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金色の文字使い ~勇者四人に巻き込まれたユニークチート~  作者: 十本スイ
第六章 イデア戦争編

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182/281

182:アヴォロス完全復活

「うおォォォォォォォォッ! ミュアァァァァァァァ~ッ!」

「おおォォォォォォォォッ! ミミルゥゥゥゥゥゥゥ~ッ!」


 今二人のオッサンが涙を流しながら二人の少女に抱きついている。見ようによっては即逮捕~っと日色は叫びたくなるが、この光景はあくまでも不自然さの無い親子同士の感動の対面なのである。

 ミュアたちを救った日色は、すぐに【獣王国・パシオン】へと二人を連れて転移した。無論今もなお心配している親に子を届けるためだ。


 そして《王樹》には予想通りアノールド・オーシャンとレオウード・キングが今か今かとそわそわしながら待っていた。

 二人はミュアたちの無事な姿を見ると、閃光の如くその場から瞬時にしてミュアたちを抱きしめにきた。彼女たちも突然の特攻に驚いていたが、すんなりと受け入れて今では為されるがままになっている。


「良かった……ミュア、ミミル」

「ウンウン、親子の感動の対面ってやつさ~」


 カミュとテンも一緒についてきていたので、眼前に広がっている光景を見て顔を綻ばせている。


「さて、帰るか」


 日色がカミュたちに言い、文字を書こうとした瞬間、


「待てぇいヒイロッ!」


 突然レオウードが制止の声をかけてきた。


「アノールドから話は全て聞いたぞ。よもやこのワシにさえ、あのような重要な計画があることを黙っておったとは……しかもミミルまで巻き込みおって」


 どうやらアノールド同様、ミミルを巻き込んだ計画を立ててそれを黙っていたことに憤慨しているようだ。


「仕方無いだろうが。言えなかった理由はオッサンからも聞いたはずだ。それにその計画を実行することを選んだのはそこにいる青リボンであって、計画自体もアンタが国を離れずそいつの傍にいてやれば遂行することは無かった。オレは事前に誘拐の件についても話しておいたはずだ。それを重要視せずに行動した。全部アンタの落ち度だと思うが?」

「ぬぐっ!」

「オッサンにしても同じことだ。オレの話をちゃんと理解しておけば、チビを前線へ送らないようにすることだってできたはず。何もかも安易に考えていたアンタたちが悪い」

「「んぐっ!」」


 二人は日色の論理的説論に言い返すことができずただただ喉を鳴らすことしかできていなかった。


「それにアンタたちの要望通り、しっかり助けてこうやって届けてやっただろ? 何の不満があるんだ?」


 プルプルと震えるレオウードを見て、周囲の兵士たちがどうしたものかとそわそわし始める。怒りのままレオウードが暴れたら《王樹》など一溜まりもないからだ。だが皆の考えは的を射ることができずに終わる。


「ガーッハッハッハッハッハ!」


 いきなり大声で笑い始めたレオウードに兵士たちは唖然だ。そして彼の笑いはひとしきり続き、


「いやいや、本当にまいったわ! まさに王としてそれに父として不甲斐無いわ!」

「お父様……」

「ミミルよ、すまなかったな。父が情けなくて」


 レオウードに頭を撫でられているミミルは目を閉じて頭を横に振る。


「いいえ、お父様は立派です。いつもいつもミミルたちの平和を考えて下さっています。ミミルは感謝を忘れたことがありません」

「ミミル……ありがとう。……ヒイロよ、この子を救ってくれて礼を言う」

「別にいい。オレは計画を実行しただけだ。そのお蔭であのテンプレ魔王の上を行けた」


 それだけで満足だった。せっかくの浮遊城【シャイターン】も、ほとんど日の目を見ることなく崩落して、アヴォロスはさぞ怒り狂っていることだろう。それを思うと思わずほくそ笑んでしまう。ざまあみろと。


「しかしヒイロよ、まさかあの巨城を落とすとはさすがだな。やはりお前こそ、我々のエースだ」

「冗談はよせ。オレは自分勝手に動いてるだけだ」

「それが結果に伴っているのだ。この戦争、お前なくしてもう語れん」


 すると周囲から拍手喝采が送られてきた。物凄く居心地が悪い。日色は本当にただアヴォロスの嫌がる顔が見たかっただけで計画を実行したに過ぎない。

 こうして賛美を送られることはハッキリいって慣れていないのだ。だから身体がむず痒くなってしまう。


「イエーイ! 俺がテンだぜよろしく~っ!」


 何度もバック転をしてVサインを繰り出すテン。


(いや、今回お前何もしてないし)


