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妹に突然告白されたんだが妹と付き合ってどうするんだ?

僕に勇気があったなら『妹に突然告白されたんだが妹と付き合ってどうするんだ?』短編

作者: 新名天生


 彼女はいつも一人で居た……


 愛くるしい顔、豊満な胸、いつも僕はその彼女を見ていた。

 僕が初めて彼女を気にしたのは、彼女の隣の席になってからだ。


 半年間同じクラスだったのに、なんと僕は席替えまで彼女の存在を知らなかった。

 彼女は常に一人で居た、普通は一人で居るとかえって目立つのだが、何故か彼女はそれまで僕の目には入らなかった、いや、他の誰の目にも入っていないかの様にクラスの中で姿を隠すように過ごしていた。


 僕は彼女の隣になり彼女を認識してから、彼女を見始めた。


 彼女は時々遠くを見つめていた、その時は決まって近くで女の子が騒いでいる時だった、何か意識を遠くに持っていっているかのように遠くを見つめていた。


 そしてその時の彼女の顔はとても美しかった、凄く儚く凄く健気で……


 彼女が喋っているのを僕は聞いた事がない、いや声は聞いた事はあった、しかし誰かに何かを聞かれても凄く小さな声で聞き取れない、でも凄く綺麗な声だったのだけは分かった。


 彼女は何故誰とも殆ど喋らないんだろう? 僕は不思議に思った、でもその喋り掛けるなオーラはもの凄く僕は彼女に話しかける事が出来なかった。


 そんな彼女をいつも隣で見ていた、僕は彼女の事をもっと知りたい、彼女と喋りたい常にそう考えていた。


 でも、僕は昔から勇気がない、いつも後悔ばかりの人生……今回こそはと思ったが、やはりいつもの通り勇気がでなく、彼女に喋り掛ける事が出来なかった。




 そしてそんなある時、突然クラスの男子が彼女に話しかける、僕はしまった先を越されたと思った。


 その男子はクラスでいつも一人でいる少し暗い眼鏡の男、本ばかり読んでいるオタクって印象しかない奴だった。


「ねえ……えっと、いつも遠くを見て寂しそうにしてるけど何か嫌な事でもあったのか? 良かったら俺と話さないか?」


 その男は彼女にそう言った、しかし彼女は首を横に振り、その男に見向きもしなかった。


「何かあったらいつでも言ってくれよ」

 その男はそう言って席に戻った。


 僕は内心、振られてやんの、ざまあって思った。

 そして僕から話しかけないで良かった、同じ目にあって周りから変な目で見られなくて良かったとそう思った。


 彼女は誰も受け入れない、彼女は孤高の人、美しいと僕はそう思った。


 しかし翌日、その男はまた彼女に話しかける、他愛もない話し、天気がどうのとか、次の授業がどうのとか


 そして彼女は少し首を動かすだけ、一向に喋らなかった。


 そして、その翌日も、また翌日も、その男は彼女に話しかける、正直なんだこいつって思った、彼女は誰とも喋りたくないんだよ! 構うなよ! 彼女は孤高の人、彼女の美学を穢がすなって思い、僕はそいつを睨み付ける。


 しかしそいつは僕の睨みをものともせずに、次の日も、また次の日もしつこく彼女に話しかける。


 ボッチだから、ボッチの女の子を狙ってる汚い男だ、僕はそいつをそう思い嘲笑っていた。


 そして2ヶ月もの間、そいつは毎日必ず彼女に話しかけ続ける、汚い、彼女の孤高を穢す最低な男だと、僕の怒りは頂点に達した。


 奴がいつもの様に話しかけ、席に戻った時遂に僕は勇気を出して彼女に言った。


「あのさ、迷惑なら、僕が彼に言ってやろうか?」


 遂に初めて彼女に話しかける、僕は正義の味方として彼女を助ける! 彼女のヒーローになりたいなれるかも、その一心で彼女に向かう。

 毎日毎日話しかけられ、恐らく迷惑してるに違いない、僕は彼女に代わってあいつに一言言ってやる、そう思い勇気を出して初めて彼女に話しかけた。


 しかし彼女はそんな思いの僕を睨み付け、僕の思いを打ち砕く様にこう言った。


「あの人はぁ、私の事をぉ思ってくれてる人……凄くっかっこいい……素敵な人なのぉ、見てるだけのぉあなたとは違うのぉ……」


 彼女は精一杯の声で僕にそう言った……彼女との初めての会話は、僕を完全に否定して終わった。


 それから彼女はその男と少しずつだが話し始める、舌ったらずなその喋りで一生懸命話し始める。


 そこで僕ははっきりと分かった、そうか彼女は誰かと話したかったんだ、でもあの喋り方のせいで恐らく虐め若しくはそれに近い事をされた経験があったのだろう、だから周りから自分を隠し、自分の殻に閉じ籠っていた……そうか、彼女は誰かに助けを求めて居たんだ。


 僕は後悔した、そしてあれだけ拒絶されても、それでも話しかけ続けた彼を凄いと思った、僕には出来ない……そう彼は彼女の叫びを、悲鳴を聞いていたんだろう、だからあれだけ拒絶されても話しかけられたんだろう……僕には聞こえなかった……彼女の思いも、叫びも、何も聞こえなかった。


 彼女は相変わらず、誰とも喋らない、彼ともほんの少しだけ相づちをうつ程度、でも彼女の雰囲気は変わった、表情も変わった、変えたのは僕じゃなく彼だった。

 

 その時の彼女の笑顔は今も僕は忘れられない、僕にもう少し勇気があったら、あの笑顔は僕に向けられて居たのだろうか……


 僕に勇気があったら僕は彼女と喋り、そして……彼女に告白出来たのだろうか……


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― 新着の感想 ―
[良い点] はじめて読んだ気がする
[良い点] 第三者視点で片想いを描いた点はよかったと思います。短編が丁度いいですね [気になる点] 読点がとても少ないように思います。 句読点の位置が良いと読み易いでしょう 誤字訂正を受付ていないの…
[一言] 裕の優しさが凄く伝わってくる作品でした(笑) 色々な番外編も良いですよね(//∇//) また書いて下さいヾ(๑╹◡╹)ノ"
2018/05/20 22:39 退会済み
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