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リアルチートオンライン  作者: すてふ
7章 キンキ戦争編(前編)
182/202

182話 やはり俺の攻略は……まちがっている。

お久しぶりです。お待たせしました。

~ここまでのあらすじ~

大阪代表を目指すべく活動していた総一郎一行は、同じ目的で動いていたギルド『風鈴崋山』のメンバーと行動を共にする。その後、母親の封印を解除したいと言う少年『モヒカンボンバー』と出会い、彼の願いを叶えることに。オオサカ城に少年の母親『巨大な白狐』がいることを確認した一行は、巨大ダンジョンであるオオサカ城へと乗り込み、ようやく天守閣まで到達したのであった。

 魂からの咆哮(ツッコミ)で、この戦いの幕は上がった。


 新品の畳が、靴型に陥没する。それは白狐まで真っ直ぐに伸び、やがてあと数メートルと言うところで──爆散。


「迅雷!」


 畳を踏み砕く強い感触を靴底に感じた直後、その顔に壁のような空気抵抗がかかる。


 何度も何度も、何度も経験した感触。そしてその先にあるのはいつも、心を震わせる戦いだった。


「テメェ! あの時の真剣な空気はどこに行ったぁあああああ!」


 うん、今日も震えている。できれば、こんな心の震え方はしたくなかったが。


『コォオ!?』


 買い物袋を下げた白狐の顔面に、拳がめり込む。


 ちくしょう。これだと攻撃しても、ツッコミに見えてしまう。なんて悲しい幕開けの仕方だ。


 ま、まぁいい。とにかく戦いは始まった。敵がどれだけふざけていようが、俺は自分の仕事を遂行する。


『コォオオ!』


 顔に付いた異物を振り払うように、白狐は首を大きく振り上げる。その勢いに負け、宙に投げ出されるも、


「──疾風!」


 空を蹴り、再度奴の顔の前に現れる。同時に日本刀《夏風》を召喚し、鼻先に突き立てる。


『コォオオオオオオ!?』


 いい感じだ。それに、そろそろ(・・・・)か。


「総くん、ナイスよ──《ラ・メテオーラ》!」


 二十に及ぶ拳大の隕石が、光を纏って降り注ぐ。


 いや、まだ、


「俺も続く──《シルバーレイン》!」


 天から降り注ぐ銀の矢。光の隕石と重なり合って降り注ぐそれは、幻想的ですらある。ここが室内ではなく星空の輝く夜空であれば、完全に目を奪われたことだろう。


『コ、コォォ』


 頭を下げ、急所を隠す様に丸まる狐。その注意は完全に頭上に向いており、前方に居座る俺の姿が完全に見えていない。


 ……なるほど。これが翠さんからのメッセージという訳か。なら、


「ソウ、次は俺たちの番だぜ!」


 双剣を携えた赤い軌跡が、脇を駆け抜ける。


「姿が霞む……あれは」


 その独り言に応えたのは、最も頼れる相棒であり、罪の共犯者。


「あれはダンサーのアーツ《舞踏・(かすみ)》。陽炎のように体を霞ませ移動するアーツだ」


 さすが伸二。よく知っている。そう言えば雪姫さんも《柳》という似たようなアーツを使っていたな。


 おっと、それより今は、


「ううぉおおらぁあああああああ──《三段光》!」


 白狐の額に、三本の赤い線が引かれる。一振りのはずなのに三回攻撃される不思議な剣技。


 それでも、赤い皺を刻む狐は動かない。動けない。


「《コ・メテオーラ》!」


「《貫通》付与、《螺旋剛弓》!」


 1メートル大の隕石が狐の肩に直撃し、爆炎を上げる。


 次いで放たれた強弓は、蒼破の指から離れた瞬間、螺旋回転を生み、竜巻を伴って狐の脇腹に突き刺さる。


『ギュコォオオオオオオ!?』


 よし、次は俺たちの番だな。


「行くぞ、相棒」


「おおよ! ──《斬空》!」


 横一線に描かれた剣閃から、半透明の斬撃が飛翔。ピンと立つ耳から赤いエフェクトが飛び出す。


