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リアルチートオンライン  作者: すてふ
第4章 キュウシュウ踏破編
77/202

77話 あの日誓った約束により俺は完全に〇〇〇した

問題:サブタイの○○○に入る言葉は何でしょう?

「いえーい、大勝利ぃ~!」


 クルクルと回りながら、翠さんはこちらにVサインを向ける。


「どうだ総、俺たちの修業の成果は?」


 目を輝かせた伸二が俺の返事を今か今かと待っている。


 ご主人様に褒めてもらいたくて仕方のない犬のようだ。


「ハイブ、お手」


「は!?」


「すまん間違えた。2人とも前見たときより超強くなってるじゃないか」


「何をどう間違えたらそう……まぁいい。だろう? 俺たちカゴシマで頑張ったんだぜ」


 確かに相当頑張ったようだ。


 俺が誉めたのはアーツやスキルのことじゃない。身のこなしのことだ。2人とも敵との距離のとり方や相手の呼吸の読み方が数段上達している。伸二に至っては足運びすらも。これは普通にしていて身に付くものではない。いったいカゴシマで何が……


「あっちで私たちの動きを色々とレクチャーしてくれる人と出会ってね。その人からすっごく丁寧に教えてもらったの」


「へぇ、相当良い教官だったんだな」


 2人の動きを見てれば、それぐらいは分かる。それほどに2人の成長は明らかだった。


 俺が感心していると、伸二が地面に屈みある物を手に取る。


「これが幼火龍の鱗か。思ったよりも簡単に手に入ったな」


「何言ってるのよ。そんなの相手が1体だけだったからに決まってるじゃない。それに素材が落ちないことや被ることも想定したら、5体以上は倒す必要が出てくるからね?」


「へっ、今の俺たちなら幼火龍の5体や10体余裕だぜ」


 おい伸二待て。お前なんて危険なフラグを立てるんだ。万が一のときはお前を餌にした囮作戦で責任を取ってもらうぞ。


「また調子の良いこと言って……いっつもそうなんだから」


 まぁ……アンタのそんなところが好きなんだけどね。と俺は心のナレーションを付け加える。あぁこの2人マジで早くくっ付かないかな。見ていてヤキモキする。


「さて、この調子でドンドン行こうぜ」


「次は総君の番ってさっき言ってたの忘れたの?」


「あ、そうだっけか」


「そうよ、まったく。熱くなるとすぐに周りが見えなくなるんだから」「まぁ、アンタのそんなところが好きなんだけど――はぶらっ!?」


 しまった、つい心のナレーションが口に出てしまった。くっ、翠さんナイスな右ストレートだぜ。


「総君、あんまり変なこと言ってると殴るわよ」


「もう殴ってるじゃないか!?」


「あんなのまだまだよ、消費税みたいなものよ」


 なにっ、あれで消費税だと。なら本体価格はいったいどれほどのツッコミになるんだ。聞くのが怖いぞ、なんか魔法が飛んできそうだ。


「――ぷっ」


 ん?


