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1-6 「うさぎ倶楽部」のミッション

「まあ、あんまり始めから決め付けちゃってもいけないな。前置きはこのくらいにして、本題に入りましょうか。このうさぎ倶楽部という事業はね、一言で言えば、お客さんの話を聞いてあげる、という仕事なんです」

「話を、聞くんですか?」

「そうです。あなたも、回りの人達を何人か思い浮かべて見れば分かると思うのだけれど、この世の中には自分で本当にしゃべりたいことをしゃべれない人が実に大勢いるんです。それも、一人暮らしで友達もいないとかいうのではなく、家族や職場の仲間に囲まれていながら本当に自分の話を聞いてくれる人がいなくて悩んでいる人は無数にいる。特に困るのは、自分の話をしようと思っているのに人にばかりしゃべられてストレスをためこんじゃったりね。よく飲み屋なんかにもいるでしょう。みんなでしゃべって盛り上がっているのならいいんだけれど、結局その中の一人が相槌の打ちようもない話を延々として回りが白けちゃうような………」

「なるほど」

「そんなふうになってしまうと、もう回りはだれもおもしろくない。形だけの相槌を打ちながらひたすらお開きの時間を待っている人は実に多いんですよ。でも、その中でも重傷なのは、不機嫌そうに押し黙っている人よりは、むしろその場では一緒に盛り上がっている振りのできる人達なんですね。こういう人達というのは自分の自然な感情に反しているから、もっと大きなストレスを実は溜め込んでいる。それに、本当に人の話についていって相槌を打ったり盛り上がったりするのには、ものすごいエネルギーが必要なんです」


「そんなものなんですか……。でも、どんな人だって、そこそこには自分のことをしゃべっているんではないのですか?」

「多少はね。でも、そのこととストレスが溜まっていくこととは別問題なのです。そういう人は、自分のことを語りながらも、どこかでその話の腰を折られるんじゃないかという恐怖感に常に怯えている。そうなるとね、もう決して発散されることはないんですよ」

「はあ……。そういわれてみるとそうかも知れませんね。でも、それはどちらに原因があるんですか? 例えばしゃべりまくる上司に仕えたサラリーマンとか、自己顕示欲の強い先輩に気に入られてしまった新入生とかだったら明らかに被害者だけど、そうとも言い切れない場合もあるかもしれない………」

「そうなんです。さすがにあなたは見込んだ甲斐があった。確かに、そういう状況に追いやられてしまったという意味では本人に原因のない人もいます。しかしそうはいっても、やはりその人自身の資質として、常に弱者側に立たされてしまう人もいます。僕は、会話エネルギーと呼んでいるんですけれど、これが生まれながらにして乏しい人がいる。あと、おもしろいのは、いろいろな連鎖があって、早い話がじゃんけんのようにグーには負けるけれどパーには勝つ、というような関係も有り得るのです。ただ、この世の中には今の例でいえばグーばかりに囲まれて、自分にとってのパ-を見付け出せない人もこれまた大勢いるわけなんです。」

「なるほど。で、その場合のパーの役になるのが仕事なんですか?」

「察しが早いですねえ。そうです。そのとおりです」

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