「リロード【雷装・徹甲弾】!」


 僅かに開く口から除く牙。それを叩き砕く弾丸を放つ。


 おっと、まだ俺のターンな。


「こいっ──双刃ナータ」


 先端に重量をもつ剣──別名ククリ刀──を両手に持ち替え、巨大な顔の前で縦横に振るう。


 ん? 剣が光った……あぁ、雷破の支援魔法か。ダメージが上乗せされてるな。


「やるな、ソウ。だがソードダンサーとして、俺にも負けられない意地がある。見せてやるぜ、──《剣舞・飛竜》!」


 炎破の体が空中を不規則に飛翔し、両手の剣は幾重もの光を生み出す。


 その猛攻に、白狐はなおも体を丸めて防戦一方となる。


『フゥゥゥウウウウウウ』


 純白の毛は逆立ち、攻撃が振るわれるたびに体が震え、その体からは紅いエフェクトが飛び散る。


「炎破、上だ!」


「っつお!?」


 雷破の声にギリギリのところで反応した炎破が、大きく体を後ろに逸らせる。その直後には、車すらスクラップにしそうな巨大な肉球が降り、畳の上に直撃する。


「って待て待て! こいつ、丸まってたはずだぞ。どういう体の構造してんだ!?」


 その答えは、炎破が一歩下がって狐の全体を見渡したことで判明する。


「なんだ、あれ。手が……浮いてやがる」


 浮かぶ2つの手が、白狐の周囲を時計回りに旋回する。


「自動迎撃装置ってところかな?」


 雷破の答えに、正誤を出せる者はいない。俺と伸二が前に戦った時には、あんなのはなかった。


「なんにせよ、まだ好機は続いてるぜ」


 力強い言葉を発する炎破。その言葉からは、戦意は欠片も失われていないのがわかる。


「あれを掻い潜っていけば、奥の狐は丸まってるだけだ。今がチャン、ス……じゃ、ないみたいだな」


 丸まっていた白狐が、のそりと体を起こし、こちらを見つめる。その瞳に宿っているのは、


「どうみても、怒ってるな。あれ」


 明らかな敵意に反応し、伸二は盾の後ろへとその体を隠す。


 おいおい、


「怒っていようが笑っていようが、あいつは倒す。そう、決めただろ、あの時に」


 伸二の体から、余計な力が抜ける。


「……だったな。よし、突っ込め、総。俺が援護する!」


「そうこないとな!」


 後ろから怒鳴り声にも似た翠さんの声が聞こえる気もするが、ここはラノベ主人公特有の突発性難聴の出番だ。


 アー、アー、キコエナーイ。


 それから戦いを続けること5分。


 俺たちは、拍子抜けするほどに危ない場面もなく、白狐のHPを半分にまで減らした。





 ■ □ ■ □ ■





「……いけそうだな」


 戦いにおいて、それはいいことだ。いいことのはずだ。しかし、妙に上手くいっている。いきすぎている。そうなってくると、逆に不安になってくるのも人というもの。それは、俺だけではなかった。


「総、ちょっとおかしくないか?」


 投擲用の槍を投げ終わった伸二が、強張った顔を向けてくる。


「あぁ。岩山で闘った時と比べて、手応えがなさすぎる。あの時は俺たちの攻撃を受けても、丸まるなんてことはなかったし、反撃も今の比じゃなかった。結局あの浮遊する手も、撃破してしまえば大して脅威でもなかったしな」


 ついでに言えば、買い物を引っ提げて帰ってくるなんてふざけた場面もなかった。もう、このノリで倒してしまおうか。


「あの買い物袋も不気味だ。そろそろなにか来るぞ」


「え、あの買い物袋ってギャグのために用意した物じゃないのか!?」


「いや、なにを言ってんだお前。普通に考えればなにかのアイテムだろ」


 ……そ、そうだったのか。


 だが、どうして買い物袋? それも、主婦のチョイスしそうな物ばかり。これにはどういう意図があるんだ? ただの運営の悪ふざけじゃないのか?


