254:英雄たちの二年間
【ヤレアッハの塔】――――最上階。
サタンゾアの怨念によって、月が【イデア】へと墜とされそうになった。それを防いだのが《文字使い》と呼ばれる丘村日色と、かつて日色と死闘を演じたアヴォロスである。
最上階に存在する月の制御システムを、サタンゾアの支配から解放するために、日色とアヴォロスは、自身の生命力をすべてエネルギーへと変換させて塔へと注ぎ込むことにした。
傍にいた【イデア】の神――イヴァライデアが必死で止めようとするが、肉体を失い魂だけの存在になっていたイヴァライデアには止める術はなかったのだ。
結局、アヴォロスは意識を失った後も、日色は《文字魔法》を使用していないというのに、背中から金色を翼を出現させ、そのエネルギーで月の墜落を防ぐことができた。
「うっく……ぁ……」
しかし代償は大きかった。サタンゾアとの戦いですでに限界を超えていたはずの日色だが、限界を超えた先の、そのまた先まで力を絞り出してしまったのだ。
金色の翼とともに意識が消失し、日色は静かに床に倒れることになった。
「ヒイロッ!」
日色を受け止めようと手を伸ばすイヴァライデアだが、身体は擦り抜けてしまい日色はそのまま床に。顔は血の気を失い、生気すらもう感じられないような感じだ。
「そ、そんな……! ヒイロッ、しっかりしてっ! ヒイロッ!」
何度も何度も日色の名を叫ぶ。
しかし彼はピクリとも動かない。イヴァライデアの脳裏に最悪の絶望が過ぎる。
(あれだけの力を文字通り出し尽くしたんだもん。もうヒイロは……っ!?)
イヴァライデアは助けを求めるように周囲を見回すが、当然そこには誰もいない。いるのはまだ日色よりは復活の見込みがあるアヴォロスだけだった。
彼もまた全力を出し尽くしたようだが、見た感じ、まだ若干生命力を感じる。
「どうすれば……どうすれば……!?」
このまま放置し続ければ、アヴォロスでさえも死んでしまう可能性がある。すぐに適切な処置を施す必要が求められるが、魂だけの自分ができることなどたかが知れている。
「ヒイロ……アヴォロス……っ」
そこでイヴァライデアは、あるシステムの存在を思い出す。
「そ、そうだ! アレならまだ救える可能性があるはず!」
イヴァライデアは床を擦り抜けて、日色が開放してくれるまで滞在していた《イヴダムの小部屋》へと向かった。
両手を模ったオブジェの上にはベッドがある。そのベッドの上にイヴァライデアは長年眠っていたのだ。
イヴァライデアは、両手をベッドの方に向けて力を込めると、ベッドが徐々にシャボン玉のようなものに変化し、それが二つに割れて、それぞれの手の上にフワフワと浮かぶ。
「あとはここに転移させれば……」
イヴァライデアは再度日色たちのところへ向かう。
ただ彼らの身体を持って運ぶことはできない。イヴァライデアにできることは……。
「……わたしの魂を削ればあるいは……」
死んだように眠っている日色の顔を見つめる。
「――――――絶対に死なせないから」
大きく深呼吸すると、人差し指に意識を集中させる。淡く儚い光が指先にポワッと灯った。そして彼らの手の甲に文字を書く。
「はあはあはあ……良かった…………書けたぁ」
あとは発動するだけ。目を閉じて「発動してっ!」と声を張る。
すると文字から放電現象が放たれた瞬間、彼らの身体がその場から消失した。
目眩がする。しかしここで消えるわけにはいかない。二人がちゃんとあの場へ送られたかどうか確かめる必要があるのだ。
フラフラとしながらも、《イヴダムの小部屋》へと辿り着くと、
「はあはあはあ…………っ!?」
思わず頬が緩む。二人の身体が、それぞれ浮かんでいるシャボン玉の中で浮かんでいた。
「あと……は……、二人の生きる気力……しだ……い……っ」
イヴァライデアは、そのまま床に倒れ、静かに瞼を閉じた。
――――一年後。
ブクブクとシャボン玉の中で気泡が立つ。その中に静かに浮かんでいたアヴォロスは、閉じていた瞼を微かに震わせる。
「……ぅ……っ」
開けた目に飛び込んでくる光に思わず眉をひそめてしまう。
(……身体が温かい。ここは……どこだ?)
