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MOTIF  作者: 崇宮ナツメ
第1章
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17話 戦いの終わり

「さっさと終わらせよう」

「ふん、少しは楽しませてくれよ?」

「余裕かましていられるのも今のうちだ。落雷、雷道に」

 慎の放った雷は雷道に襲いかかり、奴を焼き尽くす……ことはなかった。

「その程度の速さで俺を捉えられると思うな」

「速いな。電気を流して反応を早めているのか」

「それくらいで驚いているようでは俺を楽しませるには至らんな」

「別に驚いてない…よ!」

「遅い!」

 慎はとっさに殴りかかるが、これも簡単に避けられてしまう。

「この程度とは残念だ。ここで終わらせてやろう」

 そう言って雷道は空に手をかざした。

「弱者を穿て、ケラウノス」

「おいおい、これは冗談抜きでヤバいな…」

 雷道の頭上には巨大な雷の槍が生成された。

「さらばだ、東雲慎」

「くっ…」

 雷光は慎に襲いかかり、そして爆ぜた。

「東雲君!」「慎兄!」「慎!」「慎君!」

「東雲慎は死んだ。さて、貴様等に戦う意思はあるか?」

 雷道は余裕の表情で4人を見た。

「慎兄の仇は私が討つ。勝負だよ、雷道くん!」

「佳奈か。いいだろう。いつでも来い」

「お望み通り、すぐに消し飛ばしてやるんだから!…優さん、外のみんなを呼んできて下さい。ここは人数が多い方が…」

「分かった。頼んだよ、佳奈ちゃん!」

 そう言って、優は入り口へ走っていった。

「こっちも行くよ!アルテミス、雷道を消し飛ばせ!」

「ぐぅっ!」

 いきなりの攻撃に雷道はとっさに雷で相殺する。

「もっといくよ!どんどん撃てー!」

 雷道の姿が見えなくなるほどの数のレーザーが撃ち込まれる。

「自分が与えた能力にやられる気分はどうかな、雷道くん?」

「攻撃とは、何のことかな?」

「!?」

 佳奈が後ろを振り向くと、全くの無傷の状態の雷道が立っていた。

「何で!?完璧に撃ち抜いたはずなのに…!」

「レーザー程度の速さの攻撃なら、簡単に避けることが出来る」

「そんな、むちゃくちゃだ…」

 佳奈は圧倒的な実力差に、膝をついてしまう。

「シン!みんな!大丈夫!?」

「お兄ちゃん!」

 そこに外にいた待機班のメンバーが駆けつける。

「みんな…」

「佳奈ちゃんどうしたの!?」

「美愛姉、私ダメだよ。こんなの勝てる訳ない…」

「何言ってるの!シンは絶対戻ってくる!だから佳奈ちゃんも諦めないで!」

「でも私の能力、全然通じないし…」

天照大神(アマテラス)と組み合わせることはできないの?」

「まだ試したことないけど…、分かった、やってみるよ!」

「うん、シンのことは任せて!」

 美愛に勇気づけられた佳奈は再び雷道に向かった。

「話は済んだか?」

「うん。ここからが本番だよ、雷道くん」

「それは楽しみだ。来るがいい」

「いくよ!中二病絶賛発症中の私の力!」

 佳奈は手を前に出し、何かを唱え始めた。

「我は太陽と月の加護を受けし者。太陽よ、紅蓮の炎を我に与えよ。月よ、闇を照らす輝きを我に与えよ」

 その後も佳奈の中二病全開の詠唱は続くと思いきや…?

