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1-3 「うさぎ倶楽部」との遭遇

 しばらく行くと、古い二階建てのアパートの窓に内側から紙が貼ってあって、そこに「アルバイト募集! 時給千五百円」と書いてあるのが目に止まった。時給千五百円は悪くない。どうせ暇でやることもないのだから久々にバイトでもしてみようか。時給はともかく、この空白の時間をふさぐにはバイトというのはなかなかいい案だし、特にそれがおもしろそうな仕事だったらもう申し分はない。

 だが、その貼紙だけでは、どんな仕事なのか見当も付かない。近づいてみると、その紙の一番下には「うさぎ倶楽部」と書いてあって、電話番号が添えられていたが、それ以外のことは何も分からない。「うさぎ倶楽部」だって? なんだか得体の知れない名前だが、怪しげなお店にでも関係があるのだろうか。しかしそれにしては時給が安すぎるような気もするし、大体こんな裏通りのぼろアパートはそぐわない。


 僕は、とにかくそのとき差し当たってやることもなかったし、そのまま自分の部屋に帰るには早すぎたし、なによりも、恵美との会話が引き起こした不快感を取り除いて気分を立て直すためのなんらかのイベントというか刺激が必要だと思っていた。そんなわけだから、実際にバイトをやるかどうかは別にして、「うさぎ倶楽部」がどんなもので、何をすれば千五百円になるのか聞いてみるだけでもおもしろそうな気がした。ただ、いきなりそのアパートに入っていくのも気が引けたので、電話番号をメモして、近くの公衆電話から電話を入れてみることにした。


 まったく物好きだな、などと思いながら電話をかけ、何と言って話しを始めようかと迷っていると、二回目の呼び出し音が鳴り終わる前に受話器が外された。

「もしもし、松井です」

 優しそうな感じの男の声だ。しかし、間違えたのだろうか。

「え? あの………」

「あ、失礼いたしました。うさぎ倶楽部におかけですね?」

「あ、……はい……」

「どうも、ごめんなさい。私がうさぎ倶楽部代表の松井と申します」

 ずいぶん丁寧な物腰の男だ。僕は少し安心した。

「あ、そうだったんですか。実はアルバイト募集という貼紙を見てお電話してるんですけど、そもそもどんな仕事なのかまったく分からないし、それに時間や期間についてもちょっとお伺いしたいと思いまして………」

「そうですか。しかし、申し訳ないけれど、電話では仕事の内容はお話していないんです。もし興味があって仕事をやってみる気もあるんだったら、話を聞きに来られませんか? A大の学生さんでしょう? 多分この近くから電話してるんだろうし、もう夏休みだから時間はたっぷりあるでしょう」

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