まるで長い間、眠っていたような感覚だ。心地好ささえ感じる温もりを全身に感じる。自分はあのまま死んでしまったのだろうかと思って、視線を動かすが、右側に見知った姿を発見する。
(……ヒイ……ロ……っ!?)
それはまさしくヒイロ・オカムラという少年だった。世界を救った英雄。自分の野望を打ち砕き、希望を叶えてくれた好敵手。
(……一体どういうことだ?)
その時、パァンッとアヴォロスが入っていたシャボン玉が割れて手のようなオブジェの上に落下する。
「ぐっ……っ!」
身体が本調子ではないのか、まったく足が言うことを聞かず、踏ん張りも効果がなく四つん這いの格好になってしまう。
「くっ……まるで筋肉が硬直しているかのようだ……!」
ずっとベッドの上で寝たきりになってしまっていたかのごとく。まるで全身が麻痺して身体が言うことを聞かない。
「――――アヴォロスッ!?」
そこへ甲高い声が耳をつく。歯を食いしばりながらも頭を上げて、声の主を探す。すると視界に小さい物体が、空中でユラユラと揺れている現実が飛び込んできた。
「聞こえてる? 見えてる? アヴォロス?」
「…………その姿は……どうした…………イヴァライデア?」
そう、見た目はイヴァライデアで間違いはない。ただアヴォロスが知っている彼女を、縮小したようなミニサイズになってはいるが。
「えっとね……実は」
月を止めた後、彼女が自分の魂を使ってアヴォロスたちを《文字魔法》でここに運んだ。しかしそれには魂そのものを使う必要があった。
何とか無事にアヴォロスたちを、この部屋へ転送させることができたが、反動として殻が『妖精』のように小さくなってしまったという。
「これは魂の大きさに比例した器なの」
「……なるほど。つまりもうその程度しか魂は残されていないということか」
「うん。次に力を使ったら、多分全部消えちゃう……ね」
「なら使わないことだ。せっかく生き残っておるのだからな」
「…………アヴォロス……ううん、アロス、変わったね」
「余はアヴォロスだ。その名は過去に捨てた」
「……そっか」
イヴァライデアが、空からチョコンと床に下りる。
「でも良かった。アヴォロスが復活できて」
「……ヒイロは?」
「ううん。あれから一年経ってるけど、まだウンともスンとも言わない」
「一年だと? そんなに眠っていたのか……」
「それほどあなたたちが使った力が大きかったということ。特にヒイロは、自分の生命力をすべて力に変換したから」
「……だがまだ生きておるのだな?」
「うん。残念ながら一度は肉体の死を迎えてしまったけど、魂はまだ無事だったから。ここはね、わたしとアダムスが作った部屋。魂を繋ぎ留め、永き時を歩めるように作った場所。もうあなたたちは、治癒魔法すら受けつけない身体になっていたから、この中で魂を繋ぎとめて、あとは自己治癒に任せようと思ったの」
それほど危険な状態だったというわけだ。
彼女曰く、あと十数秒、処置が遅れていれば魂すらも消滅していた可能性が高かったという。そうなればもう復活することはできない。
「つまり余やヒイロがまだ生きているのは、貴様のお蔭ということか」
「こんなことしかできなかったけど……」
「……余はもう生きるつもりはなかったのだがな」
「そんなこと言っちゃダメ」
「む?」
「わたしのせいで、たくさん人が死んじゃったから言う資格ないかもしれないけれど、やっぱり生きてる人が、進んで自分の命を蔑ろにするようなことはしちゃ……ダメ」
彼女から、日色の真実――灰倉真紅の生まれ変わりで、日色の母親の望みで【イデア】に召喚されたことなどを聞かされた。
彼女が【イデア】を救うために、かなりの者たちを犠牲にしてきたことは知っていたつもりだ。
だがすべては【イデア】という、一つの世界を守りたいがために行動した結果だった。アヴォロスはそれを責める気にはならない。というよりも責められるわけがない。
自分も同じような道を歩んできたのだから。
「あなたの中に、あの子の魂も……あるのなら、なおさら」
