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リアルチートオンライン  作者: すてふ
第4章 キュウシュウ踏破編
93/202

93話 あの日聞いたレイドボスの場所を俺たちは何故か見つけ出した

大事なお知らせがあります。詳細は後書きと活動報告にて。

 現在キュウシュウエリアの町は、その全てが駅舎で繋がっている。オキナワでは巨大な水牛型モンスターが車を引いていたが、その他のエリアでは巨大な黒豚であったり馬であったり鳥であったりなどその地域によって車を引くモンスターは様々だ。


 フクオカエリアのテンジンにあった駅舎からナガサキエリアのサセボまでの道を引くのは、ドラゴンと間違えそうになるほどにデカいトカゲ。1枚1枚光沢を放つ鱗に、ギョロリと動く眼球。人間など一砕きにしてしまいそうな顎を持ち、実に好戦的な見た目をしている。


「う~ん……相変わらず凄いスピードね」


 その脚は特急電車に引けを取らない程に速く、おまけに殆ど揺れない。もうサスペンションがどうとかいうレベルを通り越して浮いてるんじゃないかとさえ思えてくる。


「まぁこれのお陰でエリア間の行き来は現実的にこなせるわけだし」


 もしこの移動速度の乗り物がなければ、ちょっと近所のコンビニに行ってくるのようなノリでエリアを越えることは不可能だ。普通に徒歩で行こうとすれば片道だけでも余裕で数日かかってしまう。

 まだ未踏のエリアであればそれも旅の醍醐味として受け入れられるが、既に攻略の済んでいるエリアでそれはキツイ。中にはそれが良いんだよと言うことで駅舎を忌避する人もいるようだが、大多数の人はこの駅舎を好意的に捉えている。


 それよりも俺が気になることは……


「カノンたちが家にいればいいんだけどね」


「え、居ないこともあるの?」


「NPCだって普通に生活してるからね。危険な冒険者家業以外で金を稼ぐってリリスが言ってたから危ないことにはなってないと思うけど」


 この世界のNPCは皆が普通に生活し、それで経済を回している。まぁ勿論細かいところでは運営の手が入っているのだろうが、それでもこの世界のあらゆることは、NPCを抜きには語れない。

 カノンはまだ小さいから家にいるかもしれないが、普通に考えれば日中であればリリスは家にいない可能性の方が大きいだろう。


「そこら辺は着いてから考えましょ。それに、その子たちに会ってどうするのかも私たちまだわかってないんだし」


「確かに」


 伸二からメールで2人に会ってくれと言われただけで、それからどうしろとはまだ指示されていない。これ以上は考えても仕方ないことだな。


「久しぶりに2人に会える……これでいっか」


「あら~? 総君、浮気?」


「ちょっ、違っ……勘弁してくれ」





 ■ □ ■ □ ■





 サセボの町の居住区。そこは多くのNPCたちの住む場所であるため、プレイヤー用の施設は殆どない。代わりに大小様々な家が軒を連ね、道には多くのNPCが溢れている。

 家々の1つ1つが違う外観、または造りをしており、道行く人もその多くは何か目的を持った行動であることを匂わせる素振りが見られる。


「現実世界で寝てる人をそっとここにログインさせたら異世界転移したって勘違いしそうになるぐらいにリアルだな」


「ぷっ、なに、その設定」


「いやいや、例えだよ例え。それぐらいに、ここでの生活がイメージできるってこと」


「まぁ確かに見ていると、ここが仮想世界だってのを忘れそうにはなるけど。あそこで声を上げてる露天の店主なんて、如何にも後ろの奥さんの尻に敷かれてる感じだし」


 中にはこの世界での暮らしに溶け込み住人になりきる、所謂ロールプレイにハマってる人も多いと聞く。もしかしたら俺の見える範囲にもそういう人がいるかもしれないな。


 例えばそこの果物店でリンゴを一生懸命売ってる2人の女の子みたいに。


「美味しいリンゴだよ~。美味しいよ~。何せ私と妹が丹精込めて祈りを捧げたリンゴだからね~。ちょっと回復効果もあるよ~」


「お、お願いしますー。美味しいですー」


 うん、リリスとカノンだ。間違いない。


「リリス、カノン、久しぶり。元気してた?」


「あ、お客さんですか? リンゴいかがです?」


 え、あれ……他人の空似? いやいやいや、絶対本人だ。じゃあなんで俺のことを。


 まさか、一定期間会ってないとNPCの記憶から消去されるとかそんな設定でもあるのか。そんな悲しい設定……俺は……俺は……


「こんにちは。私リーフって言います。ブルーの友達です」


「まぁブルーさんの? あらまぁ」


「うおぃ!? 全然覚えてるじゃん!」


「あはは、ソウさんお久しぶりです。私とカノンは元気ですよ」


 先ほどのスルーがまるでないかのような対応。俺ってそんな扱いをされるような位置づけだったっけか?


