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3‐3 二つ目の仕事

「はい、うさぎ倶楽部でございます」

 今までとは打って変わったような丁寧な声だ。声のトーンも一オクターブくらい高いんじゃないだろうか。だがそれもすぐ地声に戻っていった。

「はい…………。え? 松井さんは留守よ。私は佐々木ですけど……………。え? 何ですって? 行けない?…………。どうしてよ。……………え? どうするつもりなの? ………………そう。ちょっと理解に苦しむけれど、今は議論していても仕方ないわね。…………ちょっと待ってね」

 女はそう言うと、受話器の口を手で押さえてから僕のほうを振り向いた。


「あなた、急だけど今日の三時、あいてる? 一時間でいいらしいんだけど」

 その言い方には、ほとんど有無を言わせないような迫力があった。どうもメンバーの一人が何かの事情で今日急に行けなくなったという連絡で、僕をピンチヒッターにしようと思ったのだろう。それはいいのだが、あまりに話が一方的で、なんとなくこのまま即答でOKする気にもなれなかった。


「え?、まあ時間は一応あいてますけど、でも松井さんは初心者には適性も考えて仕事を選んで回すとか言っていたし………」

「なに言ってるのよ。緊急事態なのよ。スケジュールさえよければお願いするわ!」

 彼女はそう決め付けると、電話に向かって「分かったわ。とりあえず時間や場所を教えて頂戴!」と言ってメモを取っている。


 僕は、早速もう一仕事できるという喜びがないわけではなかったが、この女に一方的に運ばれている不愉快さが入り交じって、複雑な思いだった。

 どうしてこの女は自分で行こうとしないのだろう、などと思っていると、ちょうど電話を終わった佐々木がこちらを向いて言った。

「なんだか一方的に決めちゃったみたいでごめんなさい。でも私はこれから松井さんと営業に行く予定になっているし、なんといってもこの仕事はクライアントをすっぽかすわけにはいかないのよ。わかるでしょ? 松井さんがここにいても同じ判断をしたと思うわ。だから、よろしくお願いしたいの。いいかしら?」

 ここまで言われたらもう文句を言うことはない。だったら最初からそういう言い方をすればいいのにと思いながらメモを受けとった。

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