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MOTIF  作者: 崇宮ナツメ
第1章
17/20

15話 続く日常

ピンポーン。

 学校に行く支度をしていたとき、いきなりインターホンが鳴った。

「ん?こんな朝早くに誰だ?」

「シン~?おはよ~!」

「美愛!?なんでお前が…」

「えっと、それはね…」

「私が会いたいって言ったからだよ~」

 美愛の後ろから見知らぬ人が出てきた。

「え、えっと…、あなたは?」

「私は梶野悠架。去年の卒業生で、オリンポス12ヘファイストス能力者(モチーフホルダー)だよ」

「へぇ~、あなたもオリンポスの能力者なんですね」

「あれぇ?意外と反応薄め?」

「ほ、他のオリンポスの能力者にもいい人はいましたから…」

 梶野先輩が僕の顔を覗き込んでくる。…ちょっ、近い!顔近いって!

 そんな僕の反応を梶野先輩は楽しんでいるようだった。しかし、ふてくされた顔の人が約1名。

「…シン?今ちょっとドキドキしたでしょ?」

 ご立腹ですか美愛さん?というか、そんな話し方できたんだ~。でも、彼氏的にはあまり好きじゃないかな?僕は笑ってる美愛の方が好きだよ。う~ん、でもやっぱり彼女のことはどんな一面も愛するべきなのかな?…そ、そんなことより、とりあえずは自分の命を最優先にするための言い訳を…、

「ない!断じてないぞ!」

 …言い訳無理だ~。だって事実だもん!

