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金色の文字使い ~勇者四人に巻き込まれたユニークチート~  作者: 十本スイ
第五章 マタル・デウスの暗躍編

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134:奇妙な繋がり

「それで? そのサルは何だ?」


 日色たちは精霊の住処である【スピリットフォレスト】からの勧誘に赴き、そこで貴重な体験を得て、こうして無事に【魔国・ハーオス】にある魔王城の一室に帰って来たわけなのだが、同じように知人に会いに行っていたリリィンたちも、ほぼ同じ時刻に帰って来た。

 そして室内において、リリィンたちの見慣れない小動物がいたので、当然の如く聞いてきたというわけだ。


「おう、よろしくな嬢ちゃんたち!」

「喋ったっ!?」


 リリィンやシャモエ、それにミカヅキは驚愕に顔を歪めていたが、シウバだけはジッと小動物、いや日色と契約した精霊であるテンを見つめていた。

 説明が面倒だと思った日色は、ニッキに説明するように促す。途中何度かカミュの補足が入るものの、十分に言いたいことは伝えられる内容だった。


「少し見ない間に精霊とまで契約するとは……うむ、さすがはワタシの配下だ! クハハハハハ!」


 どうやら彼女にとってはそれは良いことだったようで上機嫌に振る舞っている。


「しかしだ、何もこんなちんちくりんなサルを選ぶことはあるまい。もっと強そうな奴はいなかったのか?」

「むっ! 何だよ嬢ちゃん! 俺ってばこう見えても格の高い精霊なんだぜ! それにちんちくりんなのは嬢ちゃんだって…………へ?」


 テンが言葉に詰まるのも無理はなかった。何故なら今彼の目の前にいたリリィンの背後からどす黒いオーラが漂い、それは明らかな殺意となって降り注いでくるのだから。


「何か言ったかサル? それとも皮を剥いて天日に干してカラッカラにしてやろうか?」

「い、いいいいいえいえいえいえいえいえいえっ! ウキヤィィィィッ!」


 瞬間、テンはその小さな体を小刻みにガクガクブルブルさせて縋りつくように日色の背後に回る。


「お、おいヒイロ! 何なんだよあの嬢ちゃん! ただのお子さんじゃねえぞコラァッ!?」


 悍ましい表情をしたリリィンに聞かれないように小声で喋っている。


「何って、言っただろ、規格外の存在だって」

「き、聞いてねえよっ! なにあの子、ホオズキのじっちゃんと同じ雰囲気出してんだけど!? ものすっげえ怖えんだけど!?」


 言ってなかったかなと首を傾けるが、日色は我関さずといった感じで本を片手にしている。


「と、とにかくアレはやべえ! 逆らったらダメなタイプの奴だアレは! あの眼はマジの奴だ……油断してると俺は……俺は……干物にされっちまう! 魚でもないのにィ!」


 後ろで背後霊のようにひっついてブツブツ言うのは止めてほしい。

 その姿が可愛らしかったのか、シャモエとミカヅキは「可愛い~」と言いながらテンを抱きしめようとしてくる。てっきりテンは嫌がると思っていると、


「いんや~、俺って人気者さ~ウッキッキ~」


 大歓迎のようだった。テンはそれほど意識してはいないみたいだが、シャモエの豊満な胸に抱きしめられている彼を見て、一人の男が…………いや、一人の変態が黙っていなかった。