「……気づいておったのか」
アヴォロスは自分の胸に触れる。
『陛下……大好きです。いつも心はお傍に――』
そんな彼女――優花の言葉が聞こえた。
かつて、心臓を貫かれた彼女を生かすために、アヴォロスは自分の《核》を彼女に埋め込んで延命させることができたのだ。
しかし日色との戦いが終着し、もう自分の命がここまでだと悟ったアヴォロスだったが、優花がアヴォロスに《核》を返した。そのせいで彼女は死んでしまったが、アヴォロスは生き永らえることができたのだ。
彼女にもらった命だからこそ、今度は大事に使おうと決めていた。
「余は、『神族』との戦いで、ヒイロのサポートに徹し、この命に代えても勝利をヒイロにとってもらおうとした」
「うん、分かってる」
「余はユウカに生かされた。だから死に際だけは、アイツが誇れるようなことをして散ろうと考えておった」
「……うん」
「この命で守りたかったものを守れた時、初めてユウカやシンクに胸を張って、黄泉の国で会えるかもしれないと……。まあ、散々好き勝手やった余が、シンクたちがいる天へと行けるとは思えぬがな」
いくら平和を手にしようとしていたとはいえ、アヴォロスが進んだ道は死と血が蔓延する大義とも口にできない道であった。真紅たちと同じ黄泉へ行けるとは到底思えない。
「……わたしもね、ヒイロに解放された時から、自分の命はヒイロのために使おうって決めてたの」
「……!」
「赦されないことをいっぱいしたから、せめて最後だけは死んで詫びなきゃって。アヴォロスと同じだね」
「……」
「けどね、ヒイロはずっと心の中で叫んでた。わたしに向かって」
「叫ぶ?」
「うん。――生きろ――って。死んで逃げるなんて卑怯だって。生きてもっと【イデア】をよくして、何もすることがなくなった時、その時に死ねばいいって」
「フッ、あやつらしいな」
ずいぶん難しいことを言ってくれる。
(だが、あやつの言葉は何故か胸に突き刺さる。それは恐らく、あやつが真に思っていることを口に出しているからなのであろうな)
だから言葉に力を感じるのだ。
「だからわたしね、魂だけになっても、何か【イデア】にできることがあると思って探すことにしたの。こうしてまだ生き永らえることができてるんだし、それにはきっと意味があると思うから」
「イヴァライデア…………そうだな。余も拾った命だ。ならこの命、尽きる最後の日まで【イデア】のために使うだけだ」
顔を見合わせると、互いに頬を緩める。
そして二人は気づかなかったが、日色もまた、嬉しそうに口端を上げていたのだった。
――――半年後。
一年も眠っていたせいで硬直していた筋肉だったが、目覚めてリハビリを繰り返し、約三カ月ほどで日常生活に支障がないほど動けるようになっていた。
「ねえ、アヴォロス」
「何だ?」
「アヴォロスは【イデア】に帰らなくていいの?」
「それは何度も聞いてきたであろう。アダムスが開発した転移魔法陣は、サタンゾアが月を支配したせいで作動不可能になってしまっているし、さすがに月から【イデア】に飛ぶ力は余にはない」
「あ、そっか」
そう言いながら、イヴァライデアは空を飛びながらペロペロと棒付きキャンディを舐めている。
「ヒイロが目を覚ませば、奴の魔法でいつでも帰ることはできる。焦りは禁物だ」
「……そうだね。大人だね、アヴォロスは」
「【イデア】の創世記から生きている貴様に言われてもピンとこぬがな」
何といっても、彼女は神なのだから。アヴォロスとは比較にならないほどの時を生きている。
「とにもかくにも、まずはあやつが……む?」
「どうしたのアヴォ……ロ……ス」
アヴォロスの視線が向かう場所は、日色が浮かんでいるシャボン玉がある。彼の瞼が、微かに揺れ、指先もピクリと動き出す。
そして――パァンッとアヴォロスが出現した時と同じように、手のオブジェの上に落ちる日色。
慌ててアヴォロスたちが駆けつける。
「「ヒイロッ!?」」
同時に叫んだ直後――――――――ぎゅるるるるるるるるるるぅぅぅぅっ!
