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終止符はお帰りとただいまで打つ

「死ぬな、死んだらダメだよ。ケンゴぉ・・・」

思わず抱き締めるイノに謙吾は薄ら笑った。

「・・・バカ野郎が」

泣きじゃくるイノの頭に手を置き悪態をついた。

そして謙吾はそのままゆっくりと意識を手放すのだった。

夜が明け、突然の幹部死亡に軍隊は混乱に陥っていた。

そこに帰還した一義がうまく隊を誘導した。

「これは須賀原の汚点です。絶対に他言無用。この件は闇葬り去ります!」

一義の話術によって事件にはされず、須賀原達士殺害は幕を閉じた。

だが、結果こっち側とあっち側は完全に分裂した。

しかしそこに争いはなく日常とゆう名の安息があった。

それには多大なる一義の活躍のおかげであった。

一義は達士死亡後、軍施設を取り払い完全な治安保護軍として二手に分かれさせた。

すると須賀原の軍隊に刃向かおうとする者はそれほど居なく、以後争いはなくなった。

だがイノは時が過ぎても深い悲しみから抜け出せずにいた。

「・・・イノちゃんいつまでああしてるのかしら」

流石に心配になった真衣は優しくイノに話しかけた。

「イノちゃん?お腹空かないの?いい加減何か食べたら?」

黙ったまま首を振るイノに真衣は思わず頬を叩いた。

「いい加減にしなさい!イノちゃんがそうしてても意味ないのよ!?」

涙ぐみながら訴える真衣の言葉ですらイノは黙ったまま謙吾を見つめていた。

今謙吾は特殊な医療機器に入れられ生きている状態だった。

あの時一命を取り留めたが意識は戻らないまま3ヶ月経とうとしていた。

「ねぇ、イノちゃん。お願いだからこっち見て返事して!」

強引にイノの身体を反転させる真衣だがその目に光はなかった。

まるで死んだような眼差しに真衣は居た堪れなくなりその場を離れた。

そしてそのまま一人、真衣は涙を流した。

「あの野郎。目を覚ましたら問答無用で殴り飛ばしてやるんだから!」

しかし謙吾の意識は戻る事なく5年が経過した。

イノもすっかり男らしくなり猫耳を生やした男前になっていた。

この年になると迷惑と心配をかけてしまった真衣に恩返しをするようになっていた。

「真衣さん。これで全部ですか?」

「えぇ。それじゃあ今日も一日よろしくね」

真衣は自分のペット好きを利用した事業を始めていた。

その手伝いをイノは進んでやり、貢献していた。

完全に立ち直ったわけではなかったが出来るだけの事はしようと思った。

それでもイノは毎日欠かさず謙吾の見舞いに通った。

何時ものように病室へと入ると静かに医療機器で眠る謙吾の姿がそこにあった。

それを何も言わずただ黙って見守り続けるイノ。

仕事の合間に来たイノは謙吾を気にしつつも仕事へと戻るのだった。

真衣のペット達と一緒に配達をする仕事だ。

猫の配達は予想以上に好評で毎日大忙しだった。

ただあまり重い物は運べないためイノはその担当だった。

一般男性でも重たい荷物を抱えイノは街を走り配達に勤しんだ。

仕事を終えたイノは再び病院に行った。

いつ目覚めるか分からない謙吾の様子を確認する為だった。

病室の扉を開くと、直ぐにその異変に気が付いた。

医療機器に眠って居るはずの謙吾の姿がなかったのだ。

慌てて病室を飛び出すとイノは看護師に事情を聞いた。

「あぁ、あの病室の人ね。その人ならついさっき目を覚まして検査受けてるわ」

その言葉にイノは興奮気味にお礼を述べると一目散に検査室へと向った。

勢いよく開け放たれた扉を怪訝そうな顔で医師は睨みつけた。

「あっ、すいません。あの、須賀原謙吾は何処に?」

「ああ。須賀原さんなら10分前くらいに検査終わったよ?」

「じゃあ病室に戻ったんですね!?」

「いや、その人異常がないって分かったから帰るって言い出してね・・・」

心底困った様子の医師を不備に思いながらもイノは舞い上がっていた。

謙吾の帰る場所はつまり真衣と住んで居たあの場所しかなかった。

イノは大急ぎで病院から飛び出すと謙吾の居るであろうその場所に向った。

「ハァハァ。謙吾?」

息を切らせ、辺りを伺うが、謙吾の姿はなかった。

「また入れ違い?」

何度もの入れ違いに落ち込むとイノはその場にしゃがみ込んだ。

「・・・ガキが知らない間に随分でかくなったな」

その聞き慣れた悪態にイノは振り返るとその姿に涙を浮かべた。

そしてそのまま駆け寄るとイノは謙吾を力強く抱き締めるのだった。

「謙吾、ケンゴぉ・・・」

嬉しさのあまり泣きじゃくるイノに謙吾は眉を寄せ引き剥がした。

「やめろ気持ちわりぃ」

どれだけ経っても変わらない謙吾の姿にイノは涙を流しながらも笑みを浮かべた。

「ずっと、ずっと待ってた。真衣さんも義兄さんも・・・・・・」

「チッ、だから何だ。俺は好きで寝てたわけじゃねぇーっての!」

怪訝そうに吐き捨てる謙吾にイノは涙を拭いて呟いた。

「・・・おかえり、謙吾」

「おぅ、ただいま」

これにてあっちこっちは終わりとさせていただきます。

最後まで読んで下さった方、ありがとうございます。



こっから余談になるが、結局青春小説となったかはわからない。

ただラストは「おかえり」そして「ただいま」で終わりたかった。

ちょっとそう言う曖昧であやふやな終わり方は青春ぽくないか?

と、安易な理由でそうした。個人的にはコレでいいと思ってる。

だから続きはないし書くつもりもない。次回作を楽しみにしてくれ

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