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過去の真相と死による決着

達士の問いかけに悔しそうに唇を噛み締め、涙を浮かべるイノ。

「それは分からない。けど、少なくともこんな事は間違ってる」

「何が間違っていると云うんだ。これは市民を護る為の犠牲何だが?」

「嘘を付くな!反逆者を殺してるじゃないか!」

「それの何が悪い」

「結局沢山の命が亡くなってる・・・」

「それが市民、いやこの街の為だ」

「違う、違う、違う!!」

首を激しく横に振ると涙の雫が散った。

「犠牲にしていい命なんてない!!」

ギラリと光イノの眼光に達士はうっすら笑みを浮かべた。

「いい目だ。昔の謙吾を思い出す」

「エッ?」

その言葉にイノは思わず拍子抜けした声を上げてしまった。

「丁度そのぐらいの時だったな。あいつが正義の名の下に人を殺したのは・・・」

思い出したように呟いた達士の言葉にイノは愕然とした。

「それって・・・?」

「あいつ。謙吾は正義の為、実の母親を殺したんだ」

内容とは対照的な達士の笑顔にイノは恐怖した。

「私の妻は少年。貴様と同じ化け物だった」

「!?」

「私も最初見た時は驚いた。だが同時に興味もそそられた」

イノは身震いが止まらず膝を震わせ、ミミを塞いだ。

「だから妻として迎え入れた。だが突如その姿を豹変させた」

達士の妻、陽子(ようこ)は全身鱗で覆われた姿をしていた。

酷い迫害を受けた陽子は身投げ間際まで追い込まれていた。

それを助けたのが達士だった。だがあくまでも達士の目的は陽子の生物調査だった。

それを知った陽子は裏切られたと落胆した。

嘆き悲しむ陽子だったが、同時に達士に対する憎しみに包まれていった。

すると陽子の身体は見る見るうちに変わり、本物の化け物に変わってしまった。

面影すら残らない陽子の姿に達士は興奮した。

だが、化け物に豹変した陽子は人間離れした強靱的な力で達士に襲いかかった。

それを多くの軍兵が阻止するため、攻防を繰り広げたがまるで歯が立たなかった。

これ以上被害が出る前に謙吾は自ら殺害することを申し出たのだった。

その一部始終を聞いても納得いかない様子のイノに達士は呟いた。

「本人の口から聞くのが一番のようだな。なぁ?謙吾」

暗闇から謙吾は静かに姿を現すと、冷めたように呟いた。

「・・・そうだ。俺が殺した」

何処か悲しそうな謙吾の姿にイノは思わず駆け寄った。

「ケンゴ・・・」

「我を忘れた母さんは手に負える状態じゃなかった」

忘れられない過去を思い出し、苦悩したように謙吾は言った。

「俺は実の母親を殺してホッとした。あんな化け物が母親だなんて考えただけでも虫酸(むしず)が走る」

辛そうな表情を浮かべつつも皮肉を述べる謙吾の姿にイノは顔を背けた。

「・・・俺は所詮須賀原の血を受け継いだ人間なんだ」

そう吐き捨てると謙吾はナイフを構えた。その行動にイノは信じられない様子だった。

「け、ケンゴ!?」

「悪いがお前にも死んでもらう」

「じょ、冗談でしょ?ケンゴはこんな事するのが嫌で逃げたんでしょ・・・」

「あぁ、だがそれ以外にも理由はあった。後を継ぎたくなかったから逃げたんだ」

「だからつまり嫌って事でしょ?」

「・・・イヤ、それは違う。納得いかなかったんだ。兄貴じゃなく何で俺なのか」

謙吾の言葉にイノも疑問に思い、答えを待った。

「それは俺が唯一の血筋だったからだ」

「エッ!?」

謙吾の突然の告白にイノは達士を凝視した。

達士は表情一つ変えず、満足そうに笑みを携えていた。

「兄貴は養子で俺のボディーガードだったんだ」

実の父からその真相を知った謙吾は此処に留まる決意をした。

須賀原の血を受け継ぐ者として責任を取る事が謙吾唯一の選択だった。

「だから俺がやるしかないんだ!この手で!!」

突如ナイフを振り下ろす謙吾から間一髪、野生特有の反射神経で躱すイノ。

「甘い!これで終わりだぁああ!!」

今まで見たこともないような形相の謙吾にイノは信じられず身動き出来なかった。

鋭いナイフが閃光を斬り、振り抜かれるとイノは思わず目を閉じた。

「うをっ!!」

鈍い呻き声を上げ崩れ落ちた音にイノは恐る恐る目を開けた。

するとそこには首筋を抑え、息も絶え絶えしく謙吾を見つめる達士の姿があった。

「謙吾、貴様・・・・・・」

大きな体格で地を這いずると達士は最後の足掻きをみせた。

「ただでは死なん!」

非常用小銃を謙吾目掛けて達士は迷うことなく引き金を引いた。

「ケンゴ!!」

その発砲音にイノは謙吾を庇うよう咄嗟に飛び込んだ。

打たれ倒れ込むと不気味な程の静寂に包まれた。

血生臭い臭いが辺りにたちこめ、暗闇の中側で倒れる人物を抱きかかえた。

「––––––––––!!」

今にも息絶えそうな酷い出血量に声にならない叫び声を上げた。

目から涙を溢れさせ、必死にその人物の名を呼ぶのだった。

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