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先生と生徒  作者: あめ
7/25

すばらしくなれない世界が私のすみか

和田と先生と佐野

※会話文のみ。




「せんせーってさあ、好きなひといる?」

「いない。それよりお前は手を動かせ」

「おれもいないんだけどさあ。実は昨日彼女できちゃってー」

「そのプリントさっきから一問も進んでねえぞ。言っとっけどそれ終わんないと今日帰れねえからな」

「その子がさあ、またものすごいかわいくてさあ」

「お前が帰れないイコール俺も帰れねーの。分かるか?」

「あんまりにもかわいいから昨日さっそくベッドインしちゃってさあ」

「終いにゃぶっ飛ばすぞコラ」

「もう朝まで盛り上がっちゃって、おれ今日徹夜だったわけ。いまちょう眠いのー」

「だから?」

「かえっていいですかー」

「んなわけねえだろ馬鹿」

「ぶー、せんせーの鬼!」

「むしろ仏だろーが。お前こういう補習なかったらストレートに留年だからね」

「それもいいかなと最近思い始めている」

「学校舐めてんのか」

「だってこんなん難しくてわっけわかんないんだもーん」

「さっきみたいな嘘作り出す分のエネルギーを注げばいいんじゃないの」

「あれ、嘘だってわかった?」

「当たり前だろ」

「ええーなんで?」

「まず第一に、お前に可愛い彼女が出来るはずがない」

「ひでー!」

「ていうかお前を好きだって言う人間が存在するはずがない」

「おれどこまで嫌われてんのさ! いるよちょっとくらい! その証拠におれ童貞じゃないし」

「ふーん」

「うわ、ものすごい興味なさそうな顔だ!」

「お前の下半身事情なんて死ぬほどどうでもいいわ。それよか早く問題解いてくんない。俺もう帰りたいんですけど」

「どこの世界に5時に帰宅する教師がいんの」

「ここに」

「せんせーこそ学校なめてると思いまーす」

「俺はいいんだよ。つかまじで早く解けやタコ」

「えーなんでそんな焦ってんのせんせー? …あ、もしかしてこれからデートとか?」

「じゃあそういうことで」

「返答が適当すぎる」

「いっそこのやり取りすらめんどくせえよ。オラ、ペンを持て字を書けさっさとしろ宇宙一の馬鹿」

「それおれだから平気だけど一応言葉の暴力だと思うよ!」

「……あー、くそ。諦めるしかねえか……」



 プルルルル



「あれ、せんせーの携帯じゃない?」

「あ? ああ……ほんとだ。もしもし?」

『あ、先生? あたしです』

「あたしあたし詐欺なら間に合ってます」

『違いますよ! 佐ー野ーでーすー!』

「わかってるっつの。それで?なに」

『人がわざわざ親切心で電話してやったっつーのにこの扱い! ……今あたし先生ん家にいるんですけど』

「……玄関前だよな?」

『いえ、室内です』

「おい犯罪者」

『失敬な! 違いますよ!』

「……どうやって入ったんだよ」

『鍵開いてました。先生、いくら金目の物がないからって不用心すぎですよ』

「不法侵入した奴に言われたくねえわ」

『まあそれはともかく』

「さらっと流すな」

『先生が見たがってたドラマ、録画しときましょうか?』

「……マジか」

『うふふー、あたし気が利くでしょ!』

「いやそれはどうだろう」

『録画してあげませんよ』

「お前ほど気が利く人間見たことないわ!」

『……仲居先生より?』

「断然お前の方が気が利く」

『そこまで言うんだったらー、まあ録画してあげないこともないですよ!』

「ああ、悪いな」

『じゃあ、録画するついでにご飯作って待ってますね。はやく帰ってこないとビールなくなっちゃいますからー』

「飲むな未成年」

『そんじゃまた後で! ……ブツッ、ツー、ツー……』


「……気が利く以前に色々と終わってるぞ」

「相手だれだったの? 彼女?」

「じゃあそういうことで」

「せんせー、もうちょっと心のこもった会話しよーよ」

「めんどくせえ」

「最低だー」

「とにかく早く解けよお前。どこで止まってんの?」

「ここの化学式」

「……基本中の基本だろ、これ」

「おれに基本なんて求めないでほしいな!」

「俺が求めてんじゃなくて本来お前が求めるべきもんです」

「えー」

「あいつといいお前といい出来ないなら化学履修すんなよ」

「そこはせんせーと絡みたいっていう生徒ゴコロじゃんかー」

「知るか。お前らのせいで俺は仕事が増えてるんだよ」

「お疲れさまです!」

「死ね」

「さすがにひどい!」

「あー、ほらこれ。教科書に詳しく載ってっからそれ参考にして解け。そしたら流石にお前でも出来んだろ」

「教科書ー? ……の、何ページ?」

「最初の方。それくらい自分で探せ。……つーかお前教科書汚えな」

「ほぼ落書き帳だからねえ」

「だから頭悪いんだな」

「すごくシンプルな悪口言われた」

「あ、そうだ。教科書使っても解けなかったらペナルティだから」

「え! なにそのルール」

「今作った」

「そうでしょうね!」

「ちなみに内容は有り金全部で俺に酒を奢ることな」

「ええー! 人でなし!」

「こんくらい指定しないとお前やんねーだろ」

「よく分かっていらっしゃる!」

「じゃあついでに制限時間も付けるわ。今からあと30分で全部解け」

「スパルタはんたーい! スパルタはんたーい!」

「んじゃ、よーいスタート」

「えええええ」



 30分後



「はい、終了ー」

「……お、おれ今日が人生で一番頭使ったかもしんない……」

「今までどんだけスカスカな生き方してきたんだよお前」

「おれはせんせーみたいに小難しい生き方してないの!」

「あっそ。……プリントもちゃんと埋まってんな。やれば出来んじゃねえか」

「だから脳みそフル回転させたんだってば」

「いつもフル回転させろよ」

「そんなんしたらおれ死んじゃうー」

「心配すんな、喜ぶ人間は大勢いる」

「ひでー!」



***



 帰宅後



「あ、先生おかえりなさーい」

「録画したか」

「第一声がそれか!」

「撮り忘れたとか言ったらぶっ飛ばすぞ」

「心配しなくてもちゃんと録画してありますよ。あたし気が利くから」

「ならいい」

「それにしても、先生がドラマにハマるなんて意外ですね」

「そうか?」

「だって先生、テレビ自体あんま見ないじゃないですか」

「あー、まあな」

「おもしろいんですか?」

「ミステリだからお前には難しいんじゃない」

「……今馬鹿にしましたよね」

「率直な意見を述べたまでです」

「じゃああたしも一緒に見る!」

「はあ?」

「せっかくご飯も作ったんだし、食べながら一緒に見ましょう!」

「……あんま食事中に見るもんでもねえと思うけど」

「いいんです! あたしにだって分かるってところを見せてやりますよ」



 1時間後



「……で? 感想は」

「……なんか難しい言葉使ってるとかっこよく見えますよねー」

「つまりはよく分かんなかったんだな」







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