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MOTIF  作者: 崇宮ナツメ
第1章
13/20

11話 再会と裏切りと復讐

 学校に遅刻の連絡をして、僕は楓のもとへと向かった。

「楓、目が覚めたってホントか!?」

 僕は興奮気味に病室の扉を開けた。

「お兄ちゃん、もうちょっと静かにできないの?ここ、病院なんだけど…」

 勢い良く病室に入ると、身体を起こして呆れ顔でこちらを見る妹の姿があった。

「相変わらずそそっかしいんだから…。こうして話すのは久しぶりだね。おはよ、お兄ちゃん」

「ああ、楓。おはよう…。パラレルワールドでも話したけどな」

「そうだったね。でも…お兄ちゃん、その時より雰囲気、変わったよ。何かあったの?」

「あ、ああ。佳奈が…さ、僕達の敵になったんだ。それでちょっと、アイツの考えていることが分からなくなって…」

「大丈夫だよ」

「えっ?」

「お兄ちゃん、佳奈ちゃんを信じようよ。佳奈ちゃんは…大丈夫だから」

「…?ま、いいか。僕も佳奈のことは信じてるしな」

「お兄ちゃん、家に帰るぐらい1人で大丈夫だから、お兄ちゃんは学校に行ってよ。美愛お姉ちゃんも待ってるだろうし…」

「ああ、でも無理はするなよ?今日は早めに帰るから」

「うん。じゃあ行ってらっしゃい!」

 その後楓は看護師さんに付き添われ、僕も一緒に病院を出た。


 学校に着くと、ちょうど昼休みの時間だった。僕は職員室に寄ってから、教室に向かった。

「あっ、シン!おはよー!」

「おはよう、美愛。今日も元気だな」

「うん!で、楓ちゃんどうだった?」

「ああ、楓なら家に帰ったよ。来週から学校にも来るってさ」

「良かった~!ねぇシン、まだご飯食べてないでしょ?」

「ああ。今来たばっかだしな」

「じゃあ、屋上で食べよっ?」

「ああ。じゃあ早く行こう。時間が無くなっちゃうぞ」

「あ、待ってよ~!」


 僕達は急ぎ足で階段を上り、屋上の扉を開けた。

「「あ…」」

 扉を開けた瞬間、僕は2人の人物と目が合った。

「し、慎兄!?なんてタイミングの悪い…」

「あっ、東雲慎君だね?」

 1人は敵対中?の少女。もう1人は先日僕のクラスに転入してきた噂の少女。

「佳奈、お前もここで食ってたのか。それに、えっと…」

「あたしは南雲琳音。よろしくね、東雲君?」

「よろしく、南雲さん」

「クラスメートなんだから、琳音でいいよ」

「じゃあ僕も慎でいいよ。改めてよろしく、琳音」

「うん、よろしくね慎君」

「それはそうと、琳音と佳奈がなんで一緒に?」

「あ、それは南雲先輩が雷の能力者を探してたから…。慎兄、《伊邪那岐(イザナギ)》の能力者じゃん」

「ん?…ってことは琳音も能力者なのか!?」

「そうだよ。あたしも慎君達と同じ能力者なんだ」

「へぇ~。雷の能力者がどうしたって?」

「えっと…、雷の能力ってかっこいいなって思って。見せてもらえるとうれしいんだけど…」

「ああ、分かった。じゃあちょっと下がってろよ」

 僕は能力者だと知られている以上、隠す必要は無いと思い能力を見せてあげることにした。

「行くぞ!落雷!誰もいない場所に落ちろ!」

 僕は雷を落としてみせた。うーん、もうちょい厨ニっぽい出し方ないもんかな…。

「どうだ琳音、これでいいのか?」

「うん、ありがと。慎君は正真正銘、雷の能力者なんだね…」

「ん?ああ。今の見ただろ?」

「うん。じゃあ…、雷の能力者には死んでもらわないとねっ!」

「え…っ?」

 琳音がそう言うと、足下の自分の影に足をとらわれて動けなくなった。

「きゃあっ!何これ…!?」

 僕だけでなく、美愛や佳奈まで足をとらわれ動けなくなっていた。

「ぐっ…!どういうつもりだ、琳音!?」

「あたしには優しい両親がいた…。 家庭は裕福じゃなかったけど、とても幸せだったわ。3年前のあの日、雷を操る能力者にその両親を殺されるまでは!」

「お、おい!僕はそんなことしてないぞ!?大体、僕が能力者になったのは去年だし…」

「うん、知ってるよ」

「じゃあ、なんで!?」

「私は両親を奪ったアイツと同じ、雷の能力者を許すことはできないの。だから、慎君には死んでもらわないといけない…」

「そ、そんなの…」

「ただの八つ当たりだって言いたいんでしょ?でもね、あたしはもう止まることはできない。この復讐はあたしの全てだから…!」

 そう言って琳音は動けなくなった僕に近付いてきた。

「やめろ琳音!まだやり直せるだろ!」

「うるさいよ慎君」

 琳音は自らの影から真っ黒な日本刀のような形状のものを取り出した。

「これはあたしの望み…。慎君は黙って殺されてよ!」

「じゃあ何で…、そんな悲しい顔してんだよ!?」

「…!?」

「お前、ホントは人殺しなんてしたくないんだろ!?だからそんな…」

「うるさい!うるさい!もう死ねえええ!」

 琳音の刀が僕の身体に振り下ろされた、その時…。

「アイギスの…盾!」

 割り込んできた人影に琳音の攻撃は止められた。

「優先輩…?なんでここに?しかもなんで男の姿でアテナの能力を…!?」

「できないことはないんだよ。でもこれ、この後3日くらい寝込むから、よろしく…!」

「邪魔しないでよ!」

「琳音ぇ!!」

「っ!」

 僕は彼女の名前を叫んだ。

「琳音!まだお前は僕を殺してない!だから、戻ってこい!僕の手を取れ!」

 戻ってこい。僕は無意識のうちにそう言っていた。人殺し、犯罪者のサイドから戻ってくるのか、それとももっと別の意味で使ったのか。僕は自分でもその言葉をどういう意味で使ったのか分からなかった。

「…なんでよ」

「え…?」

「なんであなたは自分を殺そうとした相手を許せるの!?」

「いや、前にも殺されそうになったことがあるんだけどさ。僕はそいつとは仲良くやれてるさし…。もっとも、今はそれ以上の関係になっちゃったけどな」

「シン!もうそのことはいいでしょ!ボクだってあの時のことは反省してるんだから…」

「はいはい、悪かったよ…。なっ、琳音?人間いくらでもやり直せるんだよ」

「慎君…」

「ほらっ、早く!」

「…ごめんね。あたし、まだ決められない。でも、気が向いたら…ね。それじゃああたし、先に教室に戻ってるね」

「あ!おい、琳音!」

「シン、待ってあげようよ。琳音ちゃんを信じよう?」

「あ、ああ。そうだな」

「俺も信じようかな」

「あ、あの~」

「ん?なんだよ佳奈」

「私の出番少なくない!?」

「裏切り者に出番があると思ったのか?」

「ぐっ、もういいかな?言っちゃっていいかな、葦原先輩!」

「あのさ、自分で言い出したことなんだから最後までやり抜いてよ…」

「ダメです!もう耐えられません!私は…」

「分かった、分かったよ!あとで放課後にアリアも一緒でいいだろ?」

「もちろんです。ありがとうございます、葦原先輩」

「お礼を言うのはちょっと違うと思うけど、まあいいや。そういうことだから、東雲君、四条さん、またあとで」

「は、はい。分かりました。じゃあまたあとで…」

 一体どんな話を聞かされるんだろう…?


続く

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