「お、お兄ちゃん。久しぶり」


 おずおずとした様子でカノンが俺の腰の服を掴む。その様子は、緊張している時の瑠璃にそっくりだ。


 それに少しおかしくなり、軽い笑いを零してから腰をかがめる。


「久しぶりカノン。元気そうでよかったよ」


「えへへ」


 瑠璃の時の癖でついつい頭に手を置いてしまう。が、カノンはなおも嬉しそうに笑い続ける。


「ちょっと総君。この子、超かわいいんですけど」


 奇遇ですね翠さん。俺も一言一句違わぬ思いを抱いていたとこですよ。


 俺とカノンが久しぶりの再会を喜び合っているのを暖かな眼差しで見つめていたリリスだが、機を見計らって俺へと声をかける。


「あの、ソウさん。それで今日はどうされたんですか?」


 そうだった。用事で来たんだった。


「あぁ、実は……なんだろう」


「はい?」


 伸二に連絡するの忘れてた。





 ■ □ ■ □ ■





 カノンとリリスは今は2人で店の売り子として働いているとのことだった。実入りは少ないが、2人でずっと一緒に居られることの方が大事らしく、最低限の生活しかおくれていないなりに楽しんでいるようだった。


 そんな2人の仕事を邪魔する訳にもいかず、俺たちは2人の仕事が一区切りするまで隣のカフェで待つことにした。手伝おうかとも思ったのだが、それはリリスに丁重に断られた。


「で、ハイブは何だって?」


「カノンとリリスに、この地方に伝わる伝承とか御伽噺を聞いてくれ、だって」


「伝承、か。なるほどな。そう言えば普通のゲームとかだとNPCから攻略情報を集めるんだっけ」


「この運営突き抜けすぎてるから、ある意味盲点だったわね」


「じゃあ2人が来たらそれを聞けばいいってわけだ。でも2人がその情報を都合よく持ってるとは限らないな」


「まぁそこは聞ければラッキーぐらいでいいと思うわよ。でも、御菊(おきく)さんの頼みだから大外れってこともないと思うけど」


「オキクさん? その人がカゴシマで一緒だったって言う情報通さん?」


「そうそう。あれ、言ってなかったっけ。すっごい美人さんでね。肌や髪の手入れとか色々教えてもらったんだぁ」


「へ、へ~」


 それ、情報通なのか? だが御菊さんか。時代劇に出てきそうな人だな。やっぱ服装は江戸の町娘スタイルなのだろうか。いや、花魁スタイルも悪くないな。いやいや、ここはさらに発展させて――


「あ、2人来たよ。お~い、ここ、ここ~」


 椅子から立ち上がった翠さんが、2人並んで向かってくる姉妹に元気よく手を振る。


 それが目印となったのか、2人はそのまま一直線に俺たちのいるテーブルまで来た。


「お待たせしました」


「いやいや、俺の方こそいきなりゴメン。あ、何か頼む?」


「い、いえ……私たちは別に……」


「奢るよ?」


「紅茶セット2つお願いします!」


 うん、元気でよろしい。





 2人の頼んだ紅茶のセットが来たところで、本題を切り出す。


「伝承……ですか」


「あぁ。何か知ってる話があれば、聞かせてほしい。どんな話でもいいんだ」


 カップから手を離し暫し思案顔で唸るリリス。俺と翠さんはその口が開かれるのをじっと待つ。


「あの、こんな話なら」


 そう言ってリリスは言葉を続ける。


「昔々あるところに、お爺さんとお婆さんが住んでいました」


 桃太郎みたいな切り出しだな。


「お爺さんは山へ木を伐りに、お婆さんは川へ洗濯へ行きました」


 桃太郎だ、これ絶対桃太郎だ。


「お婆さんが洗濯をしていると川の上流から何かが流れてくるではありませんか」


 うん、桃だね。桃だよね。俺知ってる。


「すると、川の上流から突如として神の乗る舟がどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました」


 神!? 神出てきたよ。急に話のステージが上がってきたよ。


「すると神は言いました。お婆さん、これも洗濯して欲しい」


 お前も洗濯に来てんのかよぉおお! しかもなんでお婆さんに洗濯頼んでんの!? 神様なら自分でちゃんとしなよ!


「お婆さんはそれを快く受諾。神の洗濯物も一緒に洗いました」


 お婆さん心広ぇえ!


「ですがお婆さんは途中で思わず手が止まってしまいます。何と、洗濯物の中にFカップのブラジャーが入っていたのです」


 でけぇえ! Fカップとか尋常じゃないよ神様。てか女神様だったのね。


「お婆さんは思わずそれを下流に投げ捨ててしまいました」


 投げんなぁああ! 理不尽な神のものだけど投げんな。しかも下流。


「それを見た神様はお婆さんに詰め寄ります」


 まぁそうなるよね。人の物投げちゃ駄目だよね。それも下流に。


「あれは私の妹のブラ、故に貴女の行いを許しましょう」


 おい姉さん!? あんた最低だな!


「それからお婆さんは神の洗濯物をしっかりと洗い、すべての汚れを落として神へと返しました」


 妹のブラ以外はな。


「神はお婆さんへお礼を言うと、そのまま上流の方へと舟を漕ぎ始め帰っていきました」


 あ、漕ぐんだ。神様でもそこは手動なんだ。


「そして最後に神は言います。あ、私キュウシュウエリアのレイドボスも兼務してます。もし私と戦いたい時は、天孫降臨の地、タカチホまで来てください、と。そうして神とお婆さんは別れました。めでたしめでたし」








 ……ふ~ん








 はぁあああああああああああ!?

この度、第五回ネット小説大賞を受賞。本作リアルチートオンラインの書籍化が決定いたしました。

これもひとえに読者の皆さんのおかげです。ありがとうございます。

レーベルはモーニングスターブックス(新紀元社)様です。

詳しくは活動報告で述べるとして、私から皆様に伝えたいことは一つ。


(;゜Д゜)みんな、たわわが絵になるぞ!


次回『この日挑むダンジョンの難易度を俺たちはまだ知らない』

更新は木曜日の予定です。

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