凄まじい地鳴りのような音が響く。どこから? それは…………日色の腹の中からだった。
「うっく…………腹ぁ……減ったぁぁ」
一年半ぶりに復活したと思った直後の第一声がそれとは、つくづく日色らしいと思い、アヴォロスたちは呆れてしまう。
「はぐっ! んぐっ! んくんくんく……ぷはぁ~! はむっ!」
最早アヴォロスとイヴァライデアは、唖然とするしかなかっただろう。目の前で、テーブルの上に出されている食事が、みるみる内に日色の腹の中へと消えていくのだから。
しかも驚くのは、日色もまたアヴォロスの復活時と同じように身体は硬直しているはずなのに、それでも食事をしていることだ。
手足は動かしていない。日色は身体から出した魔力を実体化させて腕の代替として利用しているのだ。
「……余はもう驚かぬぞ。驚いてなるものか。まさか魔力をこのように使うなどと」
「あ、ははは……ヒイロだから……ね」
二人は諦めたように肩を落としている。そんな間にも、魔力で作り上げた六本の腕がテーブルへと伸びて、食べ物を掴んで日色の口へと運んでいく。
「う~む……これは魔力介護とでも呼べる代物なのか……?」
「アヴォロス、真剣に考えないで。頭が痛くなってくる」
日色は別段特別なことをしているつもりなどはない。ただそこに食べ物がある。だが食べさせてもらうのは恥ずかしいし、何より食べる速度が遅くなる。
ならどうする? 自分の魔力を使えばいいじゃない、と思っただけなのだ。
「ふぅぅぅぅぅ~…………食った食ったぁ」
テーブルの上にあった、食べ物がすべて消えた。ちなみにここにある食材は、すべて塔のシステムによって作ることができたもので、あまり味は濃くなく美味しいとは言えないかもしれないが、栄養はしっかりある。
「味はともかく、これで大分落ち着いたな」
「……それは良かったな。それで? 現状は把握しているのか?」
「あ? 何となくな。そこにいるイヴァライデアは、元々オレの中に注ぎ込まれていたイヴァライデアの魂の欠片だから、そいつを通してある程度は知ってる」
「ふむ。それは説明が省けて何よりだ」
「というか、身体がこうまで動かんとはな。まいった」
「まずは身体を慣らすがよい。まあ、起きて早々に魔力をそこまで扱えるのであれば、魔法で治せばいいとは思うが」
「ああ……それは無理だ」
「は?」
アヴォロスだけではなく、イヴァライデアも首を傾げている。
「魔力は確かに自在に引き出せるし、こんなふうにコントロールもできるが……」
指先に魔力を宿して文字を書こうとしても書けない。指を無理矢理魔力で動かしても、また魔力だけを動かして文字を書いても魔法が発動する気配がないのだ。
「この通り、魔法がまったく使えん」
「……どういうことだ、イヴァライデア?」
「……多分、限界を超え過ぎてしまった反動なのかも。しばらくしたら復活はすると思うけれど。いつ戻るかは……」
「そういうことだ。しばらくはここでのんびりだな。まずはこの身体をどうにかしないと」
そうしてアヴォロスよりも短い二カ月ほどで日常生活を自由に送れるくらいにはなったが、まだ魔法を扱うことはできなかった。
日色は塔の中にある資料室に二人を集めて、
「本格的に身体を動かせるようになったから、やっておくことがある」
「なぁに、ヒイロ?」
小さくなったイヴァライデアが可愛らしくコクンと首を傾げている。
「まず《塔の命書》についてはどうなっている?」
「それなら放置のまま。もうシステム自体はヒイロの支配下にあるから、わたしには何もできないもの」
