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リアルチートオンライン  作者: すてふ
第3章 キュウシュウ上陸編
47/202

47話 ゴから始まるエイリアンvsY

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたしますm(_ _)m

 雪姫さんとパーティを組むことを約束した翌日。俺は再び伸二と翠さんの目の前で正座をしていた。


 伸二からは雪姫ちゃんと一緒だなんて羨まけしからんと言われ、翠さんからはそんな得体の知れない人にデレデレ鼻の下を伸ばすなと言われた。


 伸二の言い分に関してはシカトでいいとして、翠さんの言い分にはノーリアクションではいられない。一体どのタイミングのことを指して言っているのかはわからないが、全く心当たりがないと言えば嘘になる。人間やましいことがある時は小さくなると言うが、今の俺はまさにそれを体現していると言って差し支えないだろう。もう正座以外の姿勢で翠さんと向き合うことが出来ない。


 それはそれとして、どうして葵さんも俺と一緒になって正座しているのだろうか。もしかして連帯責任とかで俺のとばっちりを受けているのか? それとも葵さんも何かしたのか? 翠さん、これは一体どういう――え、姿勢を崩すな? 話はまだ終わってない? そうですか。今日もですか。


 その後俺は2人から改めて『悪目立ちしないためにゲームを楽しむ10の方法』の講義を受けた。後半伸二が「可愛い子は俺に紹介すること」の一文を加えようとしていたが、翠さんにどつき倒されて失敗に終わった。もう付き合えばいいのにこの2人。言ったら俺もどつかれるだろうか。



 ……どつかれた。





 ■ □ ■ □ ■





 その日の夜、俺と葵さんは約束の場所で彼女と再会した。


「お待たせしました雪姫さん」


「あ、ソウ君、ルーちゃん、こんばんはぁ」


 ルーちゃん? あぁ葵さん(ブルー)のことか。


「じゃあ昨日言ってた通り狩りに行きましょうか。俺とブルーはまだナガサキのフィールドには出てないので、狩りは今日が初なんです」


「そうなんだぁ。でも私もそんなにフィールドに出てたわけじゃないからぁ、2人とそんなには変わらないと思うよぉ」


 そうなのか。ならお互いに新鮮な冒険となりそうだな。だが雪姫さんは伸二と同じくスタートダッシュ組。このゲームの経験値は俺よりもはるかに高い。このパーティで唯一の男である俺が雪姫さんに頼ると口にするのは情けない気がするから言わないが、非常に心強いことではある。


 シマバラの町周辺のフィールドは、海に面した海岸フィールドと森林と山々が続く山林フィールド、その中間に存在する平原フィールドの三種類がある。


 次の町【サセボ】を目指すのならば平原と山を越えなければならないが、噂ではその町にたどり着くまでに相当な時間を要するらしい。今回は町を目指すわけではなく即席パーティで慣らすための狩りだから、無理に山へ入る必要もないだろう。俺たちは話し合いの末海岸へと足を運んだ。



 時刻は夜だが、完全な闇ではなくやや薄暗い程度の視界のため、海もぼんやりとだが確認できる。足を砂に踏み入れた時の沈む感触が、俺に童心を取り戻させようと訴えかけてくる。これで伸二と2人だったら確実に海に飛び込んでたな。


「夜の海も綺麗ですね……」


 ……綺麗だ。思わず見とれた。何に、など無粋なことは聞いてくれるな。潮風に髪をなびかせる様は俺に暫し呼吸を忘れさせるものがあった。


「ホントぉ、キレイ」


 綺麗ですね。うん、どうしてだろう。雪姫さんと一緒に居ると昇天しそうだった魂がしっかりと地に根差しているのを感じることが出来るよ。同じ美人なのに属性が違うだけでこうも違うのか。


「何だかソウ君失礼なこと考えてなぁい?」


「そ、そんなことないですよ」


 年上の女性を舐めてはいけない。今日翠さんに散々言われたことを思い出した。自分に向けられる視線や感情に人の五倍は鋭い生き物がカワイイ系お姉さんの特徴だから気を付けろと言われたが、こういうことか。


「そう言えばここら辺にはどんなモンスターが出るか雪姫さんはご存知ですか?」


「えっと~、確かワラスボやムツゴロウが出るって聞いてるよ」


 ほほう、それは結構見た目に堪えそうだな。雪姫さんは多分動じないだろうけど、葵さん大丈夫かな。ビックリして腰を抜かしたりしないだろうか。いや、怖がりの葵さんのことだ。ビックリして隣の人に抱きついたりするかもしれない。もしそうなったら俺は持てる力の全てを解放して葵さんの隣を確保するぞ。