「あはははっ、も、もう、リーフも……総君も、お、おかしすぎ」


 目じりに涙を浮かべ、淡い水色の和服に身を包んだ美少女がお腹を捩る。俺はその光景が、普段通りに俺の名前を呼ぶ葵さんが、とにかく嬉しかった。


「そうかな。ハイブとリーフもいつもこれぐらいやってると思うけど」


「これぐらいって何をだよ?」


「どつき夫婦漫才」


「「誰が夫婦()!」」


 お前らだよ。2人にぶっ飛ばされながら、俺はそう呟いた。


 ――笑顔で。





 ■ □ ■ □ ■





「さて、じゃあ次は俺の番だな」


 両手に銃を構え、俺はそう口にする。


 伸二と翠さんは俺との約束を守り、その成果を見せてくれた。ならば俺も、ナガサキでの成長を、進化を見せよう。


「総、テンションが上がって格好つけたくなる気持ちはわかるが、そういうのは目標を捕捉してからにしろよ」


「うぐっ……」


 仕方ないじゃないか。葵さんが普段通りに接してくれるようになったのが嬉しくてニヤケ顔が収まらないんだ。何か喋ってないと皆に変顔を披露してしまいそうなんだよ。


「あららぁ~? なんだか匂うわねぇ、これは……恋の匂いかな?」


 この人、こんなところに鼻が利くのか。雪姫さんと同類かも知れないな。


「おっ、いいタイミングでモンスターが。じゃ、行ってくるよ」


「チェッ、嫌なタイミングで」


 ……何だか変な声が聞こえたが、聞こえなかったことにしよう。


「見てろよハイブ、俺の進化っぷりを」


「既に人間やめてるお前の進化なんて凡人の俺が予想つくかよ」


「俺がいつ人間をやめた!?」


「割と前かな」


「初耳だぞ!?」


 伸二め、とんでもないことを言う。まぁ葵さんが笑ってるから良しとしよう。これでドン引きだったら銃殺刑だったけどな。


「いつまでも昔の俺と思うなよ、ハイブ」


「やけに自信満々だな。そんなに、なのか?」


「あぁ。凄まじい成長っぷりだぞ」


 あまりにも自信に満ちた俺の言葉に、伸二も翠さんも額に汗を浮かべだす。


「そ、総君。まさかアレをするんですか? ここで!?」


「大丈夫だよブルー。ちゃちゃっと片付けてくるから」


「い、いえ、そうではなくて」


 そう心配しないでくれ葵さん。もう俺はアレを完全にコントロールできている。今の俺なら、あの技を十分に使いこなせるはずだ。


「総君、それって私たちに影響が出ないものよね?」


「総、お前もしかして核とか手に入れたんじゃねえだろうな」


「お前ら妄想が酷過ぎるぞ!」


 伸二のあまりにもあんまりな発言に思わずツッコミを入れてしまったが、これ以上話しているとこっちにモンスターが飛んできそうだ。皆の俺に対する誤った認識を解いておきたいのは山々だが、それは後にするしかないだろう。


「じゃ、行ってくるよ」


 そう言い俺は前方に現れた幼火龍に向かって疾走する。手にする得物は勿論二挺の拳銃。


 接近する俺に気付いた幼火龍が、翼を大きく広げ迎撃の態勢へと入る。胸を張ると同時に首を少し後ろに下げ、鋭い牙の隙間から炎が顔を出しかけている。まず間違いなく、ブレスが来るだろう。


 だがガンナーは速攻を得意とする攻撃的な職業。奴が炎を吐くよりも早く、俺は攻撃態勢を整える。


「さぁ、ショーの始まりだ」


 そして俺は、ある技の名前を高々に叫び、奴に引き金を引く。


「――ツインショット!」


「「……は?」」

「え、そっち?」


 後ろで伸二と翠さん、そして葵さんの驚いた声が聞こえる。それもそうだろう。俺がたった今繰り出したのは、最初に覚えたアーツ《ツインショット》。あまりにも幼稚な動きのゲームシステムに全く馴染めず、全然使いこなせなかった俺の黒歴史ともいえるものだ。


 だが俺は今、それを見事に使いこなしている。


 鳥肌が立つほどに下手糞な照準のつけ方。


 吐き気を催すレベルで生じる手のブレ。


 イライラしすぎて血管がはち切れるんじゃないかと思うくらいにスローな、引き金を引くタイミング。


 相手の弱点や動き、特性をまるで気にしていない攻撃ポイント。


 案山子(カカシ)と化して狙撃に入る無防備っぷり。


 俺はプログラム化されたそれらの動きに一切逆らわず、超幼稚な射撃を幼火龍に浴びせる。


「どうだハイブ、驚いたか!」


 一瞬振り返ると、伸二も翠さんも開いた口が塞がらないといった様子でこちらを見つめていた。だが急にハッとした表情を作り、俺に向かって叫びを上げる。


「総、前! 前!」


 その声に従い視線を戻せば、俺の射撃でワンテンポ攻撃のタイミングを遅らせた幼火龍が、再度ブレスの体勢へと入っており――


「……攻守の切り替えはまだ練習中なんだよ」


 俺は炎に包まれた。


「ぶるぅあああああああああ」





 ■ □ ■ □ ■





 それから何とか普通に戦いその場を切り抜けた俺は、今度は仲間からの集中砲火に晒されていた。


「何が進化だ! 完全に退化してんじゃねえか!」


「何を言うハイブ。全然使えなかったアーツを使えるようになったんだぞ。これは明らかに進化だろう!?」


「どこがだ! 俺の期待と心配を返せ!」


 言い終わるや今度はバトンタッチといった感じで翠さんが前に出る。


「総君、もうアーツは諦めましょう?」


 伸二とは打って変わって、慈愛の心に満ちたかのような表情で翠さんが俺を諭しにかかる。


「いやちょっと待ってくれ。確かにさっきのアーツはヘッポコだったけど、まだ他にも使えるようになったアーツがあってだな。極光――」


「いいのよ総君。君の頑張りは私たち、ちゃんと見てるから」


「いやだから――」


「あんな動きを前衛でされたら私絶対に魔法でまとめてぶっ飛ばしちゃう。だから……ね?」


 なにが『ね?』だ!? 穏やかな顔でなんて恐ろしいことを言うんだこの子は。いいから俺の話を聞いてくれ。


「俺のアーツは」


「はいはい、お前がアーツ使えるようになったのは頑張ったよ。頑張ったから、今後もお前はアーツ使わないで行こうぜ。な?」


 お……


「俺の話を聞いてくれぇえええええ!」

答え:『弱体化』(´・ω・`)


次回、『この罪の名を俺は知りたい』

更新は木曜日の予定です。

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