「ふむ。ならまずはそのシステムを破壊して、二度とそんなくだらないものを作れないように施す」
「なら月そのものを消滅させればよいのではないか? 余たちがここから出る時にでも」
「いや、この月って存在に恩恵を受けてる奴もまたいる」
「……! 確かに獣人たちは月から送られる魔力を受け取って、強靭化することが可能だったな。それに他にも魔力の恩恵に与っている生物や植物も多々ある」
「そうだ。それに月がなくなったら、夜に【イデア】を照らす光が小さくなってしまうしな」
無数の星々だけでは地上に届く光量が少なくて暗過ぎる。
「だから月そのものは破壊しない。破壊するのは、どう考えても【イデア】にとって害になるシステムだけだ」
「うん。もう月はヒイロのものだから、好きにするといいと思う」
「言われなくてもするつもりだ。そのために来たんだしな。それで? システムを弄るにはどうしたらいいんだ?」
「ヒイロにはもう知識が流れてるはず。目を閉じて、静かに塔に問いかけてみて」
そう言われて日色は目を閉じる。
すると脳の奥底に定着していた記憶がどんどん溢れ出てきた。
「……なるほどな。これが塔のシステムの概要か」
日色たちは、皆で最上階へ行き、システムをサタンゾアから奪った時と同じ方法で、日色はシャボン玉に両手を沈み込ませた。
すると塔の中に置かれてあった《塔の命書》たちは、次々と霧のように散っていく。
しばらくして、日色は「ふぅ」と溜め息を吐く。
「これで、システムの改ざんは成功だな」
忌々しい《塔の命書》は、ようやく日色の手で最後を迎えることになった。
「他にも不愉快なシステムも改ざんしておこう」
どうやら月からの魔力を使い、魔物たちを興奮させるようなものや、病や呪いなどを振り撒くようなシステムもあり、必要ないので完全に消しておいた。
(ん……独自に進化したシステム……というより世界の流れもあるな。これはそのままにしておくか)
それは自然に発生したもの。生物が進化することも、病や環境も変わっていく流れもすべては自然の摂理。ここを弄るのは違うと思ったので、独自進化したものはそのままにしておくことにした。
「……あ、イヴァライデア」
「なぁに?」
「そういや、オレやミミル、レッカとか、転生体の奴らって《ステータス》はなかったよな? まあ、オレの分はお前が用意してたみたいだが」
「うん。それがどうしたの?」
「《ステータス》は、【イデア】に住む奴ら全員にあった方が便利だと思うんだよ」
「……そう?」
「途中から、オレも自分の《ステータス》を確認できなくなったし、少しレベル上げのモチベーションが下がったからな」
やはり自分が成長しているという実感が分かり易いので、《ステータス》は重宝できるのだ。特に冒険者にとってはありがたいものである。
「確かに『神族』が作り上げた《ステータス》というシステムは便利かもしれぬな」
アヴォロスも同意してくれた。
「うん。あって悪いものじゃないと思うし、ヒイロの好きにして」
日色は、《ステータス》に関するシステムを弄り、神としての権限を使ってすべての者たちに《ステータス》が付与されるようにした。
無論ミミルたちにもだ。
(このシステムだけは面白いし、これだけは作った奴を褒めてやらなきゃな)
これで【ヤレアッハの塔】で行うべきことは終了したはずである。
(あとは魔法が使えるようになれば、いつでも【イデア】に帰れるな)
結局、日色が魔法を使えるようになったのは、それから四カ月も後の話。
日色がサタンゾアを倒してから二年の歳月が経っていた―――。