「ぬおぉぉぉぉぉっ! な、何と羨ましいことをぉっ!」


 目を血走らせ、鼻息を荒くさせた興奮した危ない奴が叫んでいた。


「テ、テン殿ぉ! それは幾らテン殿でも許容できませんぞぉ!」

「うるさい黙れ変態」


 こちとら本を読んでいるのにいい加減喧しい。


「お、シウバじゃねっか! おひさ~」


 テンはまるで知人と出会ったように手を振る。


「お前、知り合いなのか?」


 日色の興味も惹いた。

 テンはシャモエの腕の中からヒョイッと抜け出して日色の座るベッドに乗る。


「まあな、といっても昔の話だけどさ」


 リリィンも同じように興味を惹かれたのかシウバに視線を向ける。するとシウバはやれやれといった感じで肩を竦めると、


「そうでございますね。テン殿とは、わたくしがまだ【スピリットフォレスト】に居た時にお会いしましたね」

「そうそう、そん時からあんま見た目は変わんねえけどな。髪が白くなっただけか?」

「ノフォフォフォフォ! あの時はまだわたくしも若かったですしね!」

「まあでも、元気そうで良かったけどよ」

「ええ、テン殿も息災で何よりでございます」

「キキ! あ、そういやじっちゃんが会いたがってたけどよ、まだ帰るつもりはねえんか?」

「…………ええ」


 笑みは崩さないままだが、シウバのその表情は完全に作られた笑みだということは理解できた。

 その奥に何を隠そうとしているのかは分からないが、追及するようなことではないと日色は判断する。

 そしてテンもまた、ジッと彼の顔を見るとこちらはニカッと明るい顔をした。


「……そっか! ま、いいんじゃね! あのじっちゃんなんて早々くたばるとも思えねえし、いつか……会うつもりがあんならそれでさ」

「……感謝します」


 その感謝は何に対しての感謝なのか……。下手に話を掘り下げなかったテンの気遣いか、場の雰囲気を変えてくれたことに対してか、それとも……。


「ウキキ、そういやさ、一応改めて自己紹介しておくぜ! 俺はテンだ! これからよろしく!」

「ああ、よろしくできるかは貴様次第だがな。フフフフフフ」

「ひ、ひぃぃぃぃっ!?」


 またもリリィンの凄みで恐怖に怯えるテン。どうやらトラウマになったようだ。しかしそんなリリィンがふとニッキの手に注目する。


「む? それは何だニッキ?」


 それはリボンのようだが、彼女の腕に何重にも巻かれリストバンドみたいになっている。


「凄まじい魔力が宿っているようだが……? しかもニッキのものではない」


 さすがはリリィンだと日色は思った。

 これは【スピリットフォレスト】から帰る時、白ヘビの精霊であるヒメからニッキが直接受け取ったリボンだった。精霊が身に着けていたものでもあるので、ただのリボンであるはずがない。

 それに気づいた慧眼はやはり素晴らしいものがあった。


「むむ? これですかな? むふふ~これはですね」


 ニッキが嬉しそうに説明する。何故こんなにも嬉しそうなのかというと、彼女が気絶してからの後の話しをカミュから聞いたからだ。

 ヒメが道を間違えようとしているところ、ニッキは彼女を助けるような形に一応はなった。そのことにヒメは感謝して、その証としてニッキにリボンを託した。

 ニッキ曰く、そのリボンからはとても優しい魔力が伝わってくるとのこと。何よりもヒメが自分を認めてくれたことが、嬉しいとニッキは言っていた。


「ほう、それも精霊から譲り受けたものか……ちっ、ワタシも行けば良かったな」


 子供みたいに口を尖らせるリリィンだが、精霊が許可しなければ入れない空間なので、ふと凶暴そうなリリィンは無理なのではと思ってしまったのは日色だけの秘密である。


「リリィンさんたちはどこに行っていたのですかな?」


 ニッキが尋ねると、「おお、大切な話がございました」とシウバが言って、彼からその話とやらを聞かされた。







「――――――面倒だ」


 一言日色はシウバの話の答えとして言い放った。


「はぁ、やはり言うと思ったぞ」


 リリィンは予測していた答えが帰って来たみたいでやれやれと首を横に振っている。


「大体オレがその【シャンジュモン洞窟】に行く必要性が感じられん」


 そこにはリリィンやシウバの旧友が住んでいるらしいが、日色は別段会いたいとは思っていない。

 向こうは会う気があるようだが、そもそも世俗から離れて引き込んでいる奴に興味なんか無いのだ。会いたいのなら向こうから会いに来ればいい。


「なあヒイロ、そいつに会うのもワタシの野望のためなんだ」

「…………」

「貴様はワタシの……その、ゆ、夢を支えてくれると言った。だから……だからだな、そう! 貴様はワタシの言う通りについてくるべきなんだ!」

「ああ……お嬢様台無しでございます」


 指を突きつけながらどうしてか顔を真紅に染め上げているが…………何故こんなにも上からものを言われなければならないんだ?

 シウバですら何か呆れたように肩を落としているぞ?


