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MOTIF  作者: 崇宮ナツメ
第1章
16/20

14話 美愛のターン

 慎達が篠宮家にいる頃、春夏秋冬(ひととせ)学園の生徒会室では…。

 オリンポス12柱のリーダー、神崎雷道は目の前に転がった3人の死体を見て溜め息をついた。

「3人、同志が減ったな…」

「あの…、お言葉ですが雷道先輩?ご自分で殺したのでは…?」

 丁寧な口調でツッコミを入れる少女、東雲佳奈は雷道の様子を見て溜め息をつく。

「逆らった者には罰を…だ」

「でもこれでこちら側の能力者は、ゼウス、ヘファイストス、ポセイドン、アフロディーテ、アルテミスの5人だけですね」

「お前は一体何を言っている?」

「え?」

「2人、だ。貴様とアリアはスパイか…?特に貴様は今まで幾度となく俺達の邪魔をしてきたからな」

「…!ふぅ…、バレてたか~。でも、あと1人は?」

 佳奈はさっきまでと打って変わって、友人と話すような口調で話し始めた。年の差はあるものの砕けた口調で話す様子から、2人が深い関係であることが分かる。

「あと1人はヘファイストス、梶野悠架。アイツは何を考えているか分からない。疑わしい者は切り捨てる主義でな」

「ふぅん…。で、私とアリア先輩はどうするつもり?」

「殺しはしない。奴らのもとにでもどこでも勝手に戻るといい」

 この人にしては意外だな、と佳奈は思った。今まで彼のやってきたことを見てきたからだ。

「あとさぁ、勝手に生徒会室使っちゃっていいの?会長には…」

「安心しろ。後藤には話はしてある。それに、貴様が気にすることではない」

「はいはい…。じゃあ私は慎兄達のもとに帰るよ。また来るね。…あ、後ろから不意打ちとかは無しね?」

「俺はそこまで卑怯じゃない。さっさと行け」

「あ、そうそう。最後に1つ」

「なんだ」

「敵の私にアルテミスの能力を与えたのはなんで?」

「特に理由はないが、あえて挙げるとすれば、おもしろそうだったから…だな」

「へえ…」

「なんだ、そのへえ…ってのは」

「いや、ただ君がそんなことを言うなんて珍しいな~、って思っただけ」

「なんだそれ」

「う~ん、秘密。じゃあ帰るね~」

「もう来るなよ」

 生徒会室の扉を閉めると、佳奈は慎と楓がいる東雲家に向かって足を進めた。


 篠宮家での出来事の後、四条美愛は家路についていた。

 お待たせ~!ようやくヒロイン、美愛ちゃんのターンだよ~!

 ボクは夏希ちゃんの家の帰り、買い物など寄り道をしていたら遅くなってしまった。

「夕ご飯の買い物してたらすっかり遅くなっちゃった。早く帰らなきゃ…」

 急ぎ足で帰ろうとしていると、道の端でしゃがみ込んでいる人を見つけた。

「あのー、何してるんですか?」

「うん?もしかして、私のこと?」

「あなたの名前は知らないけど…、そうです」

「かわいそうな捨て猫がいたからかまってたんだよ。そうだ!あなたも一緒にどう?」

「い、いえ、ボクは早く帰らなきゃいけないので」

「ん~?もうそんな時間?じゃあ、私も一緒に帰ろっと。いいよね?一緒でも。まあ、ダメって言ってもついて行くけど」

「は、はあ…。分かりました」

 変な人だなあ…。

「あ、そうそう。私、梶野悠架。あなたは?」

「四条美愛です」

「美愛ちゃん、ね。そういえば美愛ちゃんの格好、春夏秋冬学園の制服だよね?ってことは私の後輩だね」

「じゃあ梶野先輩は卒業生なんですね」

「堅苦しいから敬語禁止ね。あと、梶野先輩っていうのも。悠架でいいよ」

「は、はい…」

「あと、さっきから気になってたけど、美愛ちゃん、自分のことボクって言うんだね」

「…変、ですか?」

「もー、だから敬語はダメだって。…別に変じゃないと思うよ?むしろ可愛いよ。癒しだよ。今すぐにでも抱きしめたい」

「えぇ~…」

「冗談だよ~。あ、私の家ここだよ」

 話しながら歩いているとすぐに梶野せn…悠架さんの家の前まで来ていた。

「良かったら上がってく?」

「いえ、今日は遅いので…」

 バシャーン!