 ジト目で、浮かれているテンに心の中で突っ込みを入れる日色。相変わらず目立つのが大好きな小動物だった。


「はぁ、ところで獣王」


 とりあえず雰囲気を変えるためにも話を変えることにした。拍手が止む。


「何だヒイロ?」

「今、《奇跡連合軍》は人間界へと入ってるんだろ?」

「ああ、橋を拠点として増援部隊を次々と向かわせている。配置されているゾンビ兵を蹴散らし人間界を攻略しつつ【ヴィクトリアス】を目指す」


 まあ、今ではヴィクトリアス跡といった方が良いかもしれないが。


「確認していなかったが、奴の城は落下した後どうなった?」

「む? 知らなかったのか? バリド?」

「はっ!」


 名前を呼ばれて《三獣士》のリーダーであるバリドが前に出る。


「ヒイロ、お前が落とした【シャイターン】だが、落下の衝撃でかなりの崩壊を受けているらしい」

「かなり? それはホントか鳥人間?」

「その呼び方はいい加減止めてくれ」

「いいから教えてくれ」

「分かった。そうだ、かなりの崩壊だ」


 正直予想外ではあった。『大崩落』の文字を使っただけでも、放置しておけば城は崩れ去っただろう。その上に上空からの落下だ。その衝撃をプラスして粉々に砕け散ると踏んでいた日色だが、その思惑は若干外れてしまったようだ。


(何かしやがったなテンプレ魔王……)


 恐らく日色の発動した魔法を打ち消すような行動を起こし、落下の衝撃も最小限に抑える手段を用いたのだろう。そうなる可能性を考慮していないと起こりえない現状だった。

 やはりあらゆる最悪を想定して動いているのは日色だけではなく、あのアヴォロスも同じだったというわけだ。まあそれでもアヴォロスは、その考えをメインに置いていなかったお蔭でせっかくの居城が破壊に見舞われたのだが。


「情報では急ピッチで【シャイターン】の修復にかかっているようだ」

「だろうな。全壊してなければ、奴なら城を再度使おうとするだろう。短期間で城を飛ばせる技術を施した連中だ。また城を飛ばしてくる可能性が高い」


 そうなれば今度こそ侵入は厳しくなる。特にあの城を覆っている結界は強力であり、外からの攻撃にとても強い。日色の『転移』の文字でも中に入れないのだ。

 そして【シャイターン】が直ったら、間違いなくあの忌まわしい《シャイターン砲》を使ってくるに違いない。何としてもあの力だけは二度と使わせてはならない。


「安心しろヒイロ。今最速で部隊を【シャイターン】へと向かわせている。今のうちに城ごと奴らを倒す」

「そう上手くいくといいけどな。数がこちらの方が上だからといって、相手は主力が集まっている本陣。それにまだ隠し玉だってあるはずだ」


 バリドの言うことは正しい。今のうちに城を完璧に崩壊させれば、《マタル・デウス》は足を失うついでに本陣も失う。しかしアヴォロスが、黙ってそれを許すとは思えない。

 その時、兵士が《玉座の間》に入ってきて、情報をレオウードに耳打ちで伝える。


「……何だと!? ……分かった、引き続き頼むぞ」


 兵士は《玉座の間》から出ていった。そしてレオウードが新たな情報を口頭で伝えた。


「今、【ヴィクトリアス】周辺における最新の情報が入った。《シャイターン砲》により更地になった【ヴィクトリアス】に墜落したアヴォロスの居城を覆うように森が出現したとのことだ」

「……森?」


 日色が聞き返すとレオウードが頷きを見せる。


「ああ、しかも城を囲うほどの大きな密林。巨大なジャングルができているらしい」


 恐らくアヴォロスの対策だろう。そうして密林で城を覆い、侵入者を防ぐと同時に鎧のような役割も担っている。


「樹で思いつくのはあのヒヨミという奴か……まさかそれほどの力を行使できるとは驚きだな」


 《玉座の間》に喋りながら入ってきたのはウサミミでロリが特徴のララシーク・ファンナルだった。


「おおララ、お前も聞いていたのか」

「ええレオ様。しかしこうなると下手に近づけなくなりましたね。その密林自体が罠だと考えるのが妥当でしょう」

「うむ、そうして城の復元に時間を稼ぐつもりだろう。どうすればいいと思う?」

「そうですね…………火計でしょうか?」

「なるほど、樹であるなら燃やしてしまえばよいか。よし、最速部隊をただちに【ヴィクトリアス】へ向かわせ火を放つように指示をしろ!」


 バリドはレオウードの言葉を受けると、兵士たちに指示を出していく。


(確かに火なら樹は燃える。しかも全体に広がっていく有効な手段だ。それは常識だろう。しかしそう上手くいくのか……?)