「ム、ムツゴロウさんですか?」


 あ、これ勘違いしてるな。違うよ葵さん。君の想像しているのはいかなる動物も舐め回し撫で回し篭絡するキングのことだろう? いくら俺でもキングは撃てないよ。


「ムツゴロウって言うのはぁハゼさんのことだよルーちゃん」


「ハゼ……お魚ですか?」


「うん、潮の引いた干潟に姿を現すんだってぇ。ワラスボは私もどんな生き物か知らないんだけどね」


「2人とも、そのムツゴロウかどうかはわからないけど、モンスターの反応だ。数は4……かな」


 2人の会話に割り込み注意を呼び掛けると、2人とも俺同様に戦闘の準備をすぐさま整える。さて何が出るか。


「来るぞ!」


 俺が言い終わるとほぼ時を同じくして、海から巨大なモンスターが飛び出してきた。2メートル程はある巨大なウナギのようなシルエットで、少し口を開けただけで鋭利な歯がびっしりと覗いている。退化したことにより目も存在せず、その見た目からエイリアンと比喩されることもある生き物。


「ワラスボか、これは中々エグイ見た目だな」


 テレビで何度か見たから知ってはいたが、実際に目の前で、しかもこのサイズで見るともう殆どエイリアンだな。


「俺が飛び込みます。雪姫さんはブルーと連携して――」


「ギィィヤアアアアア、ニュルニュル嫌ぁぁぁぁぁ」


 耳にキーンと来る悲鳴を上げ、雪姫さんは陸上選手のような美しいフォームで砂浜を駆け抜けていった。


「……そこが弱点なのか」


 あの叫び声が素なのか? だとしたら今よりもっと仲良くなれそうな気もするな。っとそれよりも雪姫さんをあのままにしておくわけにもいかないか。ブルーもそれなりにあの見た目に委縮はしているみたいだけど、雪姫さんが尋常じゃなく取り乱したのを見たせいかそれなりに落ち着いているな。


「ブルー、俺がこいつらを引き受けるから、雪姫さんをお願いできるかな」


「は、はい、わかりました。ソウ君なら大丈夫って言うのはわかってますけど、それでも気を付けてくださいね」


「おう」


 しかしこのモンスター。勢いよく飛び出てきたからすぐに襲ってくるのかと思ったら葵さんが行くまでしっかり待ってくれてたな。何て空気を読んでくれるモンスターなんだ。


「……ん? いやコイツ単に海から出れないだけか」


 と言うことは砂浜に居れば奇襲を受けることもないのか? だがそれなら何でこのタイミングで飛び出してきたんだ? あれか、残念なAIなのか?


「ん~襲ってきてる訳でもない相手に銃を向けるのもなぁ……」


 だが俺がどうしようか迷っていると、今度こそ空気を読んでくれたかのようにワラスボが口から紫色の液体を吐き出して攻撃してきてくれた。


「おっと――って溶解液かコレ! 本当にエイリアン扱いだな」


 ワラスボって見た目は怖いけど食べると美味しい魚らしいんだけどなぁ。これってちょっとした風評被害にならんだろうか。いやでも取れる素材でその評価は変わるか。


 口から液体をどんどん飛ばしてくるワラスボに銃口を向け、口角を吊り上げる。


「手段はともかく、射撃戦を選んでくれたモンスターはお前らが初めてだ……素直に嬉しいよ」


 たまには純粋に銃だけで戦ってみるか。ここ最近接近戦ばかりしていたからな。





 ■ □ ■ □ ■





「……意外と呆気なかったな」


 4匹の巨大ワラスボの吐き出す溶解液は当たればそれなりに厄介そうではあったが、そのスピードは精々100キロかそこら。躱すのは容易だった。逆に海から半身を剃り出した状態のワラスボは俺からしたら格好の的であり、正直全く脅威足り得なかった。

 これが船上とかの足場の限定されたフィールドや海中なら全然脅威度は違うのだろうが、少なくとも丘から相手をする分には雑魚モンスターの域を出ない。


「まぁいいや、さっさと素材を回収して葵さんと雪姫さんのところへ向かおう」


 俺は波打ち際に落ちた魚の切り身のようなアイテムを手に取る。


【ワラスボの身:泥臭さのある魚の切り身。干物にしてから使用することで香りや旨みを引き出すことが出来る。なお開発チームの山田は、ワラスボの写真をアップで娘の携帯に送り着信拒否されている】


 またお前か! いやもう半分覚悟してたけどさ来るだろうなって。それにしても山田さんそれは駄目だよ。女の子にあの顔のドアップ写真はキツイよ。そりゃ拒否られちゃうって。もう俺は山田さんのことを全然他人と思えないくらいには感情移入しちゃってるよ。


「っといかんいかん、また山田さんに持っていかれてた」


 呆れを通り越して溢れ湧いてくる山田さんへの憐憫の情に適当に区切りをつけ、俺は葵さんと雪姫さんの走っていった方角へと走った。


 それにしてもさっきの雪姫さんの取り乱しようは凄かったな。だけど普段の彼女からしたらアレは見られたくない一面だったのかもしれない。ここは触れないでいた方が良いのかもしれないな。


 そんなことを考えつつ砂浜を走っていると、視界の真ん中に雪姫さんからのチャット文が浮かび上がってきた。もしやさっきのことに関することだろうかと少し緊張してその文に視線を向けた俺だが、そこに書かれてあった文字は――


【ソウ君、助けt】


 ――は?

次話の更新は水曜日です。

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