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1-9 「うさぎ倶楽部」の仕組み

「どうも、お疲れさま。それじゃあと、まず、何からお話ししようかな………」

「最初に聞いてよければ、うさぎ倶楽部っていう名前の由来を教えてもらえませんか?」

「ああ、なるほどね。いや、たいしたことじゃありませんよ。僕らの仕事は人の話しに耳を傾ける、つまり、聞くってことがすべてだから、耳を強調してみただけです。ただ、もちろん、うさぎの持っている優しさとか従順さとか、そういったイメージもあるんですけれどもね」

「そうですか。しかし、この名前をみて、お客さんから依頼が入ってくるんですか?」

「いや、そういう飛び込みはほとんどありません。大部分が口コミですよ。もともとどこかに広告を出したりしているわけではありませんからね。それと、企業からの申し込みも結構あるんです。要するにそれだけストレスを溜めこんじゃっている社員が一杯いそうだということなんでしょうけどね。福利厚生の一環というわけなんだろうけど、費用も会社持ちで紹介されてくる人も多いですよ。それも結構大手の一流会社なんかもね。」

 僕は、そんな馬鹿なと思いながらも、こうして真面目に話している男の表情を見ていると、それもあながち嘘でもないかもしれない、そんな時代になってきているのか、という気もした。


「ま、そこらへんの話は、もう少しあなたが仕事に慣れてきてからじっくりとすることにしましょう。いずれそういったお客さんの開拓なんかもやってもらえればバイト料ももっと弾むのだけれど、とりあえずはまず一つ一つの仕事をこなして、お客さんに満足してもらえるようになることです」

「それは、そうでしょうね」

「そうです。まず、いろいろな依頼はすべて僕のところに入ってくる。そうして、僕はその依頼内容や依頼者のおおよその情報を得て、登録してあるメンバーの中から適当な人を選んで連絡を取り、時間の打ち合わせをします。だから、あなたとしては、とりあえず今日は登録だけして帰ってもらって、あとは連絡を待っていてくれればいい。あ、そうそう、留守番電話はありますね」

「はい。しかし、こちらの都合なんかはどうなるのですか?」

「もちろん、できるだけ都合を付けてクライアントに合わせてもらいます。しかし、どうしても不可能なものは仕方がない。ただ、一回断られるたびに僕のほうから紹介する優先順位は低くなっていくから、続くようだと仕事があまり回っていかなくなるかもしれないということは一応了解しておいてください」

「なるほど、合理的なシステムですね」


「これはどうも。で、スケジュールがOKなら僕のほうから具体的な時間と場所を指示しますので、今日このあと渡すうさぎのステッカーを目印としてカバンなり何か持ち物に貼って出掛けてください。最初はうさぎの縫いぐるみを抱いていってもらおうかと思ったのだけど、これはちょっと目立ち過ぎますからね………」

「それはそうでしょう。しかし、どんなところに出向くことになるんですか?」

「それはクライアントの要望によるので、千差万別です。まあ喫茶店か公園というのがオーソドックスなところですが、レストランとか飲み屋とか、場合によってはクライアントの自宅ということもあります。実際、ただ向かい合ったのではなかなか話しずらいし、クライアントとしてもできるだけ自然な形でしゃべりたいというニーズが高いから、最近では食事をしながらというのも多いんです。もちろんその場合の費用はクライアント持ちですから、あなたが心配することはありません」

「服装なんかは?」

「常識的なものであれば構いません。ただ、ケースに因ってはこちらからネクタイ着用を指示するケースはあります。その場合には、スーツの必要はありませんが、ジャケットくらいは用意して置いてください。お持ちですよね?」

「はい」

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