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6話 俺がゲームを始めた件について

 ――扉を開けると、そこは仮想世界だった。



 急に晴れた視界に飛び込んできたのは、大きな通りを囲むように立ち並ぶ家々とその反対で軒を連ねる商店や工房。そして大きな噴水のある広場。さらにはそれを埋め尽くさんばかりの人、人、人。俺の地元でこれだけの人がごった返していたら一体今日は何のお祭りだと騒ぎになるな。


 っと、呆けている場合じゃない。まずは伸二と合流しないと。そう考えて周囲を見渡していると、少し離れたところから聞きなれた声が耳に届いた。


「おーい総。こっちだこっち」


 その方向へ目を向ければ、伸二に非常によく似た人が声をかけていた。てか伸二だな。間違いない。しかし中世の騎士のような恰好をしてたから一瞬戸惑ったぞ。なんだよそれ、かっこいいな。


「よ、伸――じゃなかったな。ハイブ」


「お、オンラインゲームの礼儀は多少学んできたようだな。感心感心」


「まぁな。ってかお前こそよくこんな人混みの中で俺を見つけられたな」


「お前の容姿はどこにいても目立つからな。見ろよ周りのプレイヤーの顔。男は露骨に嫌そうな顔を、女は興味津々な顔をしてるだろ。俺からすればそんなのは便利なお前探索装置だよ」


「そ、そうか……」


 俺からすれば純粋な黒髪黒目の日本人の方が羨ましいんだがな。まぁこればっかりは仕方ないか。この国ではハーフは目立つし、俺の考えは所詮無い物ねだりだ。自分の持っている武器で勝負するしかない。たとえ他人にどう思われようがな。


「ここは目立つ。とりあえずフィールドにでも出ようぜ」


「ああ」


 伸二の提案に俺も同意する。先ほどの目立ち方が、あまりいい方に働かないことは、リアルでよく学んだからな。



 人気のないフィールドまで出ると、伸二は自分の能力画面を開きながら話しかけてきた。


「じゃあ早速能力や職業の確認をしようぜ。まだ見てないだろ?」


「ああ。どうやったら出せるんだ?」


「能力画面を出すって考えれば出るぞ。ってかこれは説明書に書いてあったはずだが……さては飛ばしたな?」


「ま、まあな」


 仕方ないだろ楽しみだったんだから。えーっと、能力画面だったな。お、出た。半透明なボードみたいだな。


「出たぞ」


「じゃあそのまま画面にタッチしてくれ。でかいスマホと思えばいい」


 伸二の言われるがままに操作していくと、能力一覧画面というところにたどり着いた。


「【職業】って項目と【アーツ】って項目。それに【スキル】と【魔法】って項目が浮かんだだろ?」


「ああ」


「じゃあまずは【職業】から見ていこう」


 伸二の言う通りに職業の項目をタッチする。すると目の前にその内容が浮かび上がってきた。


「で、何て書いてあった?」


「えーっと……ガンナーってあるな。名前からして銃を使う職業か?」


「そうだな、あんまり使い手のいない珍しい職業ではあるよ。確か中距離から銃で撃ちまくるスタイルだよ。あと二挺の拳銃――双銃を使うことのできる唯一の職業だな」


 そっか。で、それ普段の俺と何の違いがあるんだ?


「ガンナーって魔法使えるのか?」


「使えないことはない……と思うが、適性職業以外での習得は相当に厳しいって聞くな。ガンナーの戦闘スタイルじゃ魔法はまず覚えないだろうし」


 ――なん……だと……!?


「もしかしてガンナーって不遇職とか言うやつなのか?」


「いや、そんなことはねえぜ。まぁ強いて言えば普通かな」


「そう……か……」


「そう気を落とすなよ。次はアーツを確認しようぜ」


 動揺を隠せなかったが、伸二に促され【アーツ】の項目を開く。


【アーツ一覧】

・ツインショット(Lv1)

二挺の拳銃を交互に発射し目標に命中させる。レベルに応じて連射速度と命中率が上昇する。



 1個って……マジか……しかも何だこのアーツ。こんなん目隠ししてもできるぞ。


「それはガンナー専用のアーツだな。普通二挺の拳銃を交互に撃って、しかもそれを相手に命中させるなんて素人には絶対無理だからな。でもそのアーツを使えば訓練を受けた警官や軍人みたいな射撃が出来るようになるんだよ」


 へ、へ~……どうしよう、いらねぇ……てかこれ逆に劣化してねぇか?