「お、お嬢様! もっとお願いする時は……あ、あれです! 可愛く上目使いで少し目を潤ませた方が良いらしいですぅ!」


 ドジメイド……それは頼み込む相手に聞かれていたら駄目だと思うが……?


「な、何を言っている! そ、そのようなことできるわけがないだろうが! そ、それに何だその知識は! 誰から聞いた!」

「えっと……シウバ様ですが何か?」


 天然大爆発でにこやかに言うシャモエに「おお、ジ~ザス」と言って神に祈りを捧げるシウバ。

 きっとこれから肩を怒りで震わせているリリィンの制裁を受けるので覚悟しているのだろう。


「貴様はシャモエに何を教えとるんだぁぁぁっ!」

「ぱろむんちょっ!?」


 回転回し蹴りが綺麗に横顔に直撃してシウバは壁に頭から突き刺さった。…………修理費用はアイツに出させよう。


「と、とにかく貴様について来てもらわんと困るのだ!」

「そうは言うがな。そいつを呼んで来ればいいだけの話だろうが」

「それは無理だと言っただろう! 奴にも事情がある!」

「獣人だからだろ? だがそれは魔王にでも許可を貰えばいいだけのはずだ」

「違う! 奴は今でも狙われているし、もしここに呼んでその騒動に巻き込まれれば余計面倒なことになるぞ!」

「…………そんな奴に会わせようとするなよ」


 心底そう思った。ただでさえ自分は巻き込まれる体質を備えているらしいのだ。そんな爆弾のような奴と関わり合いになりたくないと思うのは当然のことである。


「いいから、オレは行かないぞ」

「だ、だがこれは夢のためでもあるのだぞ!」

「む……」


 そう言われれば引っ掛かるものがある。確かに彼女の夢を支えると公言した以上、それを無下にするつもりはない。

 それに自分もその夢の実現を見てみたいと心から思っているのだ。しかしどうにもその人物に会うことで彼女の夢が近づくとは思えない。簡単に言うと実感できないのだ。


「そ、それに貴様の持つ《絶刀・ザンゲキ》の元を拵えた奴なのだぞクゼルは!」


 …………ん?


「だから一度だけでも……」

「おい」

「会って……へ?」

「今何て言った?」


 日色の突然の食いつきにリリィンは呆気にとられている。


「え……今? だ、だから一度だけでも会ってと」

「違う、その前だ」

「……貴様の持つ《絶刀・ザンゲキ》の元を拵えた奴なのだぞクゼルは……か?」


 良い記憶力だと感心するが、どうやら聞き間違いではなかったようだ。日色はベッドの傍に立てかけてある刀を見て、


「クゼル……って言ったな?」

「え、ああ」

「一つ聞く。そいつは――クゼル・ジオか?」



     ※



 クゼル・ジオは、今自身が住まう【シャンジュモン洞窟】に何者かがやって来た気配を感じた。

 そしてその人物は複数であり、真っ直ぐこちらへ向かって来ている。


 その者たちから邪気などを感じないので、洞窟内に作った自分の部屋と呼ぶべき空間で大人しく座して待っていた。

 そしてカツカツと地を鳴らす音が大きくなり、すぐ近くでその音は止む。クゼルはゆっくり閉じていた目を開け、音のしていた方向へと顔を向け笑みを浮かべる。


「やあ、昨日ぶりですね皆さん」


 そこにはシウバを先導に、リリィンたちが立っていた。

 クゼルは初めて見る顔の存在が幾つかあることに気づき、観察するように視線を動かす。

 しかしその中で、赤ローブを着用した少年が皆の前に一歩出ると、


「アンタがクゼル・ジオか?」


 その目は何かを確かめるような意を組んでいた。何を確かめたかったというのだろうか。どちらかといえば確かめたいのはクゼルの方だったのだが……。


「ええ、確かに私はクゼル・ジオと言います」


 チラリと少年の腰元に目をやり、そこに刀の存在を確認する。


「! ……もしかして、あなたがヒイロさんかな?」

「ああ、アンタが会いたいと言うから来てやった」

「ほう」

「それにオレもアンタには一度会って話したいことがあった」

「…………何でしょうか? 一応確認しますが初対面のはずですよね?」


 少なくともクゼルには彼と邂逅した覚えなど持ち合わせていない。それなのに話したいことがある。どういうことなのか……?


