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MOTIF  作者: 崇宮ナツメ
プロローグ
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序章 日常が壊れた日?

 

 今日は高校の入学式。天気は快晴。せめて明るい気持ちでこの日を迎えたかった。中学時代、成績も悪く、スポーツもできなかった僕はクラスでも『ぱっとしない』『目立たない』存在だった。それでも僕は妹の励ましでここまで頑張って来れた。幼い頃に両親を失った僕にとって妹の存在は大きな励みになった。

 そう、僕が今ここにいるのは『たった1人の家族』のおかげなのだ。だがあの日、高校の合格発表があったあの日。自分の合格を知り大喜びだった僕は一本の電話でどん底にたたき落とされた。妹が交通事故に遭い意識不明。その知らせを聞いた僕は急いで病院に向かった。病院のベッドに横たわる妹は顔も腕も足も傷だらけだった。治療で外傷は目立たなくなったものの、妹はまだ目を覚まさずに眠ったままだった。


「どうしたの、シン?泣いたりして」

 突然話しかけられて驚いた。どうやら気づかないうちに涙が出ていたらしい。

「楓ちゃんのこと、また考えてたの?」

「あ、ああ。ありがとう、美愛」

 自己紹介が遅れた。僕は東雲慎。今年から高校1年生。僕と話すこの少女は四条美愛。中学で僕と仲良くしてくれた数少ない友人の1人で、高校でも同じクラスになった。妹、楓とも仲が良く、よく家に遊びに来て遊んでいた。

 僕は美愛と一緒に教室に入ると、すぐにホームルームが開始。終了後、体育館で入学式が行われた。教室に戻ると担任教師から諸連絡があり、下校となった。

「ところでシン。これからボクとデートなんてどうかな?」

「冗談はよせ」

「冗談じゃないよ!ボクはいつも本気で…」

「分かった分かった。てか、美愛なら僕なんかよりいい奴いるだろ」

「むー、今時ボクっ娘なんて需要の少ない属性、意味ないんだよぉ!」

「お前にはその胸がある。安心しろ」

 ボクっ娘で大きい胸。どこのギャルゲーのキャラだよ、お前。

「シンはいつもそう言うよね?シンのえっち!でも、男の子ってやっぱそういうものなの?」

「そういうもんだろ。男はみんな単純だ」

「シンも男の子だよね?ボクに、その…、魅力とか、感じないのかな?って」

「そりゃもう…。いつもいつも襲ってしまわないように理性を保つのに必死で…」

「もう!シンのえっち!」

「なんでビンタ!?」

 その後僕達は挨拶を交わし、家へと帰った。

「ただいま~、って言っても誰もいないんだよな…」

 数週間前までは元気な返事が返ってきたのにな…。

「さて、とりあえずお見舞いに行かないとな」

 僕は支度をして病院に向かった。


 病室に入ると、眠っている楓の頭を撫でる。

「楓、今日高校の入学式だったんだ。美愛に会ったよ。いつも通り元気だった」

 当然、返事は返って来ない。

「…なぁ、起きろよ!起きてくれよ!楓ぇ…!」

『お兄…ちゃん…?』

「えっ…?」

 聞き間違いか…?楓は眠ったままだし…。

『お兄ちゃん、聞こえる?』

「やっぱり楓!?どうやって話して…」

『ふっふっふっ、頭の中に直接話しかけているのだよ!そうそう、私はまだ死んでないから心配しないで』

「あ、あぁ。でも何で話しかけているんだ?」

『それはね?お兄ちゃんに渡したいものがあるからなの。きっとお兄ちゃんに必要なものだから』

 楓がそう言うと、僕の頭の中にあるイメージが浮かんできた。

「これは…、雷…?『モチーフ』って何だ…?《伊邪那岐(イザナギ)》…?」

『それはお兄ちゃんだけの『能力』。あの学園は危険。きっと、この力が必要になるはずだから』

「能力って何だよ!?それにあの学校が危険ってどういう…」

『モチーフっていうのはその名の通り、能力の内容を象徴するもの。お兄ちゃんみたいに神様の名前だったり、都市伝説の名前だったり、タロットのカード名だったり、いろいろあって、その全てが使用できる能力に関係してるの』

「ちょっと待ってくれ!『モチーフ』がいろいろあるってことは、僕の他にも能力を持った奴がいるってことなのか!?」

『うん。お兄ちゃんの通う学校にはたくさんいる。だから気をつけてね…。じゃあ、そろそろ時間…』

「待っ、待ってくれ!まだ聞きたいことが…」

『バイバイ、またね…』

「楓ぇぇぇえええ!」


 ピヨピヨピヨ…

「う、う~ん?夢?病院にいってその後…、どうしたんだっけ?って、もうこんな時間!?」


『それはお兄ちゃんだけの能力…』


「何だ?これは…、」


『この力が必要になるはずだから…』


「これは、昨日の…。夢じゃ無かったのか?」

 僕は確かめるために力を試す。

(イザナギ…、雷…、落雷…、は危険か?じゃあ、ポ○モンのエレ○ボールみたいなので…、雷球…か…)

「よし、雷球!」

 そういうと、手のひらに手よりも少し大きい雷のボールが出現した。

「うぉ!?本物だ!…でも、どうやって消すんだ?よし、消えろ!」

 手のひらから雷の球は消えた。

「…楓の言ってたのはホントだったのか?じゃあホントに他にも能力者が、しかもあの学校に?」

 いや、不安になるよりも、今は僕だけの力を手に入れたことを喜ぼう。僕は生まれ変わる。そのための力だ。何の取り柄も無い僕の、僕だけの『モチーフ』。

「さあ、行こう。春夏秋冬(ひととせ)学園へ!」


続く

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