を奪った。


 以降、それに責任を感じた福地くんは自殺。実験は完全凍結。」


 藤林校長が明かりをつけた。気づいたら夕日はすっかり顔を隠している。


「しかし実験が中止された今なお、君たち能力者がいるという事実……つまり」


「“他人に力を与える力”をもつ者がまだ存在する。」


「その通り。橋爪くんは頭がいいね。だが現状さらに問題なのはこっちだ。

 君は他人の心が読めるね?深見叶の心は覗いてみたかい?」


「……いいえ。」


「そうか。われわれ生徒会のメンバーにも他人の状態を知ることができる者がいてね。





 ……似ているんだ。とても。平木美郷と。」


 FF団全員が息を飲んだのがわかる。


「もし同じようなことが起きるのであれば我々はそれを回避しなければならない。二度とあのようなことが起きてはならない。」初めて見る藤林校長の真剣な顔。


いち校長に生徒を従わせる権利などありません。なのでこれはお願いです。どうか我々に協力してください。」





 突然突き付けられた事実にFF団の誰しもが言葉を失っていた。


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