紳士の顔に兄の姿あり
このあたりから殺すなどの死に直結するワードが出てきます。
苦手な方はご注意下さい。
(15禁に相当するようなエグイ描写などはありません)
そんな日常の最中、あっち側では秘密裏に任務命令が出されていた。
「いいか、必ずこの異端者を生きて捉えてくるんだぞ!」
「はい。仰せのままに」
執事のような風貌の男は主の命に綺麗なお辞儀を返し任務に取り掛かった。
物腰に鞘を収めた男は一人、廃れた街へと踏み込んだ。
初めて入ったこっち側の街並を興味深そうに見渡した。
「ふう。予想以上にあちら側とは違うようですね」
右も左も分からぬ街の造りに溜息をついていると突如囲まれた。
「おぉ。兄ちゃんいいもん着てんなぁ。さてはあっち側の奴か?」
「だとしたらいい度胸だぜ」
「まぁ所詮一人。いいカモだ」
じりじりと距離を詰める連中に男は冷静に問いかけた。
「貴方達にお聞きしたい。猫ミミを生やした少年を見ませんでしたか?」
「あぁ?何言ってんだてめぇ」
「そんな奴居るかよっ!」
「そうですか。では、失礼します」
男達が知らない事を知ると男はあっさりと身を翻した。
「おい、待てよ!何勝手に行こうとしてんだ!」
「・・・何故って。もう用はすみましたので」
笑顔で答えた男はゆっくりと鞘を元に戻した。すると男達は血を流し一斉に倒れた。
「僕は無殺生で終えたかったんですがね。貴方達に品が無いからこんな事に・・・」
人を殺しておいてまるで他人事のように呟くと男は歩き出すのだった。
しばらく足を進めるとやたらと猫の集団が目についた。
男はその数に足を止めると顎に手を当てて独り言を呟き始めた。
「さて。これはどう考えるべきでしょうか?」
自問自答しながらしばらく考え込むと決断をした。
「そうですね。同じ生物として何か共鳴するかもしれませんね」
男は猫を頼りに足を進め、一つの建物に入って行った。
するとそこに突如現れた天使に男は鞘を手放し駆け寄った。
「おお!愛しのマイエンジェル!!逢いたかったよ」
男は涙を流し、感無量で謙吾を抱きしめた。
「ぐわっ!あ、兄貴!?何でてめぇがこっちに居るんだ!!」
「決まってるだろ?君に逢う為さ、マイハニー」
顔を近づけ、口づけをしようとする兄を謙吾は片手で制止た。
「やーめ~ろ!!」
力づくで何とか引き離す謙吾に男は頬を染めた。
「相変わらず照れ屋だな。恥ずかしがらなくもいいのに」
「違げぇーよ!」
苛立ちながら否定すると謙吾は面倒臭そうに頭を掻いた。
「で?本当は何しに来た」
「だから君に逢う為だよ、マイエンジェル」
「それはもういい。他にだ」
うんざりした表情で聞き返す謙吾に男は思い出したように答えた。
「あぁ、そうそう。猫ミミの少年を捜しているんだが知らないか?」
その質問に謙吾はイノを見つめ、答えた。
「・・・そいつならさっきからずっと俺の横に居るんだけど?」
「・・・おや。本当だね」
今の今までイノの存在にすら気が付いていなかった男は興味なさ気に呟いた。
「・・・誰?」
「初めまして。須賀原一義と申します。以後、お見知り置きを」
丁寧な挨拶と一緒に綺麗なお辞儀をする一義にイノは萎縮した。
「・・・名前を聞いたのなら君にも名乗って頂かないと」
笑顔のまま問い返す一義にイノは怯えながら名乗った。
「ふ、藤咲イノです」
「そうですか。ではイノ君。早速で悪いのですが、僕と一緒に来て頂けますか?」
同意を求める質問だったがイノには拒否権がないように思えた。
「・・・・・・怖い」
必死に首を振り、謙吾の服に捕まるイノの姿に一義は笑顔を崩した。
「おやおや。僕としては穏便に済ませたいんですがね?」
腰に手を当てて違和感を感じた一義は首を傾げた。
「・・・ふむ。鞘がありませんね」
常に肌身離さず持ち歩いていた武器がないのを不思議そうに呟いた。
「・・・それって、コレ?」
真衣は落ちていた鞘を拾い上げ、一義に見せた。
「あぁ、それです。ご親切にどうも」
一義は鞘を受け取ろうと手を伸ばしたが真衣はそれを拒んだ。
「まず始めに言っときたい事があるわ。此処の主人を完全無視とはどうゆう事!?」
不機嫌そうに啖呵を切る真衣に一義は率直に答えた。
「はぁ?どうって貴女に用はありませんから」
「用が無かろうと此処は私の住処なのよ!!」
「・・・はぁ。それが?」
「挨拶ぐらいしなさいっ!!」
威勢良く指差す真衣に一義は改めて自己紹介をした。
「僕は須賀原一義。ワケあってあの子の保護に参りました」
真衣は満足そうに頷きながらもその名に聞き覚えがあった。
「・・・須賀原?何処かで聞いた事がある気がするわ」
思い出そうと考え込む真衣に一義は形式的に答えた。
「軍事防衛庁の総管、須賀原達士。あの人は有名ですからね」
「そうそう。その人!」
思い出せた事に喜々とした表情を浮かべた真衣だが瞬時に蒼白となった。