 すると梶野先輩は困った顔でこんなことを言ってきた。

「え~、ホントぉ?でもごめんね~?私、もう彼氏いるから~」

「へえ、そうなんですか…。って、違うって言ってるじゃないですか!」

「冗談だよ~。…あ、でも彼氏いるってのはホントね」

「あの、悠架さん?ボク達、そろそろ学校に…」

「え?あぁ、そっか。じゃあ行ってらっしゃ~い。私は家に帰るからね」

「はい。ではまた…」

「あ。昨日の美愛ちゃん、可愛かったよぉ~」

「昨日?」

 何それ?すごい気になる。

「な、ななな何言ってるんですか!?やめてください!」

「あはは、ごめんね~。じゃあまた後でね~」

 そう言って、梶野先輩は帰って行った。

「な、なんか変な人だな…」

「やっぱそう思うよね…。あれ?そういえば葦原先輩はどうしたんだろ?」

「ん?優先輩がどうしたって?」

「えっと、悠架さんは優さんの

家に居候してるんだよ。昨日、ボクも泊まったんだよ」

「へぇ~。じゃあさっき言ってた彼氏ってのは優先輩のことか」

「うん、多分ね」

「慎兄、美愛姉?遅刻しちゃうよ~?」

「お兄ちゃん、早く早く~!」

 家の前ではカバンを持った佳奈と楓が待っていた。

「はいはい、今行くっての。ほら、行こう。美愛」

「うん!」

 僕達はダッシュで学校へと向かった。急いで教室に入ると、横から声をかけられた。

「おはよう、2人とも」

「全く、クラス委員なのにあたし達よりも遅いなんてどういうこと?」

「お、篠宮か。おはよう、学校来れたんだな。」

「約束したからね。僕、楽しみで眠れなかったよ…」

「ははっ、子供かよ…」

「ちょっと~、あたしのことは無視?」

 ふてくされたように琳音が言う。

「別に無視なんてしてないって。悪かったよ。おはよう、琳音」

「うん、おはよっ」

「ねえねえ、東雲くん?」

「ん?どうした?」

「名字だと変な感じだし、私のこと夏希って、名前で呼んでくれない?」

「あ、そうだな。じゃあ僕のことも慎でいいよ」

「うん。じゃあよろしく、慎!」

「ああ、よろしく。…おっと、ホームルーム始まるぞ」

「時間だぞー、席に着けー!」

 チャイムと同時に先生が教室に入ってきた。

「お、篠宮は今日から登校か。…やっぱり女だったんだな」

「はい!…ていうか、先生?そういうの、セクハラじゃないですか?」

「あー、すまないな。まあ、あれだ。今日から篠宮もクラスメートだ。仲良くしろよ?篠宮も分からないことがあったら他のヤツに聞けよ?」

「はーい!」

「分かりましたー!」

「了解でーす!」

「よろしくね、夏希ちゃん!」

 クラスのみんなが騒ぎ出した。

「はいはい、騒ぐなよ…。質問はホームルームが終わってから個人的にな。じゃあ次の話だが…」

 ホームルームが終わると、夏希の席には多くのクラスメートが押し寄せ質問を繰り返していた。

「夏希、人気者だなぁ~。あたしが転校してきたときはこんなじゃなかったのに…」

「琳音、もしかして嫉妬してるのか?」

「別に~?あたしはそんな小さい人間じゃないもん」

「はいはい…。にしても、初日からこんなんで大丈夫なのか?」

「ん~、少しはいいんじゃない?それに…ほら、なんか見てるの楽しいし」

「やっぱお前、嫉妬してるだろ…?」

 今日一日、夏希は本当に人気者だった。昼休みには他のクラスからも人が来て、ウチの教室は大騒ぎだった。

 そして放課後…。

「はぁ…、疲れた。こんなに他人と話したの久しぶりだよ」

「お疲れ。本当に大変だったな」

「でも夏希、結構楽しそうに見えたけど?」

「うーん、琳音の言う通りかも。いつもと違う環境だったし…。うん、楽しかったよ」

「東雲君いる?」

 僕は呼ばれた方を見ると、教室の入口に女モードの優先輩が立っていた。

「優先輩?なんか用ですか?」

「なんかこのクラスに能力者がいるって聞いたから、東雲君に紹介してもらおうと思ってね」

「そうですか。じゃあ紹介します。えーと、今日から学校に復帰した…」

「し、篠宮夏希です。能力(モチーフ)は《ドッペルゲンガー》。よろしくお願いします…」

「篠宮さん、ね。私は葦原優。《アテナ》の能力者なの。よろしくね」

「そういえば優先輩、夏希に何か用ですか?」

「そうね、うっかりしてたわ。今日は篠宮さん、あなたに私達の仲間になってもらいたくて来たの」

「え!?じゃあ夏希も一緒にオリンポスと…?」

「ええ。まあそれは、本人の意志によるけど…」

「あの、何の話ですか?」

 僕は夏希に今までの戦いの事を話した。

「…そんなことしてたんだ。分かった。僕も手伝うよ」

「で、でも危険だぞ?ゼウス…雷道なんて、平気で人を殺すようなヤツだ!」

「実際に何人も殺してるんだよね。危険なのは分かってるよ…」

「だったら…!」

「だからこそ、だよ。私だって過去にお父さんとお母さんを自分の手で殺したんだ。人を殺したときの、あの空っぽになるような感じ。私は知ってるから…、だから、その人を止めたい…、止めなきゃいけないって、そう思ったから。だから私は戦うよ」

「そう…か。分かった。一緒に戦おう」

「うん。それと、琳音?」

「ふぇ!?」

「り、琳音?」

 琳音が教室に入ってくる。

「き、気づいてたの?」

「うん。琳音もよろしくね。一緒に…」

「ん?琳音は一緒に戦ってはいないぞ?」

「そ、そうなの!?僕、てっきり…」

「い、いいよ。あたしも手伝う」

「琳音もか!?」

「だってあたし、夏希と一緒にいるって決めたし。それに、慎君達には借りもあるしね」

「だ、そうですけど…」

 僕は優先輩に意見を求めてみる。

「いいんじゃないかしら。戦力は多いに越したことはないし」

「シン~?クラス委員の仕事終わったよ~!…って、優さん!?今日は女の子…!」

 今度は仕事を終えた美愛が入ってきた。

「四条さんじゃない。昨日の夜は大変だったわね」

「どうして助けてくれなかったんですか…。大変だったんですよ?」

「ごめんなさいね。さすがに私もあそこに入る勇気はなかったみたい…」

「な、なあ?朝から気になってるんだけど、昨日の夜何かあったんだ?優先輩の家に泊まったらしいけど…」

「うぅ~、シンは知らなくていいの!」

「そうよね。あんな恥ずかしい姿、見られたくないものね」

「だから気になるんだって!頼みます!教えてください!」

「ねえ、シン?」

 その瞬間、僕の背筋がゾクッとする感覚に襲われた。…これはあれだ。朝にも感じたあの感じ。恐る恐る顔を上げると、朝と全く同じ顔をした美愛がいた。

「あ、あの美愛さん?どうなされたんですか!?もしかして、いや、もしかしなくても怒ってますよね?」

「ん~、何のこと?別に怒ってないよ~?」

 嘘だ。絶対に嘘だ。某アニメの女の子ばりに嘘だッ!って叫びそうになったけど、それをしたら絶対に一度死を味わうことになるのでやめておく。

「さ、さあ!じゃあそろそろ帰ろうか!」

「そうだね。私も初日で疲れたし…」

「あ、ああ。じゃあまた明日な!み、美愛も気をつけて帰れよ~!」

「あ、シン!?ボクも一緒に帰るよ~!」


 その夜、篠宮家…。

 ピンポーン。

「はいはーい。どなたですか?」

「あ、あの、篠宮夏希さんですか?」

 インターホンの映像を見ると、中等部の制服を着た少女の姿が映し出されていた。私は玄関のドアを開けて、その子を中に入れた。

「あなた名前は?私に何か用?」

「私は、東雲佳奈、といいます。あの…少しお話したくて…」

 ん?慎兄?慎…、慎…、東雲…?あれ?

「も、もしかして、慎の妹さん!?」

「い、いえ、私は慎兄の親戚です。妹はまた別に。…っていうか、また女の子の友達増えてるし。ハーレムでも作る気なのかな、慎兄は…」

「ん?何か言った?」

「い、いえ、何でも…」

「で、お話しって何?」

「えっと、特に話題は決まってないんですけど…。あ、そうだ!慎兄のこと、どう思ってますか?」

「うーん…。いい人だと思うよ。人殺しの僕を受け入れてくれたし。何より、琳音と今みたいな関係でいられるのも慎のおかげだし…」

「人殺し…ですか?」

「うん。ちょっと、ね。過去に色々あって、自分の両親、あと、琳音の両親も殺しちゃったんだ」

「でも、南雲先輩とは…」

「うん。仲良くやってるよ?慎のおかげだね。あのとき慎が叫んでくれなきゃ今ごろは…」

「そうですか…。あ、あの!一緒に戦ってくれるんですよね?こ、これからもよろしくお願いします…」

「うん、よろしくね。…あ、もうこんな時間だしそろそろ帰った方がいいんじゃない?話なら学校でもできるしさ」

「は、はい。ありがとうございました…。じゃあまた学校で…!」

「うん。バイバイ」

「はい。お邪魔しました!」

 バタン。

「東雲…佳奈ちゃんか…。ふぅ、今日は疲れちゃったし、もう寝よっかな。明日も楽しい日になるといいな…」


続く

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