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MOTIF  作者: 崇宮ナツメ
第1章
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2話 非日常という日常

 あの告白のあと、僕と美愛は疲れていたのでとりあえず帰ることにした。

「ねぇ~、シン~?」

「何?」

「ふふっ、呼んでみただけ♪」

「…考え事してるんだから、そういうのはやめていただきたい」

「えぇ~?恋人だよ?カップルだよ?付き合ってるんだよボクたち!これぐらいやらないと!というかテンプレだよ!?」

「さっきまで殺し合ってた相手とよくそんな事しようと思うな」

 興奮気味な美愛に僕は冷静なツッコミを入れる。

「そりゃあ、そうなんだけど…さ、何というか…、良いんだよ。シンだから!」

「そりゃどーも」

 そう返すと美愛は機嫌が良さそうにえへへ…、と笑う。

「とか油断させておいて、手をつないだときに能力発動で殺される!…とかいうのは無しだからな?」

 俺がそう言ってからかうと今度は顔をプクーッと膨らませた。

「もう!どれだけ信用無いのさ、ボクは!」

「悪い悪い…。あとで好きなものおごってやるから怒るなよ」

「ホント!?じゃあ、ハンバーグとカレーライスとチャーハンとそれからそれから…」

「た、ただし、僕の財布とも相談しながらな!」

 どれだけ食べるつもりだよ、コイツは。

「分かってる、分かってる。心配しなくても大丈夫だって!」

 その後、美愛は有言実行する訳もなく、僕の所持金が6円になるまで食べ続けた。そしてその帰り道、僕達は今後のことについて話し合った。補足しておくけど、今後のことってのは能力(モチーフ)のことについてだからそこのところ勘違いしないように!

「美愛は僕以外の他の能力者(モチーフホルダー)を知ってる?」

「知らないよ。ボクがシンが能力者だって知ったのも、教えてもらっただけだし」

「教えてもらった?誰に?」

「知らないよ。メールが送られてきたんだけど、相手の名前がどうみても本名じゃないし、ほら」

 そう言って美愛は僕に送られてきたというメールを見せた。

「『Z』?確かにこれは本名じゃないし、第一、名前かこれ?」

「ボクもよくわからないんだよね~」

「ま、いいか。時間も遅いし、そろそろ帰ろう」

「うん、そうだね」


 僕は帰宅したあとも他の能力について考えていた。

「やっぱり神話かな~」

 僕のイザナギも美愛のイザナミも日本神話の神々だ。

「楓はタロットもあるとか言ってたな。じゃあ、《(スター)》とか《戦車(チャリオット)》とかもあるのかな」

 ジョ○ョかよ!?と心の中でツッコミを入れた。

「強いのは、やっぱ神の名前がついた能力だよな…。ゼウスとかシヴァとかアマテラスとか」

 今日は疲れたし、もう寝た方が良さそうだ。

「結局まとまらなかったな…。ふぁ~あ、寝るか…」

 そこで僕はスマホにメールが届いていることに気づいた。だが、疲れていた僕はそのまま寝てしまった。


 次の朝目を覚ますと、いい匂いが僕の鼻孔をくすぐった。

「ん?何の匂いだ?台所の方かな?」

 気になって台所を覗くと、そこには女の子が鼻歌まじりに料理をしていた。

「えーと、どちら様?」

「ん?あっ、起きたんだ!慎兄、おはよう!」

「ん、おはよう。…じゃなくて!君は誰なんだ!?」

「えっ、私のこと覚えてないの!?そうかぁ、前に会ったの小1のときだもんね~。7年も経てば忘れるよね~」

 少し悲しげな顔をしたと思うと、今後は笑顔で僕の方に向き直った。

「じゃあ、自己紹介するね?私は東雲佳奈!慎兄のいとこにあたるのかな?」

「えっ!?君があの佳奈なのか?」

「えへへ、驚いた?可愛くなったかな?」

「なったなった。ものすごく可愛い」

「ありがとー!そうだ慎兄、朝ご飯作ったからどうぞ!」

「おう、サンキュー。いただきます!」

 僕は早速佳奈の作った卵焼きを食べて見た。

「うまい」

「ホント!?」

「ああ、超うまい。お世辞抜きで」

「良かった~!上手にできたか心配だったんだよね~!はい、お味噌汁」

「ん、サンキュー。お、味噌汁もうまい」

「そうそう、慎兄!」

「何だ?」

「美愛姉とはどこまでいったの?」

「ゲホッ、ゲホッ…」

「だ、大丈夫!?」

「あ、ああ、大丈夫。突然何てこと聞くんだよ?」

 そういえば佳奈も美愛とは面識あったっけな。

「え~、気になるよ~」

「あー、遅刻するからそろそろ行くぞ?」

「待って、私も行く!」

 食器類の片付けを終えると僕と佳奈は家を出た。

「佳奈はどこの学校に行くんだ?」

春夏秋冬(ひととせ)学園の中等部だよ」

「じゃあ、同じか。僕は高等部だけど」

 歩いていくと、美愛と合流する。

「おはよう、シン!あれ?そこにいるのは誰?」

「おはよう美愛。ほら、再自己紹介しとけよ。分からないだろ?」

「あ、そうだね!東雲佳奈です!久しぶり、美愛姉!」

「えっ、佳奈ちゃん!?全然分かんなかったよ!可愛くなったね!」

「ありがとうございます!あ、今日から中等部に入るのでよろしくお願いします、先輩!」

「うん、よろしくね!」

「そうそう、2人に大事な話があったんだった!」

 そう言うと、佳奈は急に真面目な顔になってこう言った。

「慎兄も美愛姉も、能力者(モチーフホルダー)になったのは最近でしょ?だから能力者としては私が先輩だからね!」

「「……は?」」

 コイツ何て言った?能力者としては先輩…?

「佳奈、お前もしかして能力者(モチーフホルダー)なのか?」

「そーだよー」

「軽いな、お前!」

「だって、私の《天照大神(アマテラス)》は強いもんねー」

「アマテラスって、日本神話の最高神かよ!僕と美愛よりも上かよ!」

「まあねー。ちなみに能力の内容は、小さい太陽を作ったり、相手の能力を見たりできるんだよー」

「太陽を作るとか桁違いじゃないか!あと、相手の能力が分かるのってチートじゃん!」

「それはそうと、私ね、慎兄と美愛姉に手伝ってほしいの」

「何を?」

「今、能力者の中でも危険視されている、『オリンポス12柱』の鎮圧」

「オリンポス?ってことはギリシャ神話の神々ってことか?ゼウスとか」

「そうそう。アイツら放っておくと戦争起こしかねないから」

「で?そのメンバーはわかってるのか?」

「1人も!」

「おい」

「しょうがないじゃん!噂になるものの、名前とか能力の詳細はなぜか謎なんだよねー」

「だから能力者の多い春夏秋冬(ひととせ)に入ったのか。アマテラスの能力があれば相手の能力も分かるし」

「そういうこと!じゃあ遅刻しちゃうからもう行くね!また放課後~!」


「ねぇ、シン。どうするの?」

「やることがないし、手伝ってやろうと思ってる。戦争になるのも嫌だしな」

「そだね。ボクも手伝うよ」

「じゃあ、そういうことで。さあ、学校行こうか!」

「うん!」


 ここから、僕らの本当の戦いが始まる。そう思うと、僕は胸の高鳴りを押さえることができなかった。


続く

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