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5話



 学院までの道のりは一週間かかり、その移動方法は船のみで、今は二人一緒の部屋で休憩している。


「あの、アイン君は何でマギストの試験を受けようと思ったの?」


 メーアが向かいのソファに座っているアインに質問する。


「ん?ただ父さんが外の世界を見てこいって言われたからかな」


 アインは答えると寝る体勢に入る。

 馬を長時間乗って疲れたのだろう。といっても乗っていたのは一時間だけなのだが、そこはまだ子どものようだ。

 そして、メーアがどうしようどんな話をしようかなと慌てふためいている間に向かいのソファから寝息が聞こえてくる。

 それに気づいたメーアはアインの顔を覗こうと身を乗り出す。


「…………………か、可愛い……なんて寝顔なんでしょう……女の子より可愛い寝顔なんて……。こ、これは目に焼き付けないと!」


 まじまじとメーアはアインの寝顔を一生忘れないくらいに焼き付けるように見る。


「……お母さん……」


 アインは寝言を漏らす。

 メーアはそれを聞いた。


「お母さん?」


 とりあえずメーアはゆっくり寝かしてあげるために、部屋をあとにした。


「どこに行こうかな?」


 独り言を言いながら、目的もないままぶらぶらと船内を散歩する。

 メーアが船内を散歩しているその頃、アインは熟睡していた。


 ───⚪︎───


「アイン隠れて!」


 これは夢だ。たまにこれは夢って分かる夢がある。

 最近見てなかったのにな。

 この日、俺の母さんは死んだ。詳しく言うなら殺された。

 殺した奴が何者かはわからない。母さんは王国でも十人いるかいないかの最上位の魔法使いだった。

 でもだからといって、いつも家に居なかったわけではなく、どちらかと言えばかなり居た方だ。

 その代わり父さんはいつも居なかったけど、何の仕事をしていたのかは、今になっても教えてくれなかった。

 母さんは優しくて、あと男勝りな所もあって、笑顔が綺麗でよく笑ってた。

 でもあの日、母さんは殺され、その時俺はクローゼットの中に隠れていた。

 母さんは魔法を使おうとしていたけど、相手は母さんが魔法を使う前に母さんの心臓を貫く。

 そして、母さんを殺すと満足気に帰っていった。


「お母さん?……何で動かない……の?ねえねえ、ねえってば」


 何度も幼い頃の俺が母さんを揺らして呼びかけるが身体はピクリともしない。

 当たり前だ。だってもう死んでいるのだから。

 そこで夢が終わる。

 意識が覚醒すると、寝汗でびっしょり。

 周りを見渡すと何時の間にかメーアの姿がなくなっていた。


 ──⚪︎──


 その頃メーアは船のデッキにいた。今の時刻は夜の七時といったところ。

 昼間の空と同色の髪が、夜風になびいている。

 そして、寒くなったのかメーアは、船内へと戻り、自室に足を向けた。メーアが部屋に戻るとアインは剣を鞘から出して眺めていた。


「あっ、アイン君。おはよう」


 ああ、おはようと返事を返す。


「その剣ってアイン君の?」


「まあな、父さんの知り合いが造ってくれた。黒狼鋼っていうのでで造ってあるんだと」


 アイン本人は黒狼鋼の価値を知らないが、メーアは町育ちなので、それがどれだけの価値があるのか分かる。


「こ、黒狼鋼⁉」


「そんなに凄いものなのか?」


 ぶっきらぼうにアインが聞く。


「凄いなんてもんじゃないよ!アルテミア火山でしか採れない伝説級の鉱石で、もし市場に出ようものなら貴族達がこぞって私に売ってくれって事態になるんだよ!」


 怒涛の勢いで話すメーア。

 アインはそれに若干押され気味になる。


「お、おう。そんな凄いものなのか」


 アインは、そんな凄い鉱石をアルクが、どうやって手に入れたのかが気になるも、今はどうしようもないと、メーアとの会話に耳を傾ける。

 そのまま二人は、一週間たわいのない話をして過ごし、学院に着いた。

 試験を受けに来た人が大勢いる。アインと変わらない歳の少年少女やアインよりも年上の人もいる。

 ちなみにマギスト学院に入学するには下の年齢は制限がかかっているが上の年齢は制限が無いのだ。

 だから試験を受けに来る人は上の年齢の人も多い。

 学院は基本六年制の単位制である。だから優秀であれば最短で六年、最長は何年でも。

 単位が取れないからといって、退学を言い渡されることはない。しかし、お金は払わないといけないわけで、払えなくなった学生らが、自主退学することも多い。

 試験の受付に行くアインとメーア。


「受験希望の方ですね。それではこちらの書類の必要事項をご記入ください」


 受付の女性に促され、書類に必要事項を記入する二人。

 その必要事項の中に、受験方法とある。

 受験方法は三つあり、一つ目は魔法と武術の二つを受けて、点数を足して合否を決める方法、二つ目は武術は苦手だけど、魔法は得意という人にオススメの受験方法、魔法だけで受けその点数を倍にして合否を決める。そして最後の三つ目が、魔法は苦手だけど、武術は得意という人にオススメの受験方法、武術だけで受け、その点数を倍にして合否を決める。

 アインはというと迷うことなく三つ目を選んだ。理由は至極単純、人前では魔法の類いを使ってはいけないからだ。

 もし使おうものなら、魔法を使う際に出る灰色の魔法色が出て、忌神の加護を受けていることがバレてしまう。バレてしまった場合、拘束され、死ぬまで牢獄か、処刑されることとなる。


 メーアはというと魔法のみの受験方法で、受験するようだった。

 そして、それを受付の女性に出すと不備がないか確認する。

 するとアインのフルネームを確認して受付が驚いたが、すぐに和かなる顔に変わり、確認が終わったことをアインに告げた。


「お二人とも受験料はもう支払われているようですね。では受験番号が書いてある紙をお渡し致しますので少々お待ちください」


 暫く待ったのち違う受付人から紙が手渡されると、すぐに魔法石を使ったアナウンスがかかった。


「もうすぐ、試験が始まりますので会場にお集まりください」


 そのアナウンスを聞いてアインは遂に始まるのかと内心ウキウキしている。


「アイン君、もうすぐだね!絶対に合格しようね!」


 メーアが両手を軽く握り、今にもふぁいとーと抜けた声が出そうなポーズをしていた。

 アインはそれに不覚にも笑ってしまうのだった。






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