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第2話 転生したみたい

目を覚ますと目の前に鉄格子があった。

辺りはレンガで囲まれているため牢屋かと思ったが違うようだ。

牢屋にしては狭すぎるし天井に穴が空いているため、初めて目にするが薪をくべて火を焚くための暖炉の中であることに気がついた。


僕の部屋じゃない。


すると、突然に心を少しずつ握りつぶされて行くかのような恐怖に襲われた。


「オギャー!」


不安を抑え切れずにまた大声で泣いてしまった。


「...起きたみたいだな。赤ん坊ってのはこんなにうるさいものなのか」


ふと、目の前に暫くは忘れる事はできないであろう自分を出会い頭に殺しにかかってきた白髪の男が顔を覗き込んできた。

そして、やれやれといった感じで僕のことを抱き上げてきた。

今度は刺された時の恐怖が蘇ってくる。


「オギャー!オギャー!」(助けて!また殺される!)

「おっおいどうした!泣き止め!」

「あーもうさ!また何かその子にやらかしたの?キロさんさ?」

「うるさいぞニーミ。なんとかしろ」


後ろからニーミと呼ばれる黒髪の女性が現れて、白髪の男(どうやらキロと呼ばれているらしい)から僕を抱き上げた。

頭から支えてくれるその抱き方に安心感を覚えて少しずつ冷静さを取り戻して行った。


「おーよちよちもう大丈夫ですよー」

「あぶっあぶっ」(怖かったー)

「...お前あやすのが上手いな」

「あなたが下手なだけさよ」


ゆったりとリズミカルな動きと柔らかな感触に包まれる事でだんだん眠たくなってくる。

僕の身体が赤ちゃんになっていることを確信した。

どうやら夢ではないようだ...

自分が大晦日に火事に巻き込まれたこと、刺された時の痛み、僕の今の身体からそう判断した。

だとしたら僕は生前の記憶を持ちながら生まれ変わったって事?それってつまり転生...?


転生というワードに少しドキドキした気持ちが芽生えたのは嘘ではない。

勉強すると決めてからは読まなくなったがそう言った小説や漫画は好きだった。

主人公が転生をし、困難に立ち向かいながら仲間と冒険をして成長してゆく話。

僕もまたその主人公に自分を投影して何度も夢見ていたことがある。


だけど...まさか本当に転生があるなんて...

この時、初めて目を開けた時にうっすらと見た横たわる龍の頭部を僕は思い出した。

あんなものが存在するとしたらここは間違いなく元いた現実の世界ではない...

だけど一つだけ引っかかることがある。


それは言語だ。

もしもここが日本でないならば今のキロとニーミが話している言葉は僕の知らない言語であるはず...そのはずなんだけど何を話しているのかわかるのだ。

今も二人は僕の今後についてや子育ての仕方について話し合っている。


「ハクトはまだ産まれたばかりなんだからさ、こうやってしっかり頭を支えてあげないとさ」

「いやこいつを人族(ヒューマン)と同じ扱いにしていいのか?」


ん?なんだどういうこと?


「それもそうだけどさ、まだ歯も生えてないし見た目は人族(ヒューマン)と同じだから平気なんじゃないかな?逆に龍人族(ドラゴニュート)の赤ちゃんの育て方なんて私知らないさよ」

「それもそうか龍人族(ドラゴニュート)自体の個体数は凄く少ないしな、なら歩き出すまではお前がそいつの面倒を見てくれるか?確か兄弟の面倒も見てきたんだろう?」

「そうだけどさちゃんと手伝ってさね」


何だ?もしかして僕は人間じゃないのか??龍人族(ドラゴニュート)っていう種族なのかな?

だからと言って今更取り乱したりはしないけど...また騒いだら今度何されるかわからないし


「いや...こいつが怖がるようだからお前がやれ。俺にお守りはできそうにない。そうだな...こいつが立って歩けるようになるまで任せる」

「ちょっとさそれは命令してるつもり?確かにまだ一緒に連んではいるけどももうアインさんはいないんだからそういう命令はやめてよね元副隊長さんさ」

「うっ...すまん」


キロとニーミは何かしらの同じ組織に属していて、今はもう解散か何かあって上下の関係がなくなったのかな?

これは今はうまく喋れないから会話から現状を把握していくしかないな。

想像力を働かせて聞こう。

言葉がわかるから本当は喋れれば聞きたいことが沢山あるんだけど...


「まあいいさよ。で、ハクトが歩き始めたらどうするのさ?」

「俺の全てをこいつに叩き込む。特に異能力の使い方と剣術は徹底するつもりだ」


なんだか勝手に僕の教育方針が決まっている気がする。

こういうのは親が決める事ではないのかな?え?目の前の二人がそうじゃないかって?いやいやどんな世界でも自分の赤ちゃんをいきなり刺し殺そうとしてくる親はいないと思っているからこその判断だ。

だけど刺された痛みはもうないんだよな...もしかしてその異能力ってやつのお陰なのかな?