「ついでだ。スキルも見てみろよ」


「あ、あぁ」


 どうしよう……これでスキルも駄目だったら心が折れそうだ。頼むぞ……。


【スキル一覧】

・なし



 はい折れたー、心折れたよー。ってか無しって……マジか。俺このゲームに何か恨み買うことでもしたのか……。


「お、おう……まぁ……なんと言うか……こういうこともあるらしい、ぞ。極稀に」


「慰めてくれなくてもいいよ……持ってるものを使って頑張るから……」


 まぁスキルに関しては持ってすらいないがな。


「そういえば伸――ハイブはどんな感じなんだ?」


「見てみるか? ほれ」


 そう言うと伸二は指を弾くようにして画面を2枚、俺の前にスライドした。


【アーツ一覧】

・オフェンスシールド(Lv2)

盾で相手を攻撃するアーツ。連続攻撃回数2、リキャスト時間10秒。レベルに応じて連続攻撃回数と速度が上昇し、リキャスト時間が短縮する。


・ディフェンスシールド(Lv2)

盾で相手の攻撃を防御するアーツ。連続防御回数3、リキャスト時間10秒。レベルに応じて連続防御可能回数と反応速度が上昇し、リキャスト時間が短縮する。


・ブレードアタック(Lv1)

片手剣、両手剣、刀、短剣、短刀で相手を攻撃するアーツ。連続攻撃回数2、リキャスト時間10秒。レベルに応じて連続攻撃回数と速度が上昇し、リキャスト時間が短縮する。



【スキル一覧】

・ハイ注目!(Lv1)

半径10メートル圏内の敵のヘイトを自分に集める。リキャスト時間180秒。レベルに応じて適用範囲を拡大し、リキャスト時間が短縮する。アクティブスキル。


・筋力向上(Lv1)

筋力が向上する。また格闘攻撃か一部の近接武器を使用した際にダメージボーナスを得る。レベルに応じて能力が向上する。パッシブスキル。


・防御向上(Lv1)

防御力が向上する。また防具装備時にステータスボーナスを得る。レベルに応じて能力が向上する。パッシブスキル。



 多いな……これが先行組との差か。


「スキルの説明の最後にあるアクティブスキルとパッシブスキルの違いってなんだ?」


「アクティブスキルは自分で発動を任意に操作するスキルのことだよ。パッシブスキルはその逆で常に発動しているスキルのことだ」


「なるほど、よくわかったよ。しかしハイブはアーツもスキルも豊富だな」


「俺の職業は騎士だからな。パーティメンバーを守るアーツやスキルを中心的に取得するんだ。所謂タンク職ってやつだな。前衛で敵のヘイトを集めて他の奴らが攻撃する隙を作ったり、一発デカいのをぶち込むための時間を稼いだりな」


「へぇ。じゃあ普段は他の人とプレイしてるのか?」


「あぁ。同じ学年の奴らとギルドを作って、そいつらとよくな」


 俺にとって友人と呼べるのは伸二ぐらいしかいないが、人当たりの良い伸二には多くの友人がいる。今日は俺のために時間をとってくれているが、あまり伸二に甘えてばかりもいられないな。


「そうか、悪いな。俺のために時間をとっちまって」


「気にすんなよ。それよりお前も俺たちのギルドに来ないか? 歓迎するぜ?」


 ギルドか。う~ん……。


「まだこのゲームについて何もかも手探りだから、色々と把握できるまでは1人でやってみようと思う。折角誘ってくれたのにゴメンな」


 それだけが理由という訳ではないが、これ以上は伸二に対しても悪いし何より言いにくい。申し訳ないが断ることにした。


「そっか、まぁ気が変わったら言ってくれよ。俺はいつでも大歓迎だからな」


 伸二はわずかに肩を落とした後、すぐに表情を作り直して明るく声をかけてくれる。こんな俺のために……本当に俺にはもったいない友人だ。


「じゃあこのまま狩りに行こうぜ。武器は初期装備品があるからそれを使えば何とかなるさ」


「お、いいねぇ」


 いよいよ冒険か。ちゃんとやるゲームはこれが初めてだが、伸二もいるし何とかなるだろう。


 ――やってやるぜ!

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