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リアルチートオンライン  作者: すてふ
8章 キンキ戦争編(後編)
199/202

191話 実況に自重を求めるのは間違っているだろうか

 仮想世界へとログインすると、普段とは違う光景が眼前に広がる。


 昨日ログアウトしたギルドハウスとは、明らかに違う。


 まず、我がギルドハウスの椅子はパイプ椅子ではないし、机も事務机のような地味な感じでもない。窓はなく扉も1つしかないし、刑事もののドラマとかで見る取調室が一番イメージに近いな。


 などと考えていると。


「ソウ選手ですね? お待ちしていました」


 扉が開き、スーツ姿の女性が入ってくる。その凛とした雰囲気に、思わず吊り上がった声で応える。


「は、はい」


「本イベントへのご参加、ありがとうございます。私はソウ選手の案内役を仰せつかりました、ヒラノと申します。どうぞ、よろしくお願い致します」


「お、お願いします」


 お、おぉ、なんだかVIP待遇っぽいな。部屋以外。


「それでは、本イベントにおけるルールを改めてご説明いたします」


 流暢な口調で、女性は大会ルールを口にしていく。


 曰く、加護持ちは最後まで生き残ることよりも、ポイントを如何に多く取得できるかが重要である。


 曰く、戦闘不能となり次第、イベントは終了となる。


 曰く、他プレイヤーとの共闘、共謀はある程度自由に行ってよいが、八百長や脅迫などの違反行為にはアカウント停止の断固とした措置をとる。


 曰く、顔や姿を大会参加者以外に晒したくない場合は、映像に映し出されるもののみ加工処置が施される。


 曰く、運営の用意した着ぐるみやコスプレセットなどの着用も可。


 曰く、曰く、曰く。


「──以上になります。なにかご質問はございますか?」


「いわく」


「はい?」


「……なんでもありません」


「そうですか。それでは、私はこれで失礼いたします。ソウ選手のご健闘をお祈り申し上げます」


 そう言うと、女性はヒールの音を響かせながら部屋をあとにした。


 開始まであと20分ちょい。今頃伸二たちは風鈴崋山の面々と打ち合わせの最中だろうな。


 葵さん……まだ怒ってるかな。


「会いにくい、な」


 あわせる顔がない、という表現の方が正しいかもしれない。あれだけ怒った表情を、あれだけ悲しんだ表情をさせて、今更……。


 まぁ、遭遇しても俺とわからない手は既に考えてある。どっちにしろ、ウダウダ考えたところで俺の脳ミソじゃ気の利いた考えなんて出て来やしないんだ。


 それに、悩みながら戦っていけるほど、この戦いはヤワなものじゃない。なにせ、全てのエリアボスをソロで攻略するぐらいの気持ちで臨まないといけないんだ。


 いやそれだけじゃない。今回は大尉の率いる蒼天とも敵としてぶつかる。軍曹は加護持ちだから遭遇の可能性は他よりも低いかもしれないが、全プレイヤーの中でもトップレベルに警戒すべき相手だ。


 それ以外の加護持ちやエリア代表者も、油断ならない猛者ばかりに違いない。これで、心が震えないなんて嘘だ。


 そうだ総一郎。ウダウダしてる暇なんてお前にはない。お前はひたすらに、眼前の敵を倒す狂戦士となるのだ。


 戦え総一郎。最後の一人になるまで戦い、そして──





 ■ □ ■ □ ■





『さあ! いよいよ始まりました、バトルロイヤル! 実況は私、ホトトスギがお送りします。そして解説には、今回のイベントの責任者でもある明太マヨさんをお迎えしています。明太マヨさん、よろしくお願いします』


『よろしくマヨ!』


『……そ、それではまず、フィールド全体の構成とそれぞれの配置から見ていきましょうか』


『マヨ!』


『……え~っと、フィールドは4つの島で構成されています。第一の島は、草原や森、山、川、湖などの自然豊かな島で、他の島に比べて多くのモンスターが生息しているそうです』


『無人島の雰囲気を楽しむことのできる島をコンセプトに作ったマヨ!』


『そうですね。殺し合いという要素を除けば、大いに満喫できたと思います。それでは次に移ります。第二の島は、岩盤だらけの無機質な島。緑っけはほとんどなく、岩山と洞窟だけが延々とある島です。観光という点から見てしまえば、魅力の乏しい島に見えますね』


『手厳しいマヨ~』


『はい次に移ります。第三の島は、巨大ショッピングモールや遊園地などの施設の建つ複合テーマパークランドです。アトラクションで遊ぶこともできるそうですが、トラップも仕掛けられているらしいので、あまり道草を食うことはお勧めできません』