「安心しろ。間違いなく初対面だ。だがオレはアンタのことを少しだけ知ってる」

「そうらしいぞ」

「リリィンさん……」


 突如話にリリィンが介入してきたので、真相を確かめるべく視線を向ける。


「あれから帰って、貴様の話をヒイロにした。最初はここに来る理由などないと言い、取りつく島が無い状態だったのだがな。貴様の名前を出した途端に意見を変えおった」


 彼女が言うには、クゼル・ジオと言う名前を出した時、ヒイロ少年はその名に食いつき、どのような人物か確かめてきたらしい。

 黄色い髪の毛で凄腕の鍛冶師。そして世界を回った経験のある獣人であると言うと、ヒイロ少年は小さく「間違いない」とだけ呟き、「明日連れて行け」と正反対に意見を変えた。

 無論理由を尋ねたリリィンだが、明日話すから今話すと二度手間になると言って口を噤んだという。


「なるほど。ではお聞きしてもいいですか? 何故あなたが私のことをご存知なのか」


 真っ直ぐ日色の目を見つめるクゼル。

 そしてヒイロ少年がゆっくりと口を開き、


「アンタ――――――――ウィンカァ・ジオの父親だろ?」


 耳を疑うような言葉が返って来て、クゼルは自分に雷が落ちたかのように一瞬息が止まり全身が硬直してしまった。



     ※



 一目見て何となく分かった。

 この人物は、間違いなくアイツの父親だと。黄色い髪に獣人という種族。そして何より目元や穏やかな顔立ちがそっくりだった。

 まだアノールドたちと人間界を旅していた時に出会った少女――――ウィンカァ・ジオに。


「ウィン……カァ……? な、何故君があの子の名を……っ!?」


 目に見えて動揺し始めたクゼル。元々確信に近いものはあったが、その反応を見てさらに自分の考えが的を射ていた証拠を得た。

 クゼルもそうだが、突然謎の名前を出されてリリィンたちも不可思議そうに眉をしかめていた。


「ウィンカァとは誰だ? ヒイロ、貴様何を知っている?」


 ショックを受けて固まっているクゼルに聞くよりは日色に聞いた方が手っ取り早いと思ったのか尋ねてきた。


「ウィンカァ・ジオ……この鍛冶師の娘だ」

「む、娘っ!? ちょ、ちょっと待て、では何か? 貴様はクゼルの娘に会ったことがあるというのか?」

「ああ」


 ウィンカァ・ジオと会ったのは、アノールドたちと旅をしていて天然の温泉を見つけて、そこで休養していた時だった。

 高い岩山から温泉に向けて大きな槍を抱えた少女が落下してきた。どうやら腹が減っていたようでダウン寸前だったが、何とか手持ちの食糧を分け与えると息を吹き返した。


 その時の少女がウィンカァ・ジオだったのである。

 ひょんなことからしばらく一緒に旅するようになったが、彼女の目的は日色のように世界を見て回るというようなものではなかった。

 彼女の目的は父親を探すこと。世界を回っている父親を探し出し、一緒に暮らすことが彼女の目的だった。


「そ、そんな……彼女は……リンデはどうしたんですか?」


 顔を青ざめながらクゼルは聞いてくる。


「リンデ? 確かアイツの母親の名前だったか?」

「違います……いえ、ウィンカァは彼女のことを母親だと思っているかもしれません。そのように頼みましたから……」


 苦々しい表情で言葉を吐き出しているが、何となくクゼルの言いたいことを理解した。

 リリィンから聞いたが、このクゼルという男は、自分の造った武器が賊の手に渡ってしまい、その武器の力で家族を失ったという。


 その際に、両親とこの男の妻が犠牲になったらしい。

 幼い子供……ウィンカァは無事だったようだが、このままだと自分のせいで命の危険にウィンカァが巻き込まれると悟った彼は、まだ幼いウィンカァを妻の妹に預けてその場から去ったとのこと。