 そんなことはアヴォロスだって折りこみ済みだと思う。それなのにあえて密林にした理由があるのではと日色は勘ぐってしまうのだ。

 上手くいけばいいとは思うが、何となくアヴォロスが何か対策をうっているような気がしないでもない。 


(とりあえずオレは様子見しておくか)



     ※



 【人間国・ヴィクトリアス】。いや、そこはもう旧ヴィクトリアスと言った方がいいだろう。国という存在は掻き消え、今では鬱蒼と茂ったジャングルが広がっている場所である。

 その密林に守られるようにして一つの城が存在している。景観は壁が崩れ全体にヒビが入り、見るからにボロボロになった廃城のような感じだが、その城を覆うように青白い球体が確認できる。結界と呼ばれるものだ。

 その光景から、城にはまだまだ利用価値があり、ここで失う訳にはいかないといった意思が感じられる。


 城主であるアヴォロスだが、いつも玉座でふんぞり返っているアヴォロスだが、その玉座がある《玉座の間》は、日色の魔法で天井ごと崩壊にあっており立ち入りができなくなっていた。

 今アヴォロスがいるのは城の地下。だが棺桶が立ち並ぶ場所ではなく、そこはアヴォロスでも滅多に向かわなかった場所の一つでもある。

 あまり広くはないが、床には大きな魔法陣が描かれてあり、突き当りの壁には二つのクリスタルが埋め込まれている。魔法陣の上には中身の入っていない棺桶が一つ置いてある。


 さらにそのクリスタルの中には二つの輝きが見て取れた。アヴォロスは室内に入りカツカツと突き当たりまでいくと、ちょうど壁の下には大きな棺桶が一つ寝かされてあった。

 その棺桶の周りにはナグナラと呼ばれる大男の研究者とその助手であるペビン、そしてヒヨミが立っている。

 アヴォロスは棺桶の蓋を開けるように指示する。そしてガガガと重そうな蓋をずらさせ中に入っているものをアヴォロスは確認すると目を細めて狡猾そうに笑う。


 そこにはミイラにまでなっていないが、明らかに死体だと分かる様相を呈している人物が横たわっていた。

 そして完全に蓋を取り、魔法陣の上まで持っていくように指示するとアヴォロスもまた同じように移動する。


「良かった。ここを破壊されていたら、何もかもが台無しになるところだった。まあ、ヒヨミにこの場を守らせたのは正解だったかな」


 ここは城の中でも一番守りが固く、少々のことでは壊されない場所ではあった。

 しかし日色の魔法なら、ここでも容易に潰すことができる。だからこそヒヨミに、いや、ヒヨミだけではなくほとんどの者にこの部屋の維持に全力を注がせた。

 結果、城は大半が崩壊してしまい、《シャイターン砲》も使えなくなったが、一番守りたい場所は守れたのだ。


「……《アダムスの核》をここへ」


 アヴォロスが言うと、壁に埋め込まれてあるクリスタルをヒヨミがとり出し、クリスタルをアヴォロスに持っていく。

 その中には美しい輝きを放つ球体が納められてあった。そう、これは以前アヴォロスが【シャンジュモン洞窟】で手に入れた《初代魔王の核》である。


 アヴォロスはコンコンとノックするようにクリスタルを叩くと、そこからヒビが簡単に入り、中から《核》を取り出した。さらに輝きが増し、それはまるで触れるものすべてを拒むかのような意志が伝わってくる。

 その光を恍惚な表情で見つめるアヴォロス。


「ようやくだ。ようやくここまで来た。さあ、これを受け取れ」


 棺桶に眠っている者にそっと《核》を落としていく。するとズブズブとゆっくりとその身体の中に《核》が沈んでいき、土気色をしていた肌がまるで生気を取り戻したかのような肌色を宿していく。