『このテーマパークは、次の地方を開放するときに実装する予定マヨ。プレイヤーの皆には、是非楽しんでほしいマヨ』


『実装するときにはトラップが外されていることを祈るばかりですね。それでは最後の島の紹介です。最後の島は、古代文明の遺跡の眠る島。考古学的な趣味の人から見れば、垂涎ものの雰囲気の漂う島になっているとか』


『そうマヨ! もうよだれで呼吸困難になるマヨ!』


『そうですかー、では代わりの人を早く呼びますね』


『扱いが雑になったマヨ! ものの数分で私の株が地に堕ちているマヨ!』


『やだなー、明太マヨさん。マヨネーズの容器に全身を包んで語尾がマヨの人の株なんて、とっくにストップ安ですよ』


『最初からだったマヨ!?』


『さて、無駄話をしている間に選手の配置も済んだようです』


『ひ、酷いマy』『6つのエリア代表選手たちは、それぞれバラバラに配置されたようですね。こちらの実況席と観客席からは、全選手の現在位置と周囲の映像が全て見えていますが、選手たちが得られる情報は断片的なものとなっています。明太マヨさん、まずはどのような行動がカギとなるでしょうか』


『そうマヨね~。最初の行動となると、やはり情報収集がなにより重要マヨ。自分たちが4つの島の内のどこに配置されたのか。周囲に敵はいないのか。ここまでは必須マヨ。でもカギになるのは、その次マヨ』


『と、言いますと?』


『攻めに出るか、守りに出るか、その選択がカギになるマヨ。攻めに出るのなら、地理的優位を捨てる代わりに、情報を集めやすくなるマヨ。上手くいけば、先制攻撃だってかなうマヨ。対してその場から大きく動かずに守りに入れば、地理的優位を得ることができる代わりに、得られる情報はどうしても受け身になってしまうマヨ』


『なるほど……あ、そう言えば言い忘れていました。4つの島は、それぞれに巨大な橋が架けられていて、その橋を渡ることで島と島とを渡ることができます』


『あ、瀬戸大橋をパクって造ったあの橋のことマヨね』


『……その他にも、島を渡る方法はあるのでしょうか?』


『あるマヨ! でも、その辺は参加者たちに自力で見つけてほしいマヨ』


『なにやら気になりますが、これは是非参加者の皆さんにその方法とやらを頑張って見つけてほしいところ──おっと、早速動きが出てきました! 遺跡のある第四の島で、加護持ちの選手たちが遭遇戦を繰り広げています。しかもこれは……どうやら三つ巴戦のようです!』


『メインカメラ、あの戦いをメインスクリーンに映すマヨ! これは初っ端から熱い絵が撮れるマヨ! これを餌に新規ユーザーをどんどん釣るマヨ!』


『さあ、隣のバカのマイクコードを引っこ抜きたい気持ちがマッハで加速する私ですが、それ以上にこの戦いに注目したい気持ちで一杯です! 三つ巴の戦いを繰り広げるのは……情報出ました、三選手のエントリーネームは、ロック選手、アサド選手、ムニス選手です』


『エントリーネームはこのイベント専用の呼び名マヨ。勿論プレイヤーネームをそのまま使ってもいいから、その辺を気にしないプレイヤーにはそのままにしてもらってるマヨ』


『どうでもいい情報をありがとうございます。しかし、三選手がそれぞれを視界に収めたまではよかったですが、揃って動きが止まってしまいましたね。明太マヨさん、これは』


『完全に三竦みマヨね。互いに手の内がわからない以上、下手に手は打てないから、これは仕方ないマヨ。でも、これでは熱い絵が撮れない……そうなると新規ユーザーが……来月の株主総会が……』


『音声さぁあああん! このバカのマイクオフにしてぇええええ──って、え、これは……?』


『ど、どうしたマヨ?』


『もう1つ、もう1つの反応が、三選手に対してもの凄いスピードで迫ってきてます! え、いや、しかし、これ、速すぎ……まさか、モンスター』


『あんな速度で走るモンスター、いたマヨかね。サブカメラ、あの反応にも寄ってほしいマヨ!』


『お、カメラさんナイスアングルです! さて、いよいよ謎の反応の正体が判明しそうです! 気になる反応の主は──え』


『……なにマヨ、あれ』

次回は金曜日の12時に投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 鬼が出るか蛇が出るか。 鬼しか出ないけどね〜(笑)
[一言] ふもっふ・・・
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