「リンデは妻の……妹です。彼女にはウィンカァの母親になってほしいと頼み込みました」


 やはりそうだったのかと得心する。


「ウィンカァには、実の母親が殺された事実を知らせないようにお願いしました。ですからウィンカァはきっとリンデを本当の母親だと思い込んでいるはずです」

「なるほどな。だがそのリンデだったか……死んだらしいぞ」

「なっ!? 何故……? まさかまた賊にっ!?」


 掴みかかってくるような勢いで顔を上げ言葉を発してくる。思わず一歩後ずさりしてしまった。


「いや、アイツが言うには病死だということだ」

「そ、そうですか……確かにリンデはあまり体が丈夫な方ではありませんでしたね……」


 顔を俯かせて悔恨に心を握られているような苦顔を作る。


「まだ続きがあるぞ」

「え?」

「その時、母親が死んだ時、アイツはまだ七歳だった」

「えっ!?」

「そしてそこからはアイツは一人で生きてきた」

「ウィンカァが……一人で……?」


 父親を探す旅に出たということは先程教えたが、まさか一人だとは思っていなかったようだ。


「そうだ、冒険者になり父親であるアンタを探すために人間界を回っていた」

「そ、そんな……」


 小刻みに体を震わせる彼を見て呆れたように溜め息を吐く。


「父親ならアイツの身の上は知っているはずだな。人間界で、アイツがどう生きてきたか……アンタに理解できるか?」


 もちろんウィンカァを自分から手放した理由は分かる。

 彼なりにそれが一番正しいことだと判断したからだ。自分と一緒に居れば、災いが降りかかり、もしかすると彼女もそのせいで傷つく可能性が高い。

 だから愛する子供を、その手から放したのだ。それはとても辛いことだったはず。

 だが日色にとっては、ウィンカァという少女の強い意思を肌で感じている。

 彼女がそれまでどうやって生きてきたかも、この情勢の中でそれは辛辣なものだっただろうことも理解できている。


「別にアンタを責めるつもりはない。ただ、考えなかったのか? アイツがアンタを探すために旅に出る可能性を」

「…………失念していました」

「だろうな」

「あの子はどちらかというと妻の…………ピアニに似ていましたから。ピアニはおしとやかな女性で、とても旅に出るような気性を持つような……」

「人間じゃなかった……か?」


 その言葉に日色とクゼル以外の全員が驚愕の表情に包まれている。尤もミカヅキやニッキは良く分かっていないような感じだが。


「人間……? おいクゼル、貴様に子供がいることは分かっていたが、その相手は人間だったのか?」


 リリィンが呆気にとられた者たちの代表として尋ねている。


「ええ、ピアニはれっきとした『人間族』です」

「な、ならば……」

「はい。ウィンカァは…………ハーフです」


 ビクッとシャモエの肩が揺れて、顔が強張る。


「シャモエちゃん……?」


 ミカヅキがそんな彼女の様子に疑問を感じて言葉をかけている。

 そう、彼女もまたハーフだから。

 だから分かるのだろう。ハーフであるウィンカァが、七歳にして一人で世界に出た愕然とした事実の異端さを。


 ハーフが疎まれているのは今も昔もほとんど変わらない。酷い場合は、まるで飛んでいるハエのような扱いをされる。

 そんな現状の中、ウィンカァが一人で、しかも人間界を歩いていたという事実が信じられないといった面持ちをしている。


 シウバは安心させるように彼女の手にそっと手を置き優しく微笑む。幾らかマシになったのか、震えも少しだけ収まり、心配げに見つめていたミカヅキにぎこちなくても笑みを返した。


「……そう言えば、そちらのお嬢さんもハーフでしたね」


 クゼルは申し訳ないといった様子で目を伏せている。


「アイツが旅に出てアンタを探してる。それは今もだろう」

「……そうですか。そのような繋がりがあなたとあの子に……」

「単なる偶然に他ならないがな」

「……いいえ、一緒に旅をしていたということは、あの子があなたを少なからず気に入っていた証拠です。……そうですか、どうやら私は今もなお失敗を続けているようですね」

「そう思うならさっさと迎えに行ってやったらどうだ? こんなジメジメした穴蔵に閉じこもってないでな」


 しばらく沈黙が場を支配するが、クゼルが答えを出すまで誰一人口を開かなかった。

 そしてようやくクゼルの表情に変化が見られ、その唇が静かに動き出す。


「………………刀を、見せて頂けますか?」

「……は?」






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