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猫耳少年捕獲完了

「・・・じゃあまさかあんたはその息子!?」

「はい。そうですが?」

血の気が引く思いで真衣は一義を見つめた。

須賀原は軍事防衛とは名ばかりの対戦闘用軍だ。

国家機密にも多く関わっており、暗殺分野ではトップクラスの腕があった。

「・・・じゃあそいつが弟って?」

震える指先で謙吾を示唆(しさ)する真衣に一義は笑顔で頷いた。

「えぇ、もちろん。僕の天使も須賀原の血筋ですよ」

その返答に真衣は声にならない声を上げ謙吾に詰め寄った。

「ちょっ、あ、あんた。須賀って名乗ったのは嘘だったの!?」

「・・・チッ。そうだよ」

不服そうに答える謙吾に真衣は軽い立ち眩みをした。

「・・・何て事」

須賀原に楯突いた人間は生きて帰れない事はあっち側では常識だった。

真衣は数々の謙吾に対する暴言暴挙を思い返し崩れ落ちた。

「おや、どうかされました?」

「いえ、別に・・・」

「そうですか?随分顔色が悪いようですが・・・」

「お、お構いなく・・・」

既に意気消沈した真衣の手から鞘を取り戻すと腰に備え付けた。

「さて、それでは話しを戻しましょうか?」

再びイノに向き直る一義に謙吾が面倒臭そうに割って入った。

「それ、どうせまた親父命令何だろ?」

「そう。それが?」

「じゃあこいつは渡せねぇな」

「・・・そうやっていつまで反発を続けるつもりだい?」

「反発何かしてねぇーよ。てめぇ等が嫌いなだけだ」

「そうか。どうやらしばらく会わない間に僕の天使は変わってしまったようだね」

悲しそうな表情を浮かべると一義は鞘に手を置いた。

「今戻してあげるよ、マイエンジェル!」

音さえしない抜き刀に謙吾は素早く反応し、身を屈めた。

「甘い」

幾重もの剣裁きに謙吾は舌打ちするとイノを抱きかかえ飛び出した。

「・・・逃げたか」

刀を鞘に収めると一義は謙吾の後を追いかけて行った。

「ちょっと、ま、待って」

腕を引かれながら走るイノは息を切らせながら謙吾に訴えた。

「あ?止まってる暇はねぇ」

「そうじゃ無くて腕離して。自分で走れる」

言われた通り腕を離してやるとイノは謙吾の横に並んだ。

「ついて来れんのか?」

「大丈夫。それより何処に向かってんの?」

「とりあえず見渡しのいい場所だな」

「・・・どうして?」

「あいつの抜き刀は居合の一種だから距離が取れる場所がいいんだ」

「分かった。じゃあこっち」

謙吾を導くように率先して前を走り出すイノ。

「おい、こっちって。お前場所分かんのか?」

「分かんなくても見えてるから大丈夫」

屋根伝いに逃げている為、見渡しが良くイノ目には場所がはっきり見えていた。

謙吾もこの時はイノに大人く従い後をついて行った。

すると本当に何の障害物もない見晴らしの良い場所に辿り着いた。

「おぉ!意外とやるじゃねぇか」

わしゃわしゃとイノの頭を撫で褒めると謙吾は後から来た一義を見据えた。

「早かったな」

「えぇ。訓練されてますから」

微笑みを携えながら鞘を握る一義に謙吾はファイティングポーズをとった。

「丸腰で僕と勝負する気ですか?」

「あいにく武器なんて持ち合わせて無いんでね」

「まぁいいでしょう。丁度いい機会ですから身の程ってのを教えてあげますよ」

余裕たっぷりに皮肉を言う一義に謙吾は冷静に攻撃の瞬間を待った。

無音で刀が抜かれた瞬間、謙吾は一気に間合いを詰めた。

鞘を手にする一義の手を取り、テコの原理で投げ飛ばした。

その洗礼された一連の動きにイノは感嘆(かんたん)した。

「す、凄い。本当は強いんだ・・・」

いつも真衣にやられている謙吾とは違う姿にイノは目を輝かせた。

「まだまだ甘いですね。折角人が手加減してあげたと言うのにこの程度ですか・・・」

「エッ?」

その言葉にイノは自分のミミを疑った。今確かに一義は手加減をしたと言った。

それがもし本当だとしたらと不安が頭を過ぎった。

「・・・そんなこと百も承知だ。けど兄貴の好きなようにはさせねぇ」

「そうか。なら仕方ないね。また一から鍛え直してあげるよ」

にっこりと笑顔を浮かべた一義は有無を言わさず謙吾の腹部を強打した。

「ぐほぉっ!!」

悲痛な嗚咽を吐くと謙吾はその場に倒れ込んでしまった。

「謙吾!!」

思わず駆け寄るイノに謙吾は息も切れ切れに悪態をついた。

「馬鹿野郎。てめぇが来てどうすんだ。さっさと逃げろっ・・・」

腹部を押さえ苦しそうに訴える謙吾にイノは涙を浮かべ首を振った。

「出来ないよ」

謙吾にしがみつくイノを一義は乱暴に掴み上げた。

「とりあえず捕獲完了ですかね」

威嚇(いかく)するイノを相手にする事なく冷めた目で見つめた。

「待てよ、そいつは渡せねぇって言っただろうが」

ゆらゆらと起き上がる謙吾に一義は嬉しそうな表情を浮かべた。

「さすが僕の天使。ズタボロな姿も愛おしい」

「ふざけてんじゃねー!」

よろよろと殴りかかる謙吾を退(しりぞ)け一義はイノを抱え飛び上がった。

「悪いが僕も暇じゃないんだ。悪く思わないで欲しい」

そう告げると一義はそのまま走り去ってしまった。

「・・・畜生っ」

悔しそうに唇を噛み締めながら虚しく地面を殴りつけるのだった。

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