「あー、もう!面倒だから以下省略!解き放て!プロミネンス・レイ!!」

「ぐああああああ!?」

 炎を纏った、極太の光の柱が雷道を飲み込んだ。

「や、やった…?」

「佳奈ちゃん!油断しないで!」

「え?…きゃああああ!?」

 その瞬間、佳奈は雷光に襲われた。

「雷道…くん、まだ…生きて…」

「この程度で、この程度で俺を倒せるか…。俺の覚悟を、なめるな…!この戦い、俺の勝ちだ。貴様等は今ここで終われ!」

「いーや、まだ終わらないな」

「その声は…」

 雷道は立ち上がるはずのない者が自分の前に再びたちはだかるのを見た。

「美愛たちが見ているんだ。僕も寝てはいられないよ」

「東雲…慎!」

 東雲慎は一度死んだことを感じさせないほど晴れやかな顔で立っていた。

「さてと、逆襲開始だ。これからお前を病院送りにするけど、どうされたい?」

「殺さないのか。貴様は…まだ甘いな」

「それ答え?よく分かんないから新しい方、試してみるか」

 慎がそう言うと、彼の身体が黒いオーラに包まれる。

「こうなったら病院送りじゃ済まないかもな。この能力(モチーフ)は制御できないんだ」

 慎の話を聞いた美愛が楓に尋ねる。

「ねえ、楓ちゃん?慎に何をしたの?」

「美愛お姉ちゃんは知らないと思うけど、イザナミの能力は、自分が殺した人じゃなきゃ蘇生できないんだよ。だから私も、雷道が佳奈ちゃんにやったようにしたんだ」

「つまり、どういうこと?」

「新たな能力を与え、生命力を高めることで生存させる。今回お兄ちゃんに与えたのは、私が与えられる中で最も凶悪な能力。美愛お姉ちゃんも名前は聞いたことはあると思うよ?その名も…」

「僕をここまで怒らせたことを後悔しろ。運が良かったら見舞いに行ってやるよ。これが僕の新たな能力だ」

 慎が纏う黒いオーラが増幅する。

「敵を喰らえ、《ルシファー》」

 慎が呟くように言うと、黒い奔流が雷道を飲み込んだ。

「なんだ!なんなんだこれは!」

「さあ?僕にもよく分からないよ」

「ふ、ふざけるなああああ!ぐああああああ!」

 雷道を襲っていたどす黒い『何か』が消え去ると、そこには血塗れになった雷道が倒れていた。

「これが僕の『闇』だよ」

 慎から発せられていた黒いオーラは消え、突然慎は倒れてしまった。

「シン!シン!誰か救急車を!」

 こうして僕…いや、僕らの戦いは終わった。雷道と一緒に病院に搬送されたとき、僕達は2人とも意識不明の状態となっていた。


 1ヶ月後…。

 僕は病院のベッドで目を覚ました。

「ここは、病院か?そうか、あの戦いで僕は…」

 トイレに行こうと廊下を歩いていると、話し声が聞こえて来た。

「シン、まだ目が覚めないみたい」

「雷道くんもね。2人ともあの日からずっと病院のベッドで眠ってる」

(…?この声もしかして…)

 どうやらその声はトイレを過ぎた向こうの廊下から聞こえてくるようだ。

「きっと、私が意識不明だったときもお兄ちゃんはこんな気持ちだったんだろうな…」

「雷道は別としても、慎か眠ったままなのは、あの能力(モチーフ)のせいだろ?どうなんだ、楓?」

 僕はその人物達。美愛、佳奈、透、夏希の話を聞いていた。

「うーん。与えた本人が言うのもなんだけど、私もあの能力のことはよく分からないんですよね…。すいません、透さん」

「いや、分からないならいいんだけど」

「まあ、分からないことは引きずっても意味ないよ。頑張ろうよみんな。慎が帰ってきたとき、みんなでおかえりって言えるように」

「おおー、なんかいいこと言ったね」

「もー、夏希!からかわないでよ!」

「あはは、ごめんごめん。…でも、美愛の言うとおりだね。慎だって、笑顔で迎えられた方がうれしいだろうし」

「そうですね。慎兄も喜びますよ」

 さて、そろそろ帰ろうか。僕のいるべきところに。

「みんな、楽しそうに何話してるんだ?僕も混ぜてくれよ!」

 今度こそ、僕達の日常が始まる…!


続く

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