「きゃあ!」

 また今度にします。と言おうとしたとき、横を通った車が昨日から降っていた雨でできた水たまりの水を飛び散らした。

「…すいません。シャワー借ります」

「おっけー。さあさあ入って入って~」

 ボクは結局、悠架さんの家に上がらせてもらうことになった。

「ただいま~」

「お、おじゃましまーす…」

「おかえり。あれ?お客さん?」

 誰かいるのだろうかと思っていたら、奥から出て来たのは意外な人物だった。

「…ってあれ?四条さん?どうしたの?」

「えぇ!?あ、葦原先輩!?」

「ん~?2人とも知り合い?」

「前に言っただろ?雷道を潰そうとしてるって。四条さんは仲間の一人なんだよ」

「へ~」

「あ、あの…。2人はどういうご関係で?」

「俺が家主で…」

「私が居候だよ~」

 先輩が後輩の家に居候って…。

「と、とりあえずシャワー借りますね!このままだと風邪引きますし!」

「どうぞ~。好きに使って~」

 他の人の家でシャワー浴びるなんて初めてだな…。

「ふぃ~。気持ちいぃ~」

 シャワーの水滴が身体の曲線を撫でるように伝っていく。疲れが取れる感覚の中でボクは少し考えた。

(悠架さん、一体何者なんだろう?あの葦原先輩と同棲してるなんて…、やっぱり能力者だよね?てか、同棲ってことは付き合ってるのかな?さっきはあんなこと言ってたけど、やっぱり…)

「美愛ちゃ~ん?」

「ひゃっ、ひゃい!?」

 あ、急に話しかけられたから変な声出ちゃった!

「着替えの服、ここに置いとくね~」

「は、はい。分かりました。…って、なんで勝手に開けてるんですか!」

「まあまあいいじゃない!…うーん、さっきから思ってたけど、胸おっきいね~」

「やああ!恥ずかしいから見ないで!!」

「あ、そうだ。美愛ちゃん、今日泊まっていかない?着てた服も洗濯しちゃったし、もう遅いし」

「で、でも悪いですよ。シャワーまで借りちゃったし」

「いいのいいの!私も美愛ちゃんがいた方が楽しいし!」

「そこまで言うならお言葉に甘えさせてもらいます」

「わ~い、やった~」

「あの…、悠架さん?」

「ん?何?」

「早く閉めてください!」

「あ、ごめんごめん」

 全くもう!あ~、恥ずかしかった!

 それからボクはしばらく湯船に浸かってから浴室から出た。

「やっほ~。ごはんできてるよ~」

「あ、はい。今行きまーす」

 ボクはドライヤーで髪を乾かしてからテーブルの席についた。

「よし、みんな揃ったな。じゃあ、いただきます」

「「いただきま~す」」

 先輩2人と食べる夕食は不思議と緊張はしなかった。

 料理は葦原先輩の《ヘスティア》の能力で作ったものらしく、どれもおいしかった。

「そういえば悠架さん?悠架さんも能力者なんですよね?」

「うん、そうだよ~。私の能力(モチーフ)は《ヘファイストス》。えーと…、こんな風に武器を出せるんだよ~」

「あ、あのさ、悠架さん?その能力を見せるために俺のこめかみに拳銃を押し当てたりするのはやめてくれないかな?」

「《ヘファイストス》?…ってことは悠架さんは…」

「うん。私もオリンポスの能力者なんだ~。でも安心してね?可愛い美愛ちゃんの敵は私の敵でもあるんだから」

「は、はい。ありがとうございます…」

「あ、そうだ!すっかり忘れてたけど、美愛ちゃん、お家の人に電話しなくていいの?」

「大丈夫ですよ?ボク、一人暮らしですし」

「そーなんだー。あ、そうだ。ねえねえ、一緒に寝ようよ、私のベッドで!」

「えぇ!?なんでですか!」

「だって、美愛ちゃん可愛いし、いろんなところ、柔らかくて、抱いて寝たら気持ちよさそうだから~」

「い、嫌ですよ!あ、葦原先輩!助けて~!」

「ん?ああ。あきらめた方がいいよ。悠架さん、言い出したら聞かないし」

「そ、そんな~!」

「ゆーかちゃんの寝室に1名様ごあんな~い」

「ひっ、ひぇええ!」

「あ、電気消すよ?」

「いやぁぁああ!」

「そーれ、プニプニ」

「ひゃああ!やめてください~!」

「ふむふむ。やはりこっちはなかなかのボリュームですな~。…もみもみ」

「きゃっ!ど、どこ触ってるんですか!やめてください!頼みますからボクを寝かせて~!」

「やれやれ、騒がしいなぁ…」

 寝室から聞こえる叫び声に耳を傾けながら、優はため息をついた。

「いやぁ!た、助けて~!葦原先輩~!」

「…さてと、俺も寝るか」

「さあさあ、美愛ちゃん?今夜は寝かさないぞ~!」

「もう勘弁してくださ~い!」

 こうして四条美愛の夜は更けていく。この後美愛ちゃんがどんなことをされたかは、みなさんのご想像におまかせします。

「や~め~てぇ~~~!」


続く

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