 しかし、残念なことに、伸二の言っていたことは正しかった。


 残念なことに。


「み、みんな、下がって!」


 翠さんの慌てた声が、前線に出ている俺たちの耳に勢いよく入る。その声にいち早く反応したのは、翠さんの幼馴染という全男子垂涎のポジションを得る伸二。次いで俺。そして最後が、最も懐に深く入り込んでいた赤い戦士、炎破。


 迅雷を使ったバックステップで、白狐の周囲の光景を一望する。


 そこには、


「あれは大根か!? いや、ネギにキャベツ、ゴボウ、タマネギ」


 あろうことか、巨大なビニール袋の中で転がっていた大きな野菜たちが、空中に浮遊している。


 しかし絵がシュール過ぎる。シュール過ぎて、イマイチ危機感が湧かない。


 いや、そもそもこれは危機で合っているのか? 翠さんがあんな声で言うからには危機なのだろうが、どうにも頭の隅でツッコミブザーがアップを始めている気がする。


「あ、あれは!? 炎破、急いで!」


 峰破さんの悲鳴にも似た声が響いた直後、宙に浮かぶ野菜たちは、眩い光を恒星のように発する。


「ちっ」


 スミスさんから貰ったとっておきの閃光弾ほどではないが、視界は完全にゼロ。手で目を覆うが、微妙に違う角度から入り込んでくる光で、前を見ることができない。


 今この時を狙われたら、ひとたまりもないな。もしや、白狐はこれを狙っていたのか?


 だとしたら、俺のツッコミ警報器も錆びついたもんだな。コイツもやっぱり、天守閣に座す主だったってことか。疑って悪かったよ。




「……ん?」


 おかしい。いっこうに攻めの気配がない。それどころか、これは、


「光が……弱くなっている?」


 急速に勢いを殺す光は、やがて寿命のきた電球のように、寂しく、消えた。


「一体なんだってあんな──」


 動いていた口が、ポカンと開いたまま硬直する。


 やっと開くことのできた目が、ありえないものを凝視して開大する。


 そこにあったのは、居たのは、


『幸村レッド!』


 真っ赤な甲冑を着こんだ侍が、畳に舞い降りる。その両手には、二本のネギが握られている。


盛親(もりちか)ブルー!』


 この侍の甲冑は、青一色に統一されている。背中に籠を背負っていて、山盛りの玉ネギが顔を覗かせている。



又兵衛(またべえ)グリーン!』


 今度は緑か。えらくデカい大根を肩に担いでるな。


勝永(かつなが)イエロー!』


 黄色。キャベツを持ってる。


全登(ぜんとう)ブラック!』


 黒。ゴボウ。


『我ら、オオサカ戦隊──ゴニンジャー!』


 それぞれのキメポーズと同時。背後でカラフルな噴煙が上がる。ヒーローモノでよくある演出だな。


 ……さって、そろそろいいかな?


 仰け反り、肺へと空気を目一杯に送りこむと、それらは、咆哮となって城内に轟く。


「ふざけんなぁああああああああああ!!」

次回『やはり俺のツッコミゲージは削れていく。』

投稿は明日の12時を予定しています。


今後の投稿スタイルですが、定期更新でなく、ある程度書き溜めてから一斉に投稿することにしました。

今回は『7章 キンキ戦争編(前編)』までを一斉に投稿します。

詳しくは活動報告に記載していますので、興味のある方はそちらも目を通していただけると幸いです。

また、今後の更新に関する報告なども、すべて活動報告で行うことにしました。進捗状況などもそちらで報告する予定です。

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