異能力ってなんなんだろう?


「キロさんさーまさかこの子を戦場へ送り込むつもり?」

「そのつもりだが?こいつを刺した時にわかったことは異能力の三つのうち二つは”超回復”と”体内の発火”だ。二つともすでに戦闘向きの異能力だ鍛えなくてどうする」


なんだやっぱり刺されていたのか...って、え!?

なに僕大きくなったら戦場に駆り出されるの!?やだよ!


戦場というワードを聞いて身の毛がよだつような絶望感を覚えた。

これは生前の歴史から戦場=死というのを歴史の教科書やらテレビで散々見て来たからだ。

生き残れるビジョンが浮かばない。


生まれ変わってすぐに武装集団の死体の山を目にしてたから決して平和な世界ではないと思っていたが

戦場なんて絶対にごめんだ。僕の性格上最も相容れない。

なんとか阻止する対策を考えなくては。


「うーん鍛えるのは反対しないんだけどさ」

「ならなんだ」

「確かに異能力の扱い方をきちんと教える必要はあると思うさ。異能力は(ゴッド)ととなると三つも獲得できちゃうからね、いつまでも今みたいに家具が勝手に燃やされないよう暖炉の中で寝かせるのもかわいそうだしさ」


暖炉の中で寝かせられていたのにも理由があったようだ。

どうやら僕の新しい身体は危ないらしい。

ちゃんと扱えるようにしとかないとって鍛えるの賛成なの!?


「だけどキロさんさ剣術ってのはどういう意味さ?この子はみんなの苦労と犠牲で集めた素材から生まれてきたんさよ」

「わかっている。本当はアインを蘇生させるはずだったがなぜか生まれてきたのがそいつだ。だからそいつが歩けるようになったら俺が責任を持って鍛えると言っているんだ何か文句があるか?」


蘇生なんてあるのか。

だけど、アインって人の蘇生で代わりになぜか僕が生まれてきてしまったのか。

みんなの犠牲っていうのはあの初めに見た沢山の鎧を着た武装集団の死体のことかな...なんだか僕自身が悪いことをしたわけでもないのにものすごい罪悪感を覚える。

一人の蘇生のために多くの犠牲を払っていざ蓋をあけてみると生まれたのは見ず知らずの赤ちゃん。

死んだ人のことを考えるとキロ達はどれほどの悔しさがあっただろうか想像もしたくない。


「この子はキロさんだけのものではないってことさ」

「どういう意味だニーミ?」

「私もこの子に弓術を叩き込むって言っているのさ!」


は!?弓術?えっちょっ僕戦わないよ!?


ガチャ

「おいおい俺抜きでなにやらオモシレー話してるじゃねーか!」

「レックス帰って来てたのか」


奥のおそらく玄関の扉が開く音がするとそこにはレックスと呼ばれる小さい男の子が立っており、手にはパンパンに膨れ上がった大きい袋を引きずっていた。


「飯を獲って来たぞオメーら!」


そう言ってレックスが袋を開けると、中には体を無理矢理円形に変形させられた恐らく元は二メートルはあるであろう巨大な鳥がリビングに放り出された。


「うきゃっ!?ゔー!?」(うっわなんだ!?鳥なのか!?)

「あーまた泣き出しちゃったじゃんさ、せっかくうとうとし出してたのにさ!あと、獲物を獲るのはいいけど折り畳まないでさね!あとで解体するの面倒なんだからさ!」

「おう!わりーわりー玄関せめーから入らないと思って癖で畳んじまった!許せニーミ!」

「悪いなレックス、お前だけ狩りに行かせてしまって」

「気にすんなキロ!さっきの話に俺も入れてくれれば許してやるよ!」

「なに?」

「お?」

は?


「ボンを鍛えるんだろ?だったら俺もボンに体術を叩き込んでやるって言ってるんだよ!」


いいえ結構です。


「おい...お前らはそれでいいのか?今のこの危険な状勢の中で故郷に一刻でも早く向かいたいはずではないのか?それに俺はこれ以上お前らを巻き込むわけには...」

「何言ってるのさキロさんさ!私たち仲間でしょ?私がいなくなったら誰がこの子の世話をするさ!歩けるようになったからって手間はまだかかるんだからさ!」

「そうだぜキロ!生き残った俺たちで協力し合わなくてどうする!悲しいこと言うんじゃねーよ!俺らのことは心配すんな!ボンが歩き出すまでじゃなく独り立ちするその時までお前がなんと言おうと付きまとってやるぜ!」

「お...お前ら」


いいえ結構です!


「よし、わかったニーミ、レックス!これからこいつに、俺たちの全てを叩き込むぞ!!」

「もちろんさ!」

「おうよ!」


だから結構です!!!

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