 しばらくすると、ドクンドクンと心臓が脈動する音が静かな室内に響く。


「拒絶反応無し。どうやら今度は成功のようだ」


 ヒヨミが納得気に頷くと、


「当然なのね~! 誰が力を貸したと思っているのね!」


 ナグナラが自慢するように胸を張ってくるが、それをペビンが淡々とした様子で窘める。


「所長、うるさいので静かにして下さい。まだ儀式は終わっていませんよ?」

「む~ペビンは真面目過ぎるのね~」


 不満気に口を尖らせる豚っ鼻のナグナラ。


「陛下、すぐにでも儀式を行いますか?」


 ペビンに向かってアヴォロスは口角を嬉しそうに歪めながら答える。


「もちろんだよ。これならすべてが上手くいく」

「では棺桶の中へ」


 もう一つの空の棺桶にアヴォロスが仰向けに寝転ぶ。そして二つの棺桶に蓋をかけて、三人はその場を離れる。

 突然、魔法陣に光が走り、バチバチバチバチィッと凄まじい放電が周囲に飛び放つ。ゴゴゴゴゴゴゴと室内が揺れ、さらに魔法陣の輝きが強くなっていく。


「さあ、成功するか否か」


 ヒヨミの言葉にペビンが反応する。


「もし失敗すれば、また数年は引きこもりですか?」

「だな。しかし今回は《核》の拒絶反応は無かった。長年かけて作り上げてきた最高の肉体だ。成功してもらわねば困る」

「そうですね。このために各地を回って《核》に合う素材を探し出したのですから」

「……探したのは俺だがな」

「おやおや、そこは突っ込まなくてもよろしいのでは? ……それより所長、何故寛いでるのですか?」


 見ればナグナラは床に寝そべって麩菓子のような菓子を口にしていた。


「え~、だってもうやることなくなったのね~。あとは結果を待つだけだし~」

「確かにそうですがそれ以上太るような行為をしてどうするんですか? 今でも十分醜いのに、それ以上になるとトロルも逃げ出しますよ?」

「ひ、酷いのね! ワタシはあんなへちゃむくれな顔してないのね!」

「いえ、似たようなものでしょう」

「うわぁぁぁんっ! ペビンが苛めるのね~!」

「泣きながらでもお菓子を口にする所長には開いた口が塞がりませんね」


 顔を隠したナグナラからボリボリと音がするのでペビンは呆れたように肩を竦める。


「戯れはそこまでだ。そろそろだぞ」


 ヒヨミの言葉に二人は視線を棺桶の方に向ける。刹那、二つの棺桶がカタカタと揺れ始め、上方から突如出現した雷霆が二つに向けて落下した。

 その衝撃波は物凄く、ナグナラは「ひや~!」と言いながら吹き飛んで壁にぶつかる。残りの二人はしっかりと足を踏ん張って耐えている。


 何度も何度も電光が迸り、爆発が起きたような爆風が周囲を薙ぎ払う。すると驚いたことに、二つの棺桶がフワッと宙に浮き、互いの間にある距離を埋めるように近づき始めた。


「さあ、どうなる!」


 ヒヨミは腕を前に出して風から目を守りながらも様子をジッと見守っている。そしてペビンもその糸目をうっすらと開け、微かに頬を緩める。

 一際大きな雷が二つの棺桶を包み、その雷に包まれながら重なっていく。そして二つあった棺桶が一つになり、突然その棺桶が爆発する。

 その残骸が壁に刺さり、爆煙が周囲を包む。

 先程からうって変わって静寂が支配する中、煙の中に人影がちらついた。


「へ、陛下……?」


 ヒヨミが確認するように声をかけると、


「…………ククククク」


 喉を震わす音が聞こえる。しかしそれはヒヨミが先程まで聞いていたアヴォロスの子供のような高い声音ではない。

 その声は間違いなく成人した男性のそれだった。


「ククク…………アハハハハハハハハッ!」


 煙が晴れ、その中から姿を現したのは丸裸の男性だった。鍛え上げられ引き締まった肉体。ところどころに、まるで肌を移植したかのように変色している肌。統一感が欠けている。

 見目麗しいほどに輝く金色の髪が男の腰で揺れている。その目元は切れ長で、血のように真っ赤なルビーのような眼球が収められていた。

 高い鼻に爽やかに整った顔立ち。まるでアヴォロスが成長した後のような面相を宿していた。


「戻った! やっと戻れたわ! これぞ余の身体! この時をどれほど待ったか……ククク」


 ヒヨミは男に近づき跪き頭を垂れる。


「お待ちしておりました、アヴォロス、いえ、アロス様」

「ククク、いや、アヴォロスでよい。ヒヨミ、ペビン、ナグナラ、礼を言おう。余の肉体、かつてのそれよりすこぶる調子がよい。大義であった」

「はっ!」


 ヒヨミは返事をし、ペビンは軽く頭を下げている。ナグナラは吹き飛ばされたショックで意識を失っているようだ。

 すると何かに反応してアヴォロスが眉をひそめる。


「む?」

「どうかされましたか?」

「いや、虫どもが何かしようとしているようでな」

「ああ、恐らく森に火でも放とうとしているのでしょう」

「ククク、まあ、好きにやらせばよい。余は復活したばかりだ。しばし身体を魂と馴染ませる時間が必要だ。周りの虫どもは貴様らに任せよう」

「お任せを」


 アヴォロスはペビンからタオルケットを受けると身体に羽織る。


「さて、一時休息したのち動くとするか。ククク、待っているがよいヒイロ。必ず貴様を絶望に叩き落としてやる。ククク…………アーッハッハッハッハッハッ!」


 室内にアヴォロスの笑い声がしばらく響いていた。





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