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1-5 本拠地潜入

 入り口のドアには名刺が張ってあって、そこには「うさぎ倶楽部 代表 松井 一人」という肩書きと名前、それに、片方の耳を折り曲げたうさぎのイラストと住所と電話番号が書いてあった。

 僕は、ドアをノックして、「先ほどお電話したものですが……」といいかけると、中から「あ、どうぞどうぞ。お待ちしていましたよ。」という声が聞こえた。相変わらず優しそうで丁寧な口振りだ。

 ドアを開けると、入ってすぐの部屋は、一応事務所のつもりなのだろうか、畳の上には新聞紙を広げたくらいの広さの低いテーブルが二つ並んでいて、その上には電話機と、そして一時代前のような大きめの型のパソコンが置かれていた。本棚には電話帳や地図のほか、いろいろな紙が無造作に綴じ込まれたファイルが幾つもならんでいた。そして、部屋の隅には小さな扇風機があって、埃っぽい部屋に澱む熱風を掻き回していた。左手の襖にさえぎられた奥のほうが、多分彼のプライベートルームなのだろう。


 その男は、パソコンをいじる手を止めて立ち上がり、襖を少し開け薄汚れた座布団をとってきて僕にすすめると、台所に行って冷蔵庫を開け、一リットルパックからコーラをカップに注いで持って来た。そうして、思い出したように扇風機の首を振らせて僕のところまで風が届くようにしてくれてから改めてパソコンの前に座り、コーラを一口飲むと、やっと口を開いた。

「いやあ、暑いですねえ。ご覧の通りエアコンもないんで、もし暑かったら服を脱いじゃってもかまいませんよ。今日は女の子はたぶん来ないから」

 そう言って、扇風機の風力を強くした。そう思ってみると、彼はすっかりくたびれた感じのTシャツとショートパンツだけをつけていて、拗ね毛の一杯生えた長い足を邪魔そうにしてあぐらをかいていた。ただ、顔のほうは真面目そうで短めの髪をきっちりセットして、そのままスーツでも着せれば一流会社の社員のように見えるのではないかと思った。


「僕もあなたと同じ大学なんですよ。でも、3年も留年した上にもう中退してしまいましたけどね」

「はあ、そうですか」

「なんだか固いなあ。リラックスしてくださいよ。まずはお互いをよく分かり合うところから始めないといけませんからね、そうでしょ?」

「それはそうでしょうけど、どんな仕事なのか分からないのでは、そもそもお世話になるかどうかも分からないのだし………」

「まあまあ、そう焦らずに。じらすつもりじゃないんですけどね、正直なところ、この仕事の説明は難しい。だからこうしてお会いしてじっくりご説明しようとしてるんです。でも大丈夫です。僕だって時間の無駄はしたくないから、これは駄目そうだと思った人には電話の段階でお断りするんです。それは、このうさぎ倶楽部という事業の中身を余り多くの人に知られたくないという意味もあるわけなんだけど、あなたなら多分一緒にやってもらえそうな気がするんですよ」

「………」

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