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MOTIF  作者: 崇宮ナツメ
第1章
10/20

8話 ニセモノの日常

 朝、楓に起こされた僕は朝ご飯を食べ、学校へ行く支度をしていた。

「あー、今日も平和で何よりだ」

「お兄ちゃ~ん?のんびりしてるのはいいけど、ちょっとは急がないと遅刻しちゃうよ~?」

 玄関の方から楓の声がする。

「ああ、悪い悪い。今行くよ」

 僕と楓は少し急ぎ足で家を出た。

「やあ、東雲君おはよう」

 家を出たところで僕は突然話しかけられた。

「あ…、おはようございます。優先輩」

「おはようございます。葦原先輩!」

「ああ。楓ちゃんもおはよう」

「先輩、風邪治ったんですね」

「ん?あ、ああ…、すっかり元気さ。ところで東雲君?ちょっと話したいことがあるから、昼休みに体育館裏に来てくれない?もちろん1人で」

「は、はい。分かりました…」

「あのー、2人共?遅刻するよ?」

 僕は楓の言葉でハッとした。

「ヤベッ!早く行こう!」

 この後、僕達は全力で走り学校にギリギリ間に合った。


 昼休み…

 僕は優先輩に言われた通り体育館裏に行った。

「それで…何の用ですか?優先輩」

「うーん、まだ君は気づいていないみたいだね」

「…?何のことですか?」

「君はオリンポスって知ってるかい?」

「バカにしないで下さい!僕達が戦っている敵じゃないですか!…って、あれ?」

 朝、僕は今日も平和だと言ったはずだ。だが、つい最近も奴ら、オリンポスの敵と戦った記憶がある。

「良かった。東雲君には改変前の記憶があるみたいだね」

「改変?一体どういうことですか?」

「多分、オリンポス…正確には元オリンポスのメンバーの能力(モチーフ)だ。思い当たる人がいるからね」

「それは一体…」

「ヘラ。他人への能力の付与と、パラレルワールドの作成の2つを能力として持っている。能力者(モチーフホルダー)は君がよ~く知ってる人だよ?」

「その能力…、まさか…!?」

 僕は能力の内容を聞いたとき思い当たる節を見つけた。

「さてと…。あとは君次第だよ、東雲君?」

「はい。僕、アイツのところに行ってきます」

 僕はあの人物がいるであろう、屋上へ向かった。

「はあ、はあ、はあ、はあ…」

「あれ?どうしたの?そんなに息上がって…」

「そうだったんだな。お前がヘラ、か…」

「…っ!?」

「優先輩から聞いたんだ。今回の異変はお前の能力だって。あと一つ、お前の能力は他人に能力を与えること。僕はお前からこの能力をもらったんだ。なあ、楓?」

「ふ、ふふふ。うふふふふ!さすがお兄ちゃんだね!そうだよ、私がヘラの能力者。今回の異変は私がやったの」

「…なんでパラレルワールドなんか作ったんだ?」

「お兄ちゃんが悲しまないようにするためだよ」

「僕が悲しむ…?」

「佳奈ちゃんのこと、昨日のことなのに忘れちゃったの?」

「…くっ!」

「本来なら病院のベッドで寝ているはずの私が自分の足で歩いて、お兄ちゃんの下にたどり着くために…」

「楓…」

「みんなの中で異変に気づいたのはお兄ちゃんと葦原先輩だけ。私の役目も終わったし、そろそろ世界を元に戻すよ」

「ああ。また頭ん中にお前の声が響くのを待ってるよ」

「うん。じゃあ、またね…」

 意識が遠ざかる。どうやら元の世界に戻るようだ。楓が病院で眠り、佳奈がもういない世界…。

「僕が…、がんばらきゃな…!」


 目が覚めると、そこは校門の前だった。元の世界に戻ってきたらしい。

「う…、戻ってきたか…」

「おはよう、東雲君」

「あ、優先輩。って、何で女モード!?」

「いいじゃない。気にすることでもないでしょ?」

「そう…ですね。っていうか、風邪が治ってるのはパラレルワールドから引き継いだんですね」

「まあね。…私が風邪なんて引かなければ、佳奈ちゃんも…」

「先輩、後悔するよりも、僕達がアイツの分まで頑張ればいいんです!だから…」 

「ええそうね。オリンポスと戦えるのは私たちだけだし」

「さて、と。じゃあ今日は帰りますか」

「ええ、そうね」


 改めて戦う決意をした僕だったが、そこからしばらくオリンポスは行動を起こさず、こちらからも不用意な手出しはできず、膠着状態だった。そして、僕達は高校二年生になったのだった。

「…あれから約一年、何もして来ないなんて不自然過ぎませんか、優先輩?」

「それを俺に言われてもねぇ…」

「そういえば、会長…雷道は卒業したんですよね?じゃあもう、手出ししてこないんじゃないですか?」

「いや、雷道先輩は結構な頻度で学校に来てるし、大体彼の影響力が卒業したからってなくなる訳じゃないよ」

「ねえ~、シン?ボクともお話ししない?」

「ん?美愛か。いいよ。じゃあ僕が楓の世界にいたときの話を…」

「へぇ~、そんなことあったんだ~!」

 僕達は戦いから逃げる訳にはいかない。でも今は、今だけは、この心地よい騒がしさを楽しもう。僕はふと、そんなことを思った。


 一方、その頃。生徒会室…

「期待してるぞ、いい報告を待っている」

「了解ですよ、雷道先輩♪」

 新たに動き出したオリンポスの能力者は、笑顔で呟いた。

「一年ぶりかぁ…、楽しみ!待っててね、『慎